サイエンス

2026.03.19 16:00

なぜ赤ちゃんは言葉を発するより先に笑う? かわいさの裏に隠された「進化の秘密」

Shutterstock.com

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赤ちゃんが初めて笑い声をあげる瞬間を目の当たりにすることほど、心動かされるものはない。いないいないばあや変顔に反応して、あるいは遊んでいるとき、赤ちゃんは喉を鳴らすような笑い声をたてる。だがさらに神秘的なのは、赤ちゃんがきちんとした言葉を話すずっと前から大笑いするという事実だ。

ただし、赤ちゃんの笑いは音、または可愛らしさを超えたものだ。実際、研究者たちは乳児の笑いは人間の社会的認知を理解するための高度な手がかりだと考えている。さらに最近の研究では、赤ちゃんの笑いが大人になってからの人間関係や共感、そして関係維持の仕方にも関係していることが示されている。

言葉より先に笑いが生まれる理由

多くの赤ちゃんは、生後3〜4カ月頃に笑うようになる。これは、平均的な子どもが初めて言葉を発する時期(おおよそ生後10〜15カ月)よりずっと早い。

専門誌『Journal of Experimental Child Psychology』に2015年に掲載された縦断研究によると、生後5カ月ほどの赤ちゃんでも奇妙な行動や予想外の出来事に対して笑顔や笑いで反応することがあるという。これは赤ちゃんがすでに周囲の世界の微妙な側面を理解していることを示している。

だが、単なる反応としての笑いと、社会的なシグナルとしての笑いの違いは乳児期の早い段階で現れる。専門誌『British Journal of Developmental Psychology』に2017年に掲載された縦断研究では、生後4〜8カ月の赤ちゃんがユーモアをどのように受け止めるかを調べている。

研究チームは赤ちゃんに「滑稽な」出来事(ピエロの鼻をつけた人、変な声を出しながら赤ちゃんをつつくなど)と、普通の出来事(本を読む、カップから飲み物を飲むなど)を見せて笑顔や笑いを測定した。

多くの赤ちゃんが、生後5カ月になると物事を面白いと独自に判断できるようになった。これは、たとえ親が特段の感情を見せなくてもおかしなことに笑うことを意味し、ユーモアの基本的な要素である予想と現実のズレを意味する不一致を引き起こすものへの早期の認知的関与を示している。

さらに専門誌『Scientific Reports』に2019年に掲載された研究では、生後5カ月の赤ちゃんが友人同士の笑いと見知らぬ人同士の笑いを区別できることが観察された。人々が一緒に笑っている録音を聞かせたところ、赤ちゃんは自分の知っている人の声が含まれている笑いの方を長く聞いた。

この発見は非常に重要だ。赤ちゃんは言葉を話せるようになる前から、社会的な関係性に敏感だということを示している。笑いの中に含まれる人間関係のニュアンスを言葉なしで理解できることは、人間が社会的つながりを検出する仕組みを進化させてきた可能性を示している。研究者たちは、赤ちゃんが生まれながらにして声の手がかりだけで社会的な絆を察知できる証拠だと解釈した。

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翻訳=溝口慈子

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