中国にクリーンエネルギー製造の支配を許せば、危険な経済力集中が生まれるとの批判もある。一国が太陽光パネルの生産、バッテリー製造、重要鉱物の加工を一手に握れば、輸出を制限したり、価格を操作したり、政治的圧力をかけたりすることが理論上可能になる。それは決して架空のリスクではない。
一方、それに対する抑止力もある。中国のクリーンエネルギー産業は、世界市場での大規模な売り上げに支えられており、これが相互依存関係をつくり出している。中国が外国の買い手に依存すればするほど、予測可能なビジネスパートナーであり続ける動機付けが強まるのだ。サプライチェーンを「武器化」しすぎれば、米国や欧州、インド、東南アジアで多角化を加速させ、結果として中国の市場シェアを低下させかねない。世界は脱炭素化を進めるほど中国のハードウェアに依存するようになり、こうした状況は中国以外の国で信頼できる代替品が開発されない限り続く。
しかし、この話には明らかなグレーゾーンがある。気候変動問題を専門とする独シンクタンクのアゴラ・エネルギーウェンデによれば、中国は依然として世界最大の石炭消費国であり、発電容量の約55%を石炭が占めている。石炭発電が成長している以上、クリーンテクノロジーの推進は真のエネルギー転換ではなく、むしろ並行戦略ではないかと主張する懐疑論もある。
肝心なのは火力発電所の稼働率
問題の核心は、中国が石炭火力発電所を何基建設したかではない。実際にどれだけ稼働しているかだ。石炭プロジェクトの多くは、地元の雇用、地域への影響力、エネルギー安全保障といった政治的な理由から進められている。だが、風力発電や太陽光発電が急速に成長し、石炭発電所の年間稼働時間が減少すれば、発電所が稼働し続けていてもエネルギーシステムの構成は変化していることになる。これはエンバーのデータにも表れている。
その意味するところは、石炭の消滅ではなく、その役割が基幹電源としての支配的な地位からバックアップや調整電源へと変化しつつあるということだ。そして、中国が安価な風力、太陽光、バッテリーの製造規模を拡大し続ければ、電力価格は低下し、中国の製造業は化学、鉄鋼、電子機器から先端製造業まで、あらゆる分野で競争力が高まる。グリーン移行が単なる気候政策ではなく、コスト面での優位性となるのだ。


