Veson Nauticalによれば、このうち11社は、合計9億ドル(約1430億円)超で取得されたシノコーのタンカーの所有企業であることが特定されている(残る7社のオー・ブリオン企業が船を保有しているのか、あるいはどのような目的で設立されたのかは不明だ)。
また、別の20隻のタンカー(総額8億2000万ドル:約1300億円超)はリベリアで登録されているが、同国では法人記録が公開されていないため、パナマで登録された他のタンカーと同様の法人名が使われているにもかかわらず、MSCが最終的な所有者であるかどうかは確認できていない。仮にオー・ブリオンの各企業がすべてMSCの傘下であるとすれば、アポンテは昨年12月以降にシノコーが取得したタンカーの過半数を保有していることになる。さらに、残る船の所有構造はまだ公表されていないため、その比率は一段と高い可能性もある。MSCとシノコーの双方にコメントを求めたが、いずれも回答は得られていない。
シノコーが購入した残り29隻のタンカーについては、所有者情報がまだ更新されておらず、ジョージ・プロコピウのDynacom Tankersやジョン・フレドリクセンのFrontlineなど、従来の所有者名義のままとなっている。
Veson Nauticalの推計によれば、シノコーもしくはMSCは現在、総額67億ドル(約1兆650億円)と見込まれる76隻の超大型タンカーを保有している。これは世界の超大型タンカー全体の8%に相当し、両社はこの分野で最大の保有者となる。一部ではさらに高い比率も指摘されており、競合の上場企業オケアニス・エコ・タンカーズは、シノコーが全体の17%、短期航海向けに即時利用可能なスポット船隊の39%を支配していると推計している。
オスロに拠点を置く海運・エネルギー投資銀行Fearnley Securitiesのアナリスト、フレドリック・ディブワドはこう指摘する。「彼らの狙いはまだ完全には見通せないが、市場を独占しようとしているのではないかとの見方が出ている。できるだけシェアを拡大し、価格決定力を握ろうとしているのだろう。海運業界で前例のない動きだ」
「絶好のタイミング」の賭け
シノコーとMSCの提携の実態は、いまだ明らかになっていない。両社が実際に手を組み、超大型タンカー市場を押さえることで運賃を引き上げようとしている可能性もある。また、シノコーが単独では実現できない規模の船舶取得を進めるために、資金力で勝るMSCの支援を必要とした可能性も考えられる。
確かなのは、アポンテが極めて適切なタイミングで超大型タンカーに賭けたという点だ。イラン戦争とホルムズ海峡の封鎖によって運賃は過去最高水準に押し上げられている。Veson Nauticalによれば、中東の依然として航行可能な港から中国へのスポット運賃は、3月13日に1隻あたり日額48万5959ドルと過去最高を記録した。一方、1年契約の定期用船料(固定運賃の長期契約)も1隻あたり日額11万1000ドルに達し、パンデミック時のピークを上回った。
さらにLloyd's Listによると、11日にはシノコーのタンカー「Gabon Prosperity」が紅海からインドへの原油輸送契約を日額35万6938ドルで獲得した。同社はまた、ペルシャ湾に待機させた複数のタンカーで原油を貯蔵し、ホルムズ海峡の再開を待つことで、1隻あたり最大日額50万ドルを稼いでいると報じられている。


