かつての「4680バッテリーセル」は当初スケジュールから数年遅延
複数メディアは、アマゾンの自社データセンター投資とテラファブとを一直線に結びつけていた。アマゾンは自社ストアのためにインフラを構築し、その後余剰キャパシティをAWSとして商業化した。テスラは自社の車両とロボットのためにチップを製造し、余剰を商業化できるかもしれない。
この論理は理論上は正しい。問題は、野心的な自社製造に関するテスラの実績である。
Electrekは最も重要な類似点を指摘した。2020年9月、テスラが開催した技術発表イベント「バッテリー・デー」において、「4680バッテリーセル」を発表した。マスクは2022年までに自社セル生産100GWh、56%のコスト削減、そしてその節約によって実現する2万5000ドル(約398万円)の電気自動車を約束した。これらは予定通りには何一つ実現しなかった。100GWhの目標は大幅に未達だった。2万5000ドル(約398万円)の車両は実現しなかった。テスラは最終的に実用的な4680生産を達成したが、当初約束されたスケジュールから数年遅れ、規模も遠く及ばなかった。
半導体製造はバッテリー製造より桁違いに複雑
半導体製造はバッテリー製造より桁違いに複雑である。Electrekは、TSMCが専門知識を構築するのに数十年と数十億ドル(数兆円)を費やしたことを指摘した。かつて世界をリードした半導体メーカーだったインテルは、数千人の経験豊富な工場エンジニアと1000億ドル(約15.9兆円)超の投資にもかかわらず、製造における優位性を取り戻すのに何年も苦戦している。サムスンのファウンドリ事業も、巨額の投資にもかかわらず、先端ノードの歩留まりでは依然としてTSMCに後れを取っている。
テスラには半導体製造の経験がゼロだ。同社は優れたチップを設計している。FSD(完全自動運転)チップは真に優れたエンジニアリング成果だった。しかし、チップを設計することと製造することは根本的に異なる専門分野である。マスクはインテルやサムスンとの潜在的な協力について言及しており、実行面では既存の業界専門知識を活用する可能性を示唆している。しかし、パートナーシップの詳細は確認されていない。
休眠中の車両を結ぶ「分散推論ネットワーク」は推測の域を出ない
複数メディアにおいて最も野心的な主張は、テスラが駐車中の車両の休眠コンピューティングパワーをネットワーク化し、「分散型スーパーコンピューター」および「分散推論ネットワーク」を構築するというものだった。これにより、すべてのテスラ車が「高利益率の収益ノード」となり、最終的には「集中型データセンターを凌駕する」という。
この構想はマスクの公式発言には存在するが、出荷された製品、規制当局への提出書類、技術仕様のいずれにも存在しない。実際の障害は大きい。車両のコンピューティングハードウェアはリアルタイムの運転判断用に設計されており、汎用的な推論ワークロード向けではない。駐車中の車両のネットワーク接続はセルラー通信のカバレッジと帯域幅に依存する。夏場の駐車車両内の熱管理は、空調が完備されたデータセンターとは根本的に異なる。推論ワークロードを実行することによるバッテリー消費は、利用可能な航続距離を減少させる。顧客の車両を商業用コンピューティングノードとして使用することに関する規制上の問題も未解決である。
「車両の90%は使われずに駐車している」という統計は事実だ。しかし、「休眠車両にはコンピューティングハードウェアがある」から「AWSと競合する分散クラウドネットワーク」への飛躍は、テスラが実証または発表したいかなるものによっても裏付けられていない。


