市と競合との対立
しかし、ペンロッド自身がコントロールできない問題となっているのが、サウスビーチにある「元祖ニッキ・ビーチ」の今後だ。この拠点は市当局や、ラスベガスの「Carbone Riviera」など50以上の拠点を展開する高級ホスピタリティ企業、メジャー・フード・グループとの対立が激化する中で、閉鎖に追い込まれる可能性が出ている。メジャー・フードは、この物件の敷地と営業権を取得し、自ら運営することを狙っている。
ペンロッドと夫は2023年、マイアミビーチ市を相手取り、30年間続いてきたリース契約から自分たちを排除するための「不公平な裏取引」があったと主張して提訴した。彼女は現在もこの権利を守るために争いを続けており、訴訟の相手はマイアミビーチ市だが、同時にメジャー・フード・グループともこの物件を巡って対立している。
「私は黙っていることも、見過ごすこともできなかった」とペンロッドはフォーブスに語る。「私たちはサウスビーチに多くのものをもたらしてきた。マイアミビーチがニッキ・ビーチを生み、同時にニッキ・ビーチがマイアミビーチを形作ってきた。私は、このレガシーを守るために戦っている」
ペンロッドは、昨年85歳で亡くなった夫ジャックとともに、この新たな契約の差し止めを試みていた。その理由は、市とメジャー・フード・グループが進める複数施設の建設や新たな地下駐車場の整備を含む開発計画が、実質的には新たなリース契約にあたり、本来であれば住民投票が必要になるはずだと考えたためだ。
さらにペンロッドは、市が期待する利益を新たな運営者が本当に実現できるのかについても疑問を呈している(ニッキ・ビーチはこれまで、マイアミでの利益の6.5%を市に納めてきた)。彼女は、市が提案募集のプロセスをやり直し、ワン・オーシャン・ドライブ(ニッキ・ビーチがあるマイアミビーチのストリート)の次のリースについて、自社に最後の機会を与えるよう求めている。
仮に6月に予定されている民事裁判で敗訴したとしても、「ニッキ・ビーチがマイアミから撤退することはない」と語るペンロッドは、新たな候補地の検討を進めている。同時に彼女は、自らの事業も再構築しつつある。ペンロッドは、ニッキ・ビーチのホスピタリティ事業に加え、アラブ首長国連邦(UAE)では4つのホテルと1つの住宅開発を手がけており、さらに自身のビジョンを反映した新たなデイクラブブランド「ルシア・バイ・ニッキ・ビーチ」も立ち上げている。
ニカラグア出身の移民
ニカラグア生まれのペンロッドがマイアミに来たのは1979年。当時、40年以上にわたり同国を支配してきたアナスタシオ・ソモサ・デバイレ政権の崩壊を受けて、米国に移住した。1984年、マイアミのジョッキー・クラブで働きはじめた彼女は、そこで後に夫となるジャックと出会った。フードスタンプに頼る家庭で育った彼は、救世軍から古着をもらうような質素な暮らしを送ってきた人物だった。
「当時のマイアミビーチは安全な場所ではなかった。ドラッグが蔓延し、犯罪も多かった。でも私たちは街を立て直す一翼を担った」と彼女は振り返る。「当時はどの銀行も融資をしてくれなかった。本当にひどい状況で、誰も関わろうとしなかった」


