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2026.03.17 08:31

欧州12行がユーロ建てステーブルコイン発行へ、米国依存の終焉を目指す

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欧州のデジタル金融の風景は、理論的な探求から具体的な構造変化へと移りつつある。長年、伝統的な金融機関はブロックチェーン技術を、好奇心と警戒心が入り混じった眼差しで見てきた。だが、QivalisのCEOであるJan-Oliver Sell氏によれば、その躊躇の時期は公式に終わったという。

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BNP、ING、UniCreditなど、現時点で12行からなるコンソーシアムによって設立されたQivalisは、24時間365日のオンチェーン決済を可能にするMiCA準拠の1対1ユーロ連動型ステーブルコインを発行する。同プラットフォームは、ブロックチェーンの効率性と伝統的金融の間に立つ中立的なインターフェースとして機能し、欧州の通貨主権を確保することを目的とする。2026年後半にローンチ予定である。

欧州におけるステーブルコインの現状、主要銀行がなぜどのように結集しているのか、そしてこれがアクワイアラーなどより広いエコシステムにいかなる影響を与えるのかについて、話を聞いた。

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価値のインターネットを構築する

その核心において、Qivalisは投機的な暗号資産をまた1つ作ることを意図しているのではない。Sell氏は、計画されているユーロ建てステーブルコインを、ブロックチェーン・レールの効率性と伝統的な市場インフラを結びつける基盤的な決済レイヤーだと説明する。実物資産や金融商品がトークン化へと向かうなか、信頼できる「オンチェーン版ユーロ」の必要性は、運用上の必須要件となっている。

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「ブロックチェーンは『価値のインターネット』を体現している」とSell氏は言う。「あらゆる指標で効率性を提供するブロックチェーン層と、伝統的な市場インフラの間のインターフェースを我々は構築している」

このプロジェクトは、機関としての健全性、オープンなコンソーシアムモデル、そして中立性という3つの柱の上に成り立つ。暗号資産市場規制(MiCA)の枠組みのもと、Ethereum Money Token(EMT)を発行する完全に規制された電子マネー機関(EMI)として運営することで、Qivalisは銀行に法的確実性を提供することを目指す。すべてのユーロトークンは、現金預金と高品質流動資産によって1対1で裏付けられ、オランダ中央銀行の監督を受ける。

決済スピードが新たな金利である

法人顧客にとって、オンチェーンのユーロが持つ最大の魅力は、決済の摩擦を取り除ける点にある。現行システムでは、国際送金やマネーマーケットファンドへの資金の出し入れに数日を要することがある。Sell氏は、24時間365日稼働するグローバル経済において、バッチ処理を待つことはもはや現実的な選択肢ではないと主張する。

「決済スピードは新たな金利だ」とSell氏は説明する。彼はドイツのメーカーがサプライヤーに支払う例を挙げる。現行システムでは、複数日に及ぶ照合作業が必要になる。Qivalisが発行するようなユーロのステーブルコインを用いれば、その「悪夢」は単一のスマートコントラクトのトリガーに縮減できる可能性があるという。

目標は、T+1やT+2の決済サイクルからT+10分へ移行し、伝統的な銀行が閉まっている時間帯でも利用可能な24時間365日の流動性を提供することにある。この効率性は、機械同士の支払いにネイティブなデジタル通貨を必要とする、新興のWeb3やモノのインターネット(IoT)経済にとって、とりわけ重要である。

欧州主権のための安全弁

効率性に加え、Qivalisの創設には地政学的な要素もある。現在、ステーブルコイン市場は対外的なドル連動型資産が支配している。Sell氏は、EU域外の決済レールへの依存が、欧州企業にとって脆弱性を生むと警告する。

「2026年以降における真の主権は、国境だけの問題ではない」とSell氏は言う。「それはデータと決済の問題だ」。コンソーシアムは「メイド・イン・ヨーロッパ」のソリューションを構築することで、大陸の金融の行方を自らの手中にとどめ、欧州統合がデジタル領域にも及ぶことを確かなものにしようとしている。

加盟店アクワイアラーへの助言

MiCAの枠組みが定着するにつれ、Sell氏は、加盟店アクワイアラーは適応しなければ存在感を失うリスクがあると示唆する。多くのティア1アクワイアラーは、ステーブルコインの移転を合法的に促進するため、MiCAのもとで暗号資産カストディのライセンスをすでに確保しているという。

アクワイアラーの役割は、単なるプロセッサーから「流動性のオーケストレーター」へと進化しつつある。遅いデータ移動に対する高い手数料が時代遅れとなるなかで、「インターチェンジのレントシーカー」としての役割は失うかもしれない。一方で、オンチェーン・インフラと加盟店の売り場をつなぐ橋渡しとして、新たなポジションを得る。

Sell氏はまた、エージェント型AIがプログラマブル・マネーのフローを管理する未来も見込む。これは、自律走行車向けにAIエージェントが独立してマイクロペイメントを承認したり、人の介入なしに複雑なトレジャリーのリバランスを実行したりするといった形を取り得る。

囲い込みではなく、オープンな標準

銀行グループによって設立されたとはいえ、Sell氏は、Qivalisが発行するユーロ・ステーブルコインが「囲い込み」やプライベート台帳にはならないと強調する。フィンテック、ライセンスを持つ仲介者、そして分散型金融(DeFi)コミュニティが利用することを想定したパブリック・インフラだという。

「我々は銀行やフィンテックと競争するためにここにいるのではない」とSell氏は言う。「彼らが革新できるようにするデジタルの配管を提供するためにここにいる」

Qivalisがステーブルコインのローンチに向けて準備を進めるなか、金融セクターへのメッセージは明確だ。未来のインフラは今まさに構築されており、それはネイティブにデジタルで、24時間365日稼働し、厳格に規制されたものなのだ。

forbes.com 原文

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