ここで知りたいのは、人材を確保するための方法だ。有能な人がたくさんいるとのことだけれど、アメリカでのF1人気を受け、2026年よりキャデラックやアウディといったブランドがF1に進出している。予算規模の小さいハースF1が、コンパクトな組織でありながら有能な人材を確保するために、何をしたのか。

「もちろん、これは難しいことです。去年もキャデラックやアルピーヌに何人か取られました。すごいお金を出して取っていくんですよね(苦笑)。スタッフのリテンション(維持)は大きな問題で、サラリーの話だけでなくファシリティをはじめとする環境も重要で、それをよくしていかなきゃならない。でも僕が思っているのは、みんながここで全力を尽くして働きたいと思えるようなチームでないと駄目だということです。僕が過去に在籍した大きなF1チームにも、政治的な争いや不透明な部分がありました。でも僕らはレースチームで、エナジードリンクの宣伝をするためのチームじゃない。レースで結果を出すというところから遡って、みんなで支え合い、助け合って戦うというカルチャーを作っているところです。そういう文化をきちんと積み上げていけば、ポジティブな環境と魅力のあるチームにつながり、スタッフリテンションにもつながると考えています」
手持ちの駒で結果を残し、そこから規模を大きくする
レース結果に目を奪われがちであるけれど、小松は経営面でも改革を断行している。
お金を集めてマシン開発に投入するのではなく、まず既存のリソースで成果を出し、そこから予算規模を拡大するという手法に改めたのだ。このような手法を採った理由を尋ねると、小松は「理由はいろいろありますけれど、あまり選択の余地がなかった、というのが正直なところです」と切り出した。
「前年の2023年が最下位だったので、オーナーからの信頼は崩れていて、空力のデザイナーはすぐに全員首を切れ、という言い出すほどでした。でも僕は、トップのマネージメントに問題があると確信していたので、とにかくいまの持ち駒でちゃんとできることを証明する必要があると考えました。チームワークでここまでやれるというのを証明して、そこから投資をしてくれという話をオーナーに持ちかけようと決めていました。それで2024年の第3戦のオーストラリアGPで、何年かぶりに2台とも入賞してダブルポイントを取ったんです。そこでオーナーのジーンに『これは僕が思い描いたリストだけれど、力を証明するまで待ちたかったから今日まで待った。結果を出したからアプルーバルしてほしい』とお願いしたら、すべてアプルーバルしてくれましたね」
ちなみに、現在のF1は開発資金の高騰を防ぐために、年間の開発予算の上限を定めており、2024年の場合は1億3500万ドル(約200億円)だった。有力チームにとっては上限の予算であるけれど、ハースF1チームがこの額に到達することはなかった。はたして2025年、小松の尽力もあってハースは初めて上限の予算に到達、資金面でも着々と前進している。


