経営・戦略

2026.03.23 15:00

減量薬ブームの意外な受益者は、40年前から準備していた──エンドウ豆プロテイン企業Puris

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米国では、「オゼンピック」などGLP1系の減量薬を使う人は、限られた摂取カロリーの中でより多くのタンパク質を取ろうとする傾向を強めている。こうした需要の高まりを背景に、ミネアポリス拠点の「PURIS(ピュリス)」が製造するエンドウ豆や大豆のプロテインパウダーが存在感を高めている。プロテインを豊富に含むシリアルやパスタ、スポーツドリンクが店頭に並ぶ中、PURISはそれら食品に使われる原料を供給する企業として、アグリテック分野の有力企業へと成長した。

「GLP-1の使用者は、食事からより多くのタンパク質を摂ろうとしている」と、PURISでCEOを務めるタイラー・ローレンゼン(40)は語る。「彼らは、美味しくて栄養価が高い製品を求めている。我々が同業他社より速いペースで成長している理由はそこにある。美味しさは健康的な食習慣への入口であり、そこから長寿につながる好循環が生まれる」。

GLP-1系減量薬の普及を背景に、PURISは米国最大のエンドウ豆プロテインメーカーに成長

家族経営企業PURISは、約40年の歳月を経て現在の事業に成長した。かつて家族の地下室で大豆の品種改良を行っていた事業は、今や米国最大のエンドウ豆プロテインメーカーだ。

1985年に両親が創業した同社を率いるローレンゼンは、「親世代が人生を賭けた投資がようやく形になり始め、事業としての面白さが出てきた段階だ」と語る。「そうなると次は、『どうすればもっと大きくできるか』を考えるようになる」。

種子産業の大きな空白を埋める形で事業を発展させたPURISは、推定年商が2億ドル(約318億円。1ドル=159円換算)の規模に成長した。同社は現在、年間約8万トン相当の大豆やトウモロコシ、エンドウ豆を生産する20州の数百の農家に種子を販売している。こうした事業に加え、同社はエンドウ豆プロテインなどの原料を食品大手カーギルから新興企業Ritualまで、約200の食品ブランドに供給する原料加工事業も行っている。

ローレンゼンの姉で同社グループの持ち株会社Puris HoldingsのCEOを務めるニコール・アチソン(42)が、農家と連携して十分な栽培面積が確保されるよう調整を行う一方、ローレンゼンはプロテイン原料の販売とマーケティングを担当している。

減量薬の利用者が日常の食品からより多くのタンパク質を摂ろうとする中、食品企業はPURISに原料の供給を求めている。シカゴの調査会社Spinsのデータによれば、エンドウ豆プロテインを使用した食品の売上は、従来型の食品ブランドの約5倍の年率15%で成長している。また、市場の拡大も急速に進んでおり、米国では成人の約12%、およそ3100万人が減量薬を使用していると推計されている。

2018年以降、PURISとカーギルとの合弁事業は、ミネソタ州ドーソンにある旧乳製品工場を約20万平方フィートの製造施設へと転換するなど、1億ドル(約159億円)以上の資金を投じてきた。ローレンゼン家は現在も、PURISの過半数株式を保有している。PitchBookによれば、PURISはこれまでに少数株投資や負債を含めて総額2億5000万ドル(約398億円)以上を調達している。

フォーブスは、PURISの企業価値を少なくとも4億ドル(約636億円)と見積もっている。ローレンゼン家は、同社の株式の約半分を保有している。アチソンによれば、同社の目標は「地域単位での自立した供給体制の構築、父が『プロテインの自立』と呼んでいたものだ。我々は、いわゆる“無限ゲーム”に挑んでいる。我々は作り手であり、実行者だ。もう止めようがない」という。

“無限ゲーム”(infinite game)とは、ビジネス書『The Infinite Game』(Simon Sinek著)で広まった概念だ。競合他社との勝ち負けを争う有限の競争ではなく、事業と理念の永続自体が目標という終わりのない取り組みを意味している。アチソンの説明は、同社が口先だけでなく、実際に作り、動く組織として、本能的・使命的に動いていることを表している。

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翻訳=上田裕資

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