Forbes JAPAN 2026年5月号は「『規律』ある投資」特集。世界的な金融緩和や地政学リスクの高まりを背景に、あらゆる資産が高騰してきた昨今。足元では中東情勢の緊迫化という火種も加わり、ボラティリティが激化するなかで、投資家が真に頼るべき羅針盤は何か。資本市場で勝ち続けるリーダーたちの生存戦略から大インフレ時代を生き抜く術を探った。
PBR特化という1点にフォーカスした尖った戦略で年107%の驚異的リターンを捻出した「日本企業PBR向上ファンド(愛称:ブレイクスルー)」。数字の裏側にある、企業の言動変化を読み解き良好パフォーマンスの継続を目指す。
2023年9月に大和アセットマネジメントが設定した「日本企業PBR向上ファンド(愛称:ブレイクスルー)」。数多あるバリュー株ファンドのなかでも、「PBR(株価純資産倍率)向上」という一点にフォーカスした尖った戦略をもつ。26年2月末時点の1年リターンは107.4%を記録。ファンドマネージャーを務める松田親佳の投資哲学は、単なる指標選びを超えた、経営者の「意志」を嗅ぎ取る実践的なものだ。
「この1年間は市場環境も良く、ややでき過ぎた結果でしたが、やはり日本企業の変化が非常にわかりやすく起こっています」と松田は静かに語り始める。
変革の引き金となったのは、23年3月の東京証券取引所による「資本コストや株価を意識した経営の改善要請」。14年の「伊藤レポート」以降、日本企業にガバナンス改革の波が広がっていたなか、この要請によって「PBR1倍割れ」への危機感が一気に浸透した。
しかし、実態は、形式的な対応にとどまる企業と、意欲的に改善の努力に励む企業に二極化しているのが現状だ。その真偽を見抜くことが、プロ投資家の技量が問われる局面となる。松田が銘柄選定の軸に据えるのは「経営余力」の有無と「経営層の動く意志」という極めてシンプルな2点だ。TOPIXのPBR水準を下回る銘柄を基本的な投資候補として、定量面では、自己資本比率や政策保有株の状況などの「財務余力」、将来の高い成長に向けた「事業競争力」、「株主構成」の3つの要素に着目する。この土台の上に、企業への取材情報に加え、決算資料や中期経営計画に書かれたメッセージも定性分析として積み上げていく。
「トヨタのような巨大企業ですら極めて高いハードルの『自己資本利益率(ROE)20%』を掲げた。この『今まで言わなかったことを言い出した』という言動の変化こそが、経営陣の意志の表れになります」



