ウクライナでロシアの勝利を阻止することは、イランの悪政を終わらせることと同様に、米国、ひいては自由主義世界の安全保障にとって極めて重要だ。米国とイスラエルがイランで勝利を収めれば、中国、ロシア、北朝鮮の帝国主義的野望に大きな打撃を与えるだろう。米国がイランで勝利すれば、体制転換を導く。それ以下では、米国の信頼が大きく揺らぐことになる。
一方、ウクライナの真の独立を維持し、確固たるものにすることも同様に重要だ。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、将来的なロシアの攻撃からウクライナが身を守る能力を完全に損なうような、大規模な領土割譲を要求する姿勢を一度も崩したことがない。譲歩案には、将来のロシアの攻撃に対する引き金となり得る、相当規模の欧州軍の常駐を禁止することも含まれるだろう。つまり、ロシアが新たに侵攻すれば、他の欧州諸国との戦争が引き起こされることになる。ウクライナを巡る和平合意が不十分なものになれば、最終的には同国の独立が失われ、国民や文化に甚大な悪影響を及ぼすことになる。米国はウクライナに対し、ドローン(無人機)などの兵器を製造しているロシア国内の工場や石油施設を破壊するための手段を提供すべきだ。
ロシアが平和を約束したとしても、何の意味も持たない。同国は1994年、ウクライナの独立を保証する協定に署名していた。ソビエト連邦は1945年、第二次世界大戦中の同盟国だった米国と英国に対し、ポーランドで自由選挙を実施すると約束した。それから間もなく、ソ連は共産主義政権の樹立を画策し、ポーランドはソ連の傀儡(かいらい)国家となった。
残念なことに、米国のドナルド・トランプ政権が望んでいるような和平合意はウクライナを裏切るだけでなく、プーチン大統領がリトアニア、ラトビア、エストニアのバルト三国、ひいてはモルドバをも支配下に置こうとする野望を助長することになるだろう。これらの国々は全て、ソビエト連邦の一部だった。
これは北大西洋条約機構(NATO)を崩壊させることになる。バルト三国はいずれもNATOに加盟しており、同機構の基本理念は「1国への攻撃は全加盟国への攻撃と見なす」ことだ。もしプーチン大統領が、バルト三国に住むロシア人を保護するという偽りの口実の下で、これらの国のいずれかに侵攻した場合、今の米国は実際に戦争に踏み切るだろうか?
ウクライナ和平が不調に終われば、中国は台湾への動きに出るに違いない。恐らく侵攻という形ではなく、近隣の島々を占領したり、封鎖を敷いたりする形になるだろう。台湾周辺地域では、中国が米国より軍事的に優位にあることを踏まえると、米国はどのように対応するだろうか?
中国の習近平国家主席は、トランプ大統領が今後、台湾は自力でやってくれというメッセージを送るかもしれないと期待している。その見返りとして、中国は大規模だが実体のない貿易協定に合意し、米国の技術の盗用をやめるという偽りの約束をするだろう。こうした状況下では、台湾はいずれ中国に屈服せざるを得なくなる。
さらに悪いことに、他の国々も自国の独立を米国はもはや守ってくれないと感じるに違いない。それに伴い、中国が世界の新たな覇権国家と見なされることになるだろう。韓国や日本、そして恐らくドイツやポーランドといった国々も、核保有国となるべく全力を尽くすようになるかもしれない。これは不吉で、地域の安定を脅かす事態となる。ウクライナと台湾に関して恐るべきことは、米政府高官の大部分が自国の将来の繁栄にとって、これら両国が極めて重要であるという事実を戦略的に見落としている点だ。



