中島氏は、フィジカルAIが発展し、人間の肉体やデバイスなどの物理的なものとAIが融合していくと、人類が「やっていいことと悪いこと」の境界線が変化していくと予測。
「5年ほど前は、脳にインプラントをすることは、やっていいことの範疇を超えていると思われていました。しかし今、Paradromicsの取り組みや、NeuroPace社の脳インプラントが実際にてんかんの治療に活用されている様子を目の当たりにすると、これはやっていいことだし、やるべきことなのだろうと感じます」(中島氏)

目の不自由という身体の限界を乗り越える選択肢を提供しようと取り組む李氏は、持論を述べた。
「やっていいことと悪いことの境界みたいなところは、みんなが選べるようになればいいと思っています。そのための技術開発をどんどんやっていきたい。それがその人を大事にすること、尊厳を守ることに繋がっていくはずです」(李氏)
杉山氏は、新たなテクノロジーについて議論が生まれると、警鐘を鳴らす人々が現れるものだが、人類はその時点ですでに引き返せない地点にいると指摘し、こう締めくくった。
「人類はただ生きるだけを選ばない。つねにツール・インベンター(発明者)であり、ツール・ビルダーなのです。超えるべきは過去の経験から自分で心の中に作った常識です。未来はつねに常識を超えた先に存在します。デジタルデータと生命との融合はすでに始まっており、近未来において我々はそれを人体拡張とも感じなくなるのです」(杉山氏)
杉山知之◎すぎやま・ともゆき デジタルハリウッド大学 学長。工学博士。デジタルコンテンツ教育の先駆者として、1994年にデジタルハリウッドを設立。CG・映像・ゲーム・IT分野の人材育成を推進し、日本のデジタルクリエイティブ教育を牽引。産学連携や新しい教育モデルの構築にも取り組んでいる。2021年11月にALSを公表した。
中島 徹◎なかじま・てつ 15th Rock Founder & General Partner。東芝研究開発センター、産業革新機構(INCJ)、スタートアップ支援のMistletoeを経て2019年に15th Rockを創業。Human Augmentation(人間拡張)をテーマに、AI・ロボティクスなど先端テクノロジー領域のスタートアップ投資を行うベンチャーキャピタリスト。
李 蕣里◎り・じゅんり エルシオ代表取締役CEO。大阪大学大学院理学研究科博士課程修了。理学博士。大阪大学で液晶レンズの研究開発に加わり、特任助教として事業化に取り組む。2019年に同大学発スタートアップのエルシオを創業。2021年から現職。
本荘修二◎ほんじょう・しゅうじ 新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他のメンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現職。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。


