働き方

2026.03.18 11:36

複数の上司に挟まれたときの処方箋 認識のズレを埋める実践テクニック

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マヤは最近、プロジェクト調整責任者に昇進したが、そこで思いがけない展開が待っていた。彼女は引き続き部門マネジャーのプリヤ(プロダクト・イノベーション担当ディレクター)に報告しつつ、大規模なソフトウェアのロールアウトを統括するジャレッドにも報告することになったのだ。この2系統の報告ラインは、プロジェクトの提供を加速させる狙いだった。ところが実際には、2人の上司はほとんど連絡を取り合っていなかった。マヤは、進捗を伝達し、競合する優先事項をさばく「仲介役」として立ち回ることになった。

マヤのような状況は、ただ厄介なだけではない。むしろ、よく見られるようになっている。72%を超える従業員が、二重の報告ラインを備えたマトリクス型組織で働いている。部門横断やプロジェクトベースの仕事が増えたことで、従業員は「本来の上司」に加えて、プロジェクトリーダー、各地域のディレクター、さらにはクライアントのパートナーにまで報告することが珍しくない。

リーダー1人を満足させるだけでも十分に難しい。そこに2人目が加わると、追加で、しかも見えにくい調整と影響力行使まで担うことになる。複数の上司に対してマネジメント・アップするのは簡単ではない。だが、その難しさの源でもあるスキル──異なるコミュニケーション様式を読み解くこと、業務量を交渉すること、合意形成をつくること──は、いまも将来もキャリアで頭ひとつ抜けるための武器にもなる。

では、互いに連携しない2人の上司の板挟みになったとき、どうすべきか。すべてのメールに2人をCCすることでも、「2人で決めてください」と投げ出すことでもない。必要な支援と明確さを得るために、認識を揃える方法を紹介する。

すれ違いの「初期サイン」を見逃さない

上司同士が噛み合っていないことは、会議が二重に入るなど、明白な形で表れることもある。だが多くの場合、微妙な兆候は見過ごされ、やがて大きな問題へと膨らむ。会議で同じ背景説明を何度も繰り返していないだろうか。あるいは、部門マネジャーだけが施策を「Project X」と呼び続け、チームのほかのメンバーは数週間前に新しい名称へ切り替えている、といったことはないか。

納期やリソースに関する曖昧なシグナルにも注意したい。例えば、ある上司が「来四半期はオペレーションのボブと一緒にやる」と何気なく言ったのに、別の上司はすでにボブが別部署へ異動したことを知っている、という具合だ。あるいは、2人のリーダーが「最優先」の意味をまったく別の基準で捉えている可能性もある。

こうした小さな食い違いは、早期警戒サインである。早めに捉えれば、些細な行き違いが大きな頭痛の種になる前に手を打てる。

2人の上司に率直に切り出す

意見の相違やコミュニケーションの抜けは起こり得るものだと認めることだ。問題は「起きるかどうか」ではなく「いつ起きるか」である。次のような質問で、早い段階からテーマとして取り上げたい。

  • 「あなたとジャレッドの両方と一緒に仕事ができることを楽しみにしています。私たちの間で情報を共有する最善の方法について話し合えますか?」
  • 「マトリクス型の組織では、意図的なコミュニケーションがあるとスムーズに機能すると感じています。両チームに報告することになるので、優先事項が競合した場合、どのように対処するのが望ましいですか?」
  • 「もし相反する指示を受けた場合、まず1対1のミーティングで報告した方がよいですか、それともすぐに3者での会話を提案した方がよいですか?」

リーダーの中には「やりながら調整しよう」「問題にならないよ」と受け流す人もいる。その場合は、具体例でロールプレイしてみるとよい。「来月はXとYの両方が締切です。リソース配分はどうしますか」といった形だ。すでに解決策を考え、全員にとってうまく機能する運用にしたい意図が伝わる。

意思決定を「見える化」する

上司が自然に認識を揃えることを期待するだけではいけない。揃えられるように手助けするのだ。主要タスク、誰がそれを割り当てたか、いつまでに必要かを一覧化した「共有マスター優先順位表」を作る。両上司との1on1で定期的に見直し、必要に応じて更新や明確化を促す。これにより、全員が状況を把握でき、相反する期待も早い段階で表面化する。

一方の上司が突然「至急」を追加してきたら、優先順位表を根拠に落ち着いてこう言える。「現状の予定だと、監査は明日ビッキーに納品し、ベンダーレビューは木曜にあなたへ共有することになっています。今回の依頼を入れるなら、どれを調整すべきでしょうか」

「接続役」として場をつくる

ときには全員を(オンラインでもよいので)同じ場に集める必要がある。上司が「また会議か」と尻込みしても、終わりのないやり取りを減らすための手段だと位置づけることだ。月次または四半期のチェックインは、問題が起きる前に数十の火種を潰せる。緊急の行き違いが生じたときは、短い臨時セッションを主導して設定する。「私が伝言役をするより、3人で通話して整理しましょう。30分枠を押さえます」と提案してみたい。

こうした場では、上司が議論できる具体的な選択肢を用意して臨むことだ。例えば、「寄付者向けのアウトリーチ施策を遅らせれば、助成金に集中できます。ただし、アウトリーチがいま優先なら、助成金の期限延長を申請する必要があります。それぞれが資金調達目標に与える影響は…」といった具合である。

「本当のコスト」を示す

上司は、自分たちの連携不足があなたやチームにどれほど影響しているかを理解していないことがある。影響を可視化するのはあなたの役割だ。ただし不満としてではなく、なぜ連携強化が重要なのかを裏づける証拠として提示する。建設的で解決志向を保ち、可能であれば、上司が重視する指標に結びつける。例えば、プロジェクト立ち上げの遅延、重複コスト、機会損失、チームの燃え尽きの兆候などである。

例えばこう伝えられる。「先週は、部署ごとに要件の解釈が違ったために、作業のやり直しに5時間かかりました。事前に認識を揃えられれば、大幅な時間とリソースを節約できます」。人は損失を避けたい動機が強い。だからこそ、代償を明確にすることは、リーダーが変わるための後押しになりやすい。

連携しない複数の上司のもとで仕事を進めるのは難しい。だが、このスキルは確実に習得できる。そしてそれは、キャリアを前に進める過程で、あなたを際立たせるものとなる。

forbes.com 原文

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