AI実装の一歩目、まずは自己定義から

トークセッション中にはQRコードを通じて参加者からリアルタイムで質問が寄せられ、議論は多層的に展開された。
寄せられた質問の一例として、「世界で活躍している若手人材はどこにいるのか、彼らにどんな支援ができるか」「AIが進化したその先の人間の価値は何になるか」「フィジカルAIはどこから導入すべきか」──。
岡田は人材について以下のように話した。
「ビジネスパーソンでもAIを使いこなせることが求められるようになりました。ハーバード・ビジネス・スクールでもAIが必修科目になっています。
若手人材に対しては社内環境を開示し、出て行っても帰ってこられる組織をつくる。活躍できる場があることを示すことが重要です」
森もAIの導入について熟練社員が若手のメンターとなる制度によって全社導入が加速した事例を紹介。AI導入は技術課題であると同時に、文化の問題でもあった。
Gen-AXの代表取締役社長 CEOの砂金信一郎からは「日本語で日本人同士が議論していて、多様性の観点で勝ち筋はあるのか」という課題も提起された。
北野はこう話す。
「みなさんAI戦略において“勝ち筋”という言葉を安直に使いすぎている。AIが勝てる分野はすでに産業基盤がある領域。データが蓄積していれば、AIによって市場をさらに伸ばしていくことが可能。国内市場が小さいなら、海外に出る選択肢もある」
岡田も砂金のコメントを受けて「来年はクリエイターもこの会に加わるのはどうか?」と主催者Forbes JAPANへ提案を投げかけた。
シナモンAI 会長 兼 CSDO(Chief Sustainable Development Officer)の加治慶光からもコメントが寄せられ、政府提言や国際競争の文脈にも議論は広がった。だが最終的に焦点となったのは、「自分たちの価値をどう定義するか」だった。
プログラムの締めくくりに森は、アーティスト・松任谷由実がAIを用いて過去の自分(荒井由実)と共演したエピソードを例に挙げた。
「過去のデータを資産にし、それを糧に次のステージへ進む。企業におけるAI活用も、本質的には同じではないでしょうか」
前刀は、会場の参加者たちへこうエールを送った。
「一人一人が、自分自身の独自の考えをいかに持つか。AIが進化する今だからこそ、自分たちがどうありたいのかを問い続けなければならない。私も皆さんと一緒に、その探究に励みたいと思います」
開催時はまだ2月、2026年は幕を開けたばかりだ。しかし、AI実装の最前線ではすでに目まぐるしい地殻変動が始まっている。このフィジカルAI元年に、自らの意志をどう刻むか。
この答え合わせをするべく、来春、再び相まみえることを待ちたい。




