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2026.03.17 09:45

アンデスを越えて広がるデジタルウォレット革命

AdobeStock

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中南米の金融を支える「地殻」は、いま動いている。2020年にブラジルでPixが始動したとき、数百万人の送金のあり方を塗り替えてきた即時決済システムは大きな衝撃をもたらした。そして数年を経た現在、その影響は大陸規模の地殻変動とも言える再編を促している。とりわけコロンビアとペルーでは、デジタルウォレットをはじめとする金融テクノロジーが消費者の期待値を揺さぶっている。

この地域への参入を目指す国際企業は、この揺れを無視できない。Pixがブラジルでゲームチェンジャーとなったのは、日常生活のリズムを変え、支払いを「即時性」の行為へと変えたからだ。瞬時で、無料で、相互運用できる。銀行に足を踏み入れたことのない人々が、突如としてポケットにデジタルウォレットを持つようになった。そして行動がこれほど容易になると、断層が裂けるように機会が一気に広がる。残念ながら本稿では、こうした変化に関わるすべてを網羅することはできない。それでも、これらの国々でマーケティング戦略を策定する際には、決済に目を向ける必要があることを企業に促したい。

金融環境を把握せよ

アンデス周辺の国々はこの揺れを感知し、影響を測定し、自国の仕組みづくりに着手した。Pixに直接触発されたものもあれば、地域のフィンテックの創意から生まれたものもあるが、いずれも摩擦のない金融包摂へと同じ方向に進んでいる。その結果、デジタルウォレットを保有する中南米の人々の数は2021年から2025年にかけて4倍となり、11%から43%へと上昇した。モバイルウォレット保有の伸びが最も大きかったのはコロンビアとペルーで、それぞれ49ポイント、46ポイント増となっている。

私は最近ボゴタに滞在したが、デジタルウォレットは至る所にある。コロンビア人の73%が少なくとも1つを持ち、NequiやDaviPlataといったプラットフォームが、NubankやアルゼンチンのUaláなど海外勢の挑戦者と並んで定着している。2023年だけでも、コロンビアではデジタルウォレットを通じて332兆ペソ(8760万ドル超)が支出された。エコシステムがあまりに高密度なため、財務省はウォレット決済に対し1.5%の源泉徴収税を適用する案まで提示した。

一方のペルーも、同様のスピードでこの変化を受け入れている。同国のデジタル決済による購入は2020年から2023年にかけて5倍となり、リマ住民の95%がいまやデジタルウォレットを利用しており、月平均173ソル(約51ドル)を支出している。こうした国単位の変化も、孤立した現象ではない。エクアドルではデジタルトランザクションが2019年から2024年にかけて225%増加し、ボリビアではウォレット利用が4年で415%急伸した。興味深いことに後者では、市場をリードするウォレットはボリビアのものではなくペルーのものだ。これは、行動の進化がインフラを上回り、需要が国境に頓着しないことを示す越境現象である。

現地の決済文化に適応せよ──さもなければ代償を払うことになる

ウォレットは、新たな高速道路や山を貫くトンネルがなし得るよりも速く、アンデスをつないでいる。したがって、この地域への拡大を狙う海外ブランドにとって、現地の決済システムを受け入れることは、高地での順応と同じくらい不可欠だ。アンデス一帯で消費者の期待は大きく変わり、いまや決済手段は無料で、即時で、モバイルネイティブでなければ、失敗が約束されている。

だからこそ私はSherlock Communicationsで、決済戦略が現地の現実と合致するまで、この地域でのローンチを見送るよう国際企業クライアントを積極的に説得してきた。「後から追加すればいい」という発想は通用しない。ローンチ時に整っていなければ、「後から」はやって来ない。この新しい決済文化は、より深い調査も要求する。もはや属性やメディア習慣だけでは不十分だ。デジタルウォレットとの提携は、代理店との関係や物流契約と同じくらい戦略的になり得る以上、調査は金融行動にまで踏み込む必要がある。

ここほどスマートフォンがブラウザーであるのと同じくらい銀行でもある場所はない。この事実を見落とす海外のマーケティングの達人たちは、摩擦が自社製品ではなく決済手段にあることに、手遅れになってから気づくだろう。ブラジルと同様、アンデス地域ではデジタルウォレットが、ブランドにとって関係性のきっかけを作り、人々が実際にどう暮らしているのかを理解していることを証明する機会となる。クスコで鉄道チケットを支払うこと、ボゴタで友人と夕食や飲み物の代金を割り勘にすること、キトで数秒のうちに送金すること。そうした「楽さ」の瞬間が、派手なマーケティングキャンペーンよりも速くロイヤルティを生む。

したがって、冒頭の前振りとは裏腹に、中南米経済の地殻は実際にはすでに動き終えている。ブラジルの実験が土台を築き、いまや地域のエコシステムは十分に発達し、日々いっそう深く、より包摂的であることを示している。「フィンテック」という地殻変動と歩調を合わせる国際企業は、肥沃な地盤に立つことになる。警告を無視する企業は、市場が足元で動いていたことにすぐ気づかされるだろう。

forbes.com 原文

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