マーケティング

2026.03.17 10:21

デジタル依存からの脱却:CMOが体験型マーケティングを中核戦略に据える理由

デジタルマーケティングは「コントロール」を約束した。だが実際には、ブランドを借家人にしてしまった。

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この10年、マーケティングは驚くほどシンプルだった。メディアを買い、クリエイティブを最適化し、ダッシュボードを眺め、繰り返す。効率的で、スケールもした。しかし同時に、それは他人の土地に自社のブランドハウスを建てる行為でもあった。Google、Facebook、Amazonといったプラットフォームは、いつでもルールを変えられる。あるいはもっと悪いことに、告知もなくアルゴリズムを変えることすらできる。

では、どう対応するのか。

いま、CMOの増えつつある一群が、体験型マーケティングを「あると良い」ブランドの瞬間ではなく、中核インフラとして静かに位置付け始めている。体験型マーケティングエージェンシーを運営する中で、私は日々それを目にしている。体験型のブランドアクティベーションへの関心は、これまでで最も高い。体験型は、真に「自社が所有できる」マーケティングチャネルが残された数少ない選択肢の1つであり、ブランドが複利で積み上げていけるからだ。

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マーケティングを失ったのではない。所有することをやめただけだ

問題は、デジタルが効かなくなったことではない。複利で積み上がるブランド資産を構築しなくなったことだ。シグネチャーとなる体験、自社チャネル、コミュニティなどである。この10年、デジタル広告への熱狂が、ブランド構築や手触りのある現実世界の資産から投資を引き剥がしてきた。しかし、その潮目がいま大きく変わりつつある。

ボストン・コンサルティング・グループの調査は、ブランドマーケティングがいまなお重要であることを示している。今日、ブランド投資を1ドル削れば、手放した「マインドシェア」を取り戻すために、将来1.92ドルの追加投資が必要になり得るという。

多くのマーケターは、ブランドマーケティングに投資すべきだと分かっている。ただ、効果が刹那的なチャネルに投資し続けることに疲弊しているのだ。

消費者の注意は頭打ちになった

多くの戦略資料が避けて通る不都合な真実がある。消費者の注意は増えていない。固定されている。

デロイトの2025年版デジタルメディアトレンド調査によれば、米国のメディア/エンターテインメントの消費は1人当たり1日約6時間で、重要なのはそれが増えていない点だ。その一方で、広告主は増え続け、生成AIがコンテンツで市場を飽和させ、あらゆるプラットフォームは四半期ごとに混雑していく。

これが現代マーケティングのパラドックスである。支出を増やしても、インパクトは小さくなり得る。

体験型マーケティングは、これを完全に回避する。同じ「スクリーンタイム」という上限のある器の中で競わないからだ。現実の世界で注意を創り出す。実際の瞬間は発見として刻まれ、個人的に感じられ、関係性を築く。

ブランドのコントロール危機が到来した

2026年、カスタマージャーニーはファネルではない。フリッパーのないピンボールマシンだ。見込み客はTikTok、Instagram、Google検索、Amazon、Redditのスレッド、YouTubeレビュー、クリエイターの言及、グループチャット、AIの回答の間を跳ね回る。ブランドが主導権を握れる場面はほとんどない。

ボストン・コンサルティング・グループは、この混乱の要因について驚くほど率直だ。注意を巡る前例のない競争、分断された購買導線、AI生成コンテンツが生む容赦ない「同質化の海」である。

体験型は、この構図を根底から反転させる。ブランドが現実世界でアクティベーションを行うとき、舞台(どの街区か、どの会場か、どのカルチャーの瞬間か)、物語の弧(焦らし、開示、報酬)、そしてインタラクションそのものをコントロールできる。

なぜ体験型は、ブランドが本当に必要とするものを提供できるのか

借りたリーチではなく、獲得したアテンション:強いアクティベーションは、誰かをターゲティングするのではない。引き寄せる。面白そうだから人は立ち止まり、時間を使う価値があると感じるから関わる。力学がまったく違う。

象徴的なジェスチャーではなく、本当のエンゲージメント:SNSの「いいね」はタップにすぎない。体験型のエンゲージメントは瞬間である。会話、サンプリング、サプライズ、友人との写真。より高解像度のブランドエンゲージメントだ。

将来の獲得コストを押し下げる関係性:真のROIは、現地で起きることではない。その後に続くものだ。ブランドに親近感が生まれることで有料メディアへの抵抗が下がり、対面で信頼が築かれることでコンバージョン率が上がり、本当にシェアしたくなる体験だからユーザー生成コンテンツ(UGC)が増え、価値あるものを提供した結果としてファーストパーティのつながりが増える。

体験型はデジタルを置き換えるのではない。デジタルの効果を高める。

突破口を開く方法

ブランドには、現実世界での関連性、信頼、証拠が必要だ。ブランドがフィード、ダッシュボード、広告ユニットの中にしか存在しないなら、それは脆い。街に、コミュニティに、共有される瞬間に存在するなら、より強靭で、想起されやすくなる。

だから、ファネルを最適化するのはよい。パフォーマンス施策を回すのもよい。賢くメディアを買うのもよい。しかし、継続的な現実世界での存在を築いていないなら、あなたは借り物の土地にブランドを建てている。

体験型が初めてなら、私の推奨はこうだ。大きなローンチの一発勝負は避ける。シンプルで、繰り返し実行できるものを作る。

都市を1つ選び、顧客がすでに生活している2〜4つの地域を見つける。食べ、買い物をし、日々を行き来している場所だ。そして、90日間の体験型マーケティング・スプリントを走らせる。複雑である必要はない。街角にサンプリング用の自転車を置く。ブランド車両を、顧客がもともといる場所に出す。継続的に展開できることをやる。

目標は、たった1日の最高の日ではない。ブランドのプレゼンスである。近隣レベルで安定的に可視化され、人々に「このブランドは自分たちの世界の一部だ」と感じさせるような存在感だ。

そのうえで、デジタル、クリエイター、広報、ソーシャルメディアを使い、現場で起きていることを増幅させる。フィードで「現実世界の証拠」に勝るものはない。誰かが商品を発見し、反応し、友人に話す、その光景だ。

最後に、ビジネスにとって重要なものを追跡する。トライアル、登録、ソーシャルコンテンツ量、検索リフト、ブランド言及、あるいは購買意向層での売上リフト。指標は、それが本物を築いているのか、それとも騒音を増やしているだけなのかを教えてくれる。

要点:自分が所有できるものを築け

ここでの主たる要点は、複利で積み上がる自社保有チャネルを構築することだ。デジタルは依然として機能する。しかし、すべてのインプレッションも、すべてのオーディエンスも、すべての成果も、他者のシステムの内側に存在している。

体験型は違う。現実世界に一貫して現れ続ければ、どのプラットフォームも値付けを変えたり、取り上げたりできないものを築ける。人々はあなたのブランドを認識し、話題にし、シェアし、信頼する。なぜなら、あなたを体験しているからだ。

2026年における最高のマーケティングチャネルは現実世界であり、そこは大きく開かれている。ブランドをアクティベートせよ。

forbes.com 原文

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