経営・戦略

2026.03.24 15:00

亡き娘に捧ぐ、マイアミの超人気デイクラブ「ニッキ・ビーチ」創業者が守り抜くレガシーと世界戦略

ジャック・ペンロッドとルシア・ペンロッド/2019年撮影(Photo by David M. Benett/Dave Benett/Getty Images for Nikki Beach Cannes)

ジャック・ペンロッドとルシア・ペンロッド/2019年撮影(Photo by David M. Benett/Dave Benett/Getty Images for Nikki Beach Cannes)

マイアミの人気デイクラブ「ニッキ・ビーチ」は閉鎖の可能性が取り沙汰されているが、同社のブランドは世界各地で広がり続けている。

advertisement

ルシア・ペンロッドは約30年前、亡き夫とともに、若くして世を去った娘に捧げる形でサウスビーチに「裸足のラグジュアリー」クラブをオープンした。彼女はいま評価額4億ドル(約635億円)規模のホスピタリティブランドとなったこのクラブを、自らのビジョンで再構築しようとしている。

世界各地にある12の「ニッキ・ビーチ」のクラブでは、晴れた日になると、モデルたちで埋め尽くされたデイベッドが並び、ロゼワインが絶え間なく提供される。来場者の多くは併設のギフトショップで販売される洗練されたリゾートウェアを身にまとっている。さらに、このクラブではテーブルの上で踊ることが歓迎されるだけでなく、運営側が積極的に推奨している。

「ニッキに行くと午後2時ごろにランチを始めて、そのまま夜7時や8時まで滞在することもある。お酒を飲み、テーブルの上で踊る。でも、その後は家に帰って休めるし、翌日に備える時間も十分にある」と、ニッキ・ビーチ・ホスピタリティ・グループの共同創業者で、オーナー兼CEOのルシア・ペンロッドは語る。

advertisement

ペンロッドが築いた成功の方程式は、この30年でほとんど変わっていない。イビサからサン・バルテルミー島にまで点在する世界的なパーティー拠点の華やかなロケーションで、ボトルサービスを中心に高価格の飲食を提供し、セレブの存在感を加えるというものだ。

ペンロッドは、この年商1億5000万ドル(約238億円)規模のビーチクラブ事業を過去8年にわたり率いてきた。彼女が亡き夫ジャックとともに1998年にサウスビーチで開設したクラブの前身「カフェ・ニッキ」は、その前年に飲酒運転の事故で亡くなった娘ニコールを偲ぶための場所だった。夫妻はその庭園のような空間に、「毎日を祝福しよう。私たちはいつここを去ることになるか分からないのだから」という思いを込めていた。

その翌年、夫妻はカフェをビーチへと拡張し、呼び名を変更した。そして、最初の「ニッキ・ビーチ」が誕生した。

評価額635億円のビーチクラブ事業

「人生がいつ終わるかは誰にも予測できない。この世から生きて出ていける人間はいない」とペンロッドは語る。「あれほどの痛みを経験したからこそ、私たちはニコールの死を嘆くのではなく、彼女の人生を祝おうと決めた。この事業は会議室で生まれたアイデアではない」

フォーブスは、ニッキ・ビーチ・ホスピタリティ・グループの純利益率が、一般的な高級レストランの利益率(5〜10%程度)の2倍以上の約25%にのぼると推定している。ペンロッドは現在、サントロペとサン・バルテルミー島の2つのニッキ・ビーチを完全所有している。それ以外の施設は現地パートナーとの運営契約によるものだが、いずれも「滞在時間が長いほど、支出額が増える」という共通のモデルに基づいている。

ペンロッドが100%を保有するこの事業の評価額をフォーブスは、約4億ドル(約635億円)と見積もっている。ビーチクラブ事業は売買される機会が少ないが、2023年には「Tao」などのクラブレストランを展開するホスピタリティ企業が、66%の株式を対象に5億5000万ドル(約875億円)のレバレッジド・バイアウトを実施し、約8億2000万ドル(約1300億円)と評価された。

「私は外部の投資家を入れていない。『配当はどうなっている』『利益はどこだ』と迫ってくる人もいない。すべての意思決定は私が行っている」とペンロッドは語る。

次ページ > 市と競合との対立

翻訳=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事