2024年に代表に就任した小松が成し遂げた仕事のひとつに、TGR(トヨタガズーレーシング)とのテクニカルパートナーシップ締結がある。2026年には関係がさらに深まり、タイトルパートナーの契約を結んだ。小松がトヨタと連携する狙いはどこにあるのだろうか。
「人を育てたいということです。フェラーリ、ダラーラと提携してマシンを開発していますが、レギュレーション的にフェラーリもダラーラも関われない領域があります。たとえばテストチームを作ったりシミュレータを作るというのは、うちだけではなかなかできない。そこをトヨタと一緒にやることができています。(豊田)章男さんも過去、ご自身でトヨタのF1撤退を決めたということで、背負っているものがあると思うんです。再びF1に関わるのであれば、道筋を作ってあげたい、その場を提供したいという思いがあって、ふたりの考えががっちりと噛み合って、一緒にやりましょうということになりました」
最後に、3月末に鈴鹿サーキットで行われるF1日本GPに向けて、どのようにレースを戦い、何を表現したいのかを尋ねた。
「こんなに楽しい世界があるということを、少しでも多くの方に知ってもらいたいですね。僕は高校を出てすぐにイギリスに渡りましたが、違う文化や人種が接するのがすごく好きなんです。F1という国際的な交流の場があることを知ってもらいたい。幸いNETFLIXのおかげで世界的にF1が人気で、特にファンの4割が女性だというほど新しい層を取り込んでいます。僕も章男さんも日本でクルマ文化を育てたいと思っていますが、文化ってずっとやっていなきゃ定着しないんですよ。だからF1を続けることによって、クルマ文化が日本に根付くことに少しでも貢献できるとうれしいと思っています」
2026年3月27日(金)、F1日本グランプリが開幕する。席種によっては争奪戦が勃発するほどチケット販売は好調で、100万円以上の超高額席も完売になっている。
小松礼雄(こまつ・あやお)◎1976年、東京に生まれる。ベートーヴェンの研究で知られる小松雄一郎を父に持つ。中学時代にF1と出会うも、学校には興味が持てず、高校も「1年生、2年生だけ好きなラグビーに打ち込んで、3年生の時はイギリスへ渡るためのアルバイトに明け暮れた」という。イギリスでは語学学校に通いながら、F1関係者に手紙を送ってエンジニアになるための方法を模索した。結果、ラフバラー大学で学ぶのが近道だと知り、同大学に進学する。以降、F1チームでエンジニアとして活躍、要職を歴任、2024年より現職。した。本人曰く、「理系が苦手で、人物を観察して文章を書くことが得意だったのがいまの仕事に役立っているかもしれない」とのこと。


