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2026.03.16 18:57

アスリートやクリエイターへの投資が可能に? 人的資本という新資産クラスの可能性

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投資家は長年にわたり、企業やコモディティ、知的財産に資金を投じてきた。だが、直接的に投資の対象となることがほとんどなかったものがある。人である。

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その発想が、変わり始めているかもしれない。

スポーツ、エンターテインメント、そしてクリエイターエコノミーにまたがり、個人の評判とオーディエンスの注目は、ますます経済資産のように機能し始めている。アスリートはグローバルなブランドを築き、クリエイターはオーディエンスを軸にビジネスを構築する。公人は、自身のアイデンティティと知的財産にひもづいた収益源を生み出している。

Royaltizのようなプラットフォームは、キャリアの成功に連動するデジタル資産を通じて、ファンがアスリートや公人に投資できるようにすることで、その関係をより直接的なものにしようと試みている。

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「人間は地球上で最も大きな価値を生み出している」。Royaltiz共同創業者のケビン・クルヴィジエはインタビューでそう語った。「現実の世界でも、雇用主はあなたに投資している。所属クラブもそうだし、ベンチャーキャピタルもスタートアップ創業者に資金を投じる際に同じことをしている」

言い換えれば、市場はこれまで長く企業やアイデアに価格を付けてきた。いま問われているのは、人にも価格を付けられるのかどうかである。

この潮流の背景には、偶然ではないタイミングもあるのだろう。ゴールドマン・サックスの推計によれば、クリエイターエコノミーだけでも、2027年までに4800億ドル規模に近づく可能性がある。個人クリエイターがオーディエンスをビジネスに転換するケースが増えているためだ。

評判と注目が経済価値を生むのであれば、次の問いは自然に導かれる。なぜ市場はそれらに価格を付けようとしないのか。

才能を収益化してきた長い歴史

この概念は未来的に聞こえるかもしれないが、その根は新しいものではない。

1997年、デヴィッド・ボウイは、自身の音楽カタログから将来生じるロイヤルティを裏付けとして5500万ドルの債券を発行した。いわゆる「ボウイ・ボンド」は、アーティストの知的財産が生み出す収益に投資家が参加できる仕組みだった。

当時から変わったのは、影響力と注目をリアルタイムで測定できるようになった点である。ソーシャルプラットフォームは、オーディエンスの増加やエンゲージメントに関するシグナルを絶えず提供する一方で、投資そのものも一般ユーザーにとって大幅にアクセスしやすくなった。

Robinhoodのようなプラットフォームは、新世代の個人投資家の間でモバイル取引を普及させる一助となった。

同時に、個人そのものが商業プラットフォームになりつつある。トップアスリートはいまや、ブランド提携やスポンサーシップを通じて莫大な収益を生み出す。例えばクリスティアーノ・ロナウドは、キャリアを通じて、スポンサー契約から数億ドルを稼いできた。

オンラインのクリエイターも同様の軌跡をたどっている。MrBeastのような人物は、オーディエンスを基盤に、メディア、消費財、エンターテインメント事業にまたがるビジネスを築いてきた。

その意味で、Royaltizのようなプラットフォームは、パーソナルブランドに対する一種のベンチャーキャピタル市場に似ている。

同社は現在、プロアスリートからテレビタレント、シェフに至るまで、220人超のタレントを欧州でリストしている。会社によれば、欧州では月間アクティブユーザーがおよそ2万人に達し、米国での最近のローンチでは、最初のタレント掲載後に5000超の新規アカウントが作成されたという。

「このタイミングは複数の要因の組み合わせから来ている」とクルヴィジエは言う。「セレブリティは、自分のイメージやビジネスを、現代の経済に合致する形で収益化できることをますます理解し始めている。同時に、ユーザーは新しいタイプの資産を取引したがっている」

人間の可能性に価格を付ける

人的資本が投資可能になりつつあるなら、次の課題はその価値をどう評価するかである。

経済学者は長年、技能、経験、評判を人的資本として説明してきた。これは経済学者ゲーリー・ベッカーによって広く知られるようになった概念である。

伝統的な金融資産は、売上高や利益といった測定可能な指標に依拠する。だがスポーツやエンターテインメントのキャリアは、はるかに予測しにくい。

Royaltizは、公的な注目の指標に資産を連動させることで、その課題に対応しようとしている。欧州モデルでは、リターンはソーシャルプラットフォーム上のオーディエンス増加やエンゲージメントといった指標にひもづけられている。

Instagramのようなプラットフォームは、文化的な可視性やブランド価値の代理指標としての役割を強めている。大きなオーディエンスを持つインフルエンサーは、スポンサーシップや提携を通じて相当な収入を生み出し得る。これは、注目それ自体が測定可能な経済価値を持つという考えを補強する。

「私たちは、各資産を必ずファンダメンタルな価値に結び付けたかった」とクルヴィジエは語る。「根底にある価値は、各タレントのソーシャル上の盛り上がりに連動している」

実質的にこのシステムは、パーソナルブランド価値をめぐるセンチメント市場としての側面も持つ。

クルヴィジエによれば、2025年には、プラットフォームに掲載されたタレントのおよそ4分の1で、価格が25%超上昇した。会社データに基づくと、プラットフォーム全体では、過去4年間でポートフォリオが平均年利回り約9.2%を生み出してきたという。

一例が、ブノワ・サンドニで、同プラットフォーム上の資産は年率およそ50%のリターンをもたらした。

これらの数字は、個人の成功に連動する市場の魅力と同時に、そのボラティリティも示している。スポーツやエンターテインメントのキャリアは、パフォーマンスや負傷、そして変化する世間の注目によって、急速に状況が変わり得る。

ディストピア的な問い

キャリアを取引可能な資産に変えるという発想は、不可避的に倫理的な問いを生む。

個人を中心に組み立てられた市場は、成功がすでに世間の注目に大きく依存している業界に、投機的な力学を持ち込む可能性がある。批判者は、評判を金融化することが、ファンとしての参加と所有の境界を曖昧にするリスクがあると主張する。

クルヴィジエは、Royaltizがまさにそうした落とし穴を避けるためにモデルを設計していると述べる。

「法的な理由から、スターはトークンの共同発行者ではない」と彼は言う。「それによって複雑さを避けられる。スターがユーザーにトークンを投げ売りすることもできないし、ファンがタレントのキャリアに対して権利を持つこともない」

実務上それは、投資家がキャリアの成功に対して金銭的に参加する一方で、それを支配することはない、という意味である。

スポーツ以外でも、Royaltizはこのモデルが他の才能の形態へと広がり得ると考えている。欧州では、テレビ司会者やシェフにひもづく掲載を試しており、キャリアのより早い段階で新進タレントを支援する方法も模索している。

「若いタレントもローンチする予定だ」とクルヴィジエは言う。「歩みの始まりにいる個人の資金調達に役立つ」

政策上の問い

個人にひもづく市場が進化するにつれ、規制当局は、これらの資産が既存の金融枠組みの中でどのように位置付けられるべきかを、ますます判断する必要に迫られるかもしれない。

米国では、Royaltizは一部の提供において規制下の枠組みを追求してきた。同社は米証券取引委員会(SEC)からRegulation A+に基づく適格性を取得しており、タレントの収益に連動するレベニューシェア型資産を個人投資家に提供できる。

その一例が、テニス選手ニック・キリオスに関するものだ。

規制当局が最終的にこれらのモデルをどう扱うかによって、人的資本にひもづく市場がニッチな実験にとどまるのか、それともより広範な資産カテゴリーへと進化するのかが左右される可能性がある。

パーソナルブランド、デジタルアイデンティティ、知的財産が引き続き収斂するにつれ、金融資産、コレクティブル、そしてファンエンゲージメント商品との境界は、ますます定義しにくくなっていくだろう。

人的資本が「人間」ではないとき

投資可能な人的資本という発想は、いずれ人間そのものを超えて広がるかもしれない。

デジタル人格やAI生成のクリエイターは、すでにオンラインで大きなオーディエンスを集めている。Lil Miquelaのようなバーチャルインフルエンサーは、人間ではないにもかかわらず、数百万人のフォロワーを築いてきた。

一方、ChatGPTのような生成システムは、ソフトウェアエージェントがコンテンツを生み出し、コミュニティを築き、潜在的には収益源を生み出し得ることを示している。

Royaltizはすでに、こうした動きが自社プラットフォームとどう交差し得るかを考え始めている。

「2022年当時、共同創業者は、まだほとんど知られていなかったChatGPTをトークンとして掲載したがっていた」とクルヴィジエは語る。「それでいいではないか。私たちはすでにAIについて考えている」

Royaltizのようなプラットフォームが最終的に才能の資金調達のあり方を変えるのかどうかは、まだ不確実である。だがこの実験は、現代経済が価値を割り当てる方法の、より大きな転換を映し出している。

評判、創造性、そしてオーディエンスの注目が経済活動を引き続き牽引するなら、人への投資という発想は、いずれ今日ほど珍しいものではなくなるのかもしれない。

forbes.com 原文

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