経営・戦略

2026.03.17 13:51

「居住権を買う」時代は終わった──投資移住の世界的変化が示す新たな道

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Chris Lennon(Empowered Startups Ltd.社長兼ジェネラルカウンセル)

グローバルモビリティの世界において、ゴールデンビザはかつて他国の居住権を取得するための標準的な手段だった。相当額の資金を不動産などの適格投資に充てれば、その国は両手を広げて歓迎してくれたのである。

しかし、状況は一変した。ビジネスリーダーが注視していれば気づいているはずだが、各国政府が受動的な居住権制度から距離を置きつつあり、大きな転換期を迎えている。2000年代初頭以降、多くの政府がゴールデンビザ制度の妥当性、影響、価値を再評価し、それが自国の利益に適っているか、国家の優先課題を反映しているかを問い直してきた。

いま一部では、こう問われている。ゴールデンビザは今日のグローバルモビリティの環境に適しているのか。それとも、不動産価格を押し上げ、当該国と実質的な結びつきのない人々に居住権を与えているだけなのか。

受動的投資の歴史

ゴールデンビザ、すなわち受動的投資モデルの歴史を振り返ると、1980年代に登場したことが分かる。1986年、カナダは連邦政府の移民投資家プログラム(IIP)を通じ、投資と引き換えに居住権を提供して投資を呼び込む「投資移民」をいち早く検討した国の1つだった。その直後の1990年、米国も同様の投資基準を備えたEB-5ビザを開始した。

2010年代を通じて、欧州債務危機への対応として、受動的投資の選択肢は欧州でより一般的になった。ポルトガル、ギリシャ、スペインなどの国々が独自のゴールデンビザを導入し、多額の不動産投資や政府ファンドへの投資と引き換えに居住権を提供することで、深刻な財政赤字の解消を図った。

当初、これらのビザは居住権への「ファストトラック」であると同時に、当該国の経済を下支えするものと受け止められていた。海外直接投資(FDI)を迅速に呼び込み、インフラを整備し、各国経済の脆弱な部分を支援する近道だったのである。

功績に基づく居住へ

過去10年間で、多くの政府が受動的投資プログラムを大幅に再構築してきた。カナダのようにIIPを廃止し、受動的投資から高いインパクトをもたらす起業へと舵を切った国もある。これは起業家スタートアップビザ(SUV)の導入に見て取れる。英国アイルランドスペインはいずれも2022年から2025年の間にゴールデンビザ制度を終了させた。一方、ポルトガルのように制度自体は維持しつつ、不動産投資の選択肢を外し、イノベーションと雇用創出に焦点を移した国もある。

この方向転換は複数の理由から起きている。住宅の手頃さ、国家安全保障、世論、そして受動的投資制度の真の経済効果への疑問などだ。また、一部のケースでは、制度が居住権にとどまらず、投資家が市民権を取得するところまで至った。つまり、当該国と真のつながりを持たない人々が投票権を得て選挙に影響を与えうるということだ。

そのため、一部の政府は国家の優先課題とより整合するプログラムの導入を始めた。カナダのSUVにとどまらず、たとえば環境サステナビリティへのインパクトを生む個人を対象とするUAEのブルービザや、高度な人的資本の呼び込みを目的としたシンガポールのONE Passがそれに当たる。

これらの国々、そして他の多くの国は、ビザ制度によってもたらされる海外投資が、住民や市民にとって意味のある形で利益となることを確保しようとしているようだ。人材の誘致、雇用創出、研究開発、あるいは国家のイノベーション目標に向けた資金供給を促すことなどがその例である。私の観察では、功績に基づくビザ制度は国家の優先課題とより密接に整合し、より広範な経済的・社会的便益をもたらしやすく、国民の支持も得やすい傾向がある。

ビジネスリーダーとプロフェッショナルにとっての意味

グローバルモビリティの選択肢を求めるプロフェッショナルやビジネスリーダーは、現在のビザ環境を慎重に評価する必要がある。多くの主要国がゴールデンビザからの方針転換を進めており、すでに申請プロセスにある人々への事前通知がほとんどないケースもある。かつては容易にアクセスできたこれらのルートは、特に2026年以降、信頼性が低下しつつある。

グローバルモビリティには、より戦略的な評価が求められる。リーダーやプロフェッショナルは自問すべきだ。私はこの国にどのように意味ある貢献ができるのか。政府の制度がイノベーション、研究、人材を支えるのだとすれば、どうすれば国家の優先課題と自分を整合させられるのか。幸いなことに、絶えず変化するビザ環境においても、プロフェッショナルには依然として多くの選択肢が存在する。

当初の問いに答えるなら、ゴールデンビザの時代は終わりに近づいているのか。私の答えは明確に「イエス」だ。状況は、居住権を「買う」ことから、社会への貢献を「証明する」ことへと移行しているように見える。居住を望む国で自らがもたらしうるポジティブなインパクトを、リーダーやプロフェッショナルが示すべき重要な局面である。

グローバルな視野を持つプロフェッショナルにとって、前に進む道は閉ざされているのではない。ただ方向が変わっているだけだ。

forbes.com 原文

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