とりわけ懸念されるのが海水淡水化プラントへの攻撃だ。この地域は飲料水の供給をこれらの施設にほぼ全面的に依存しているからだ。国連の最近のデータによると、サウジアラビアの飲料水の70%近くが海水淡水化プラントから供給されており、その割合はオマーンでは86%、クウェートでは90%に達する。イスラエルも、飲料水のほぼ半分を沿岸部にある大規模な海水淡水化プラントで賄っている。
筆者のみるところ、この攻撃がさらに激化した場合、状況は悪化の一途をたどり、双方による重要な民間インフラに対する攻撃の応酬が常態化しかねない。もしそうなれば、地域の戦後の復旧にとってもきわめて憂慮すべき事態になる。
航空戦力の限界
明確になりつつある最後の動向は、米国とイスラエルの航空戦力が、この作戦で当初掲げられていた目標の多くを達成できていないことだ。たとえば、イランの防空システムを迅速に制圧し、航空優勢を確立したにもかかわらず、航空戦力面のこの優位は、イランに対する体制転換の強要や、イラン国民による新たな大規模反政府デモの誘発、イラン国内に残された濃縮ウラン備蓄の破壊、あるいは少なくとも現時点では、ホルムズ海峡を通る原油輸送の円滑な流れの確保につながっていない。
米軍とイスラエル軍による合同の空爆により、イランの在来型の軍事能力が著しく低下し、ミサイルとドローンの製造施設や備蓄が損なわれ、体制側の通信が妨害され、個々の指導者の身の危険が高まったことに疑問の余地はほとんどない。だが、この攻撃ではこれまでのところ、航空戦力は現代戦に不可欠な要素であるものの、国家の軍事力のほかの要素、とくに地上部隊と統合された場合にこそ、より大きな効果を発揮するという現実が浮き彫りになっている。
終結の見通し立たず
こうした状況を踏まえると、双方が決定的な優位を得ようとするなか、少なくとも向こう数週間は激しい戦闘が続くと予想される。私見では、次に差し迫った火種になりそうなのは、イランが引き続きホルムズ海峡の選択的な通航制限を続けた場合、米国がその強制的な開通を試みることだ。とりわけ、イランが機雷を敷設し、開通作戦に参加する米国(や場合によっては欧州)の艦艇に対する攻撃に踏み切った場合、作戦は複雑なものになると見込まれる。
このほか、向こう数週間次の点にも注目している。
・イランの代理勢力、とりわけヒズボラやイエメンの反政府勢力フーシ派がとるかもしれない対応
・ロシアが行っているとされる対イラン支援と、それによる戦場への影響
・国際的な原油輸送の安全確保で欧州諸国が果たす役割
・イランの弾道ミサイル備蓄の減少および(それよりは余裕があるが)ドローン備蓄の減少と、米国・イスラエルの迎撃弾の生産能力との「消耗戦」
・イスラエルによるレバノンでの軍事作戦の拡大
・中国またはロシアがこの危機の終結に向けた仲介役を担う兆候


