経営・戦略

2026.03.16 17:28

AIは企業の目的をどう変えるか──HBRカンファレンスが示す8つの示唆

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2月26日に開催されたHBR(ハーバード・ビジネス・レビュー)のAI戦略カンファレンスで、第一線の識者たちがロジャー・マーティンの根源的な問いに取り組んだ。すなわち、短期的な利益を超えた企業の真の存在意義とは何か、である。

各セッションは明確な答えに収束した。無形資産とAIが主導する経済において、存在意義はもはや利益の最大化ではない。それはミッション主導の価値創造へと進化し、人間の能力を拡張し、イノベーションを促進し、社会的便益をもたらすものとなっている。

従来の大量生産モデルは、四半期業績よりも長期的な活力を優先する、適応的で人間中心の組織へと置き換わりつつある。これは将来起こり得る話ではない。登壇者たちは、先進企業でいままさに起きていることを示した。

8つの重要な示唆

1. 戦略の中核にミッションを据えるコロンビア・ビジネススクールのリタ・マクグラス教授は、ノバルティスやファイザーのような企業が、許可不要の小規模チームを単一の大胆なミッション(例えば「革新的な医薬品」)に集中させることで成功している様子を示した。これにより機会が適切に区切られ、人間の潜在能力が解放される。

2. 「オクトパス・オーガニゼーション」を構築する:アマゾンの幹部であるヤナ・ワーナーとフィル・ル=ブランは、AIがヒエラルキーから継続的な適応への転換を求めることを説明した。存在意義とは今や、人々に明確さ、オーナーシップ、好奇心を与え、組織の周縁部で活躍できるようにすることを意味する。

3. AIで抜本的な再創造を行うハーバード・ビジネススクールのツェダル・ニーリー教授は、AIがかつてない規模、スピード、範囲を可能にすることを説明した。モデルナの「テクノロジーが生物学を行う」アプローチがその典型だ。データ駆動型のフライホイールがステークホルダーに卓越した価値を提供しながら、文化の停滞を回避する。

4. AIを企業のOSにするシスコのリズ・セントーニは、AIが人間の判断を置き換えるのではなく拡張し、信頼とロイヤルティを育む超パーソナライズドな体験を創出すべきであることを示した。

5. 実践を通じた学習で豊かさを受け入れるMITスローン経営大学院の主席研究員であるアンディ・マカフィーは、リーダーたちにAIを汎用技術として扱うよう促した。存在意義とは、ヒエラルキーをフラット化し、人々を探求とイノベーションに解放するという大胆なコミットメントとなる。

6. AIを軸にビジネスモデルを再考するピュブリシス・サピエントCEOのナイジェル・ヴァズは、勝つ企業はAIを自社のOSに変え、大きな問題、学際的なつながり、厳密なユニットエコノミクスに焦点を当てると主張した。

7. AIでブルーオーシャンを創出するINSEADのチャン・キム教授とレネ・モボルニュ教授は、AIが人間の想像力を補完して未開拓市場を開く方法を示した。両氏は、AIによる変革の中で個人が「パーソナル・ブルーオーシャン」を構築するよう促した。

8. TikTokのブレイクスルーに学ぶハーバード・ビジネススクールのフェリックス・オーバーホルツァー=ジー教授のセッションでは、ネットワーク効果に支配された市場でさえ、セレンディピティ、謙虚さ、人間のモチベーションへの深い理解を通じて切り崩せることが示された。これは、まったく異なる種類の組織を必要とする。従来型の経営を行う企業の長期リターンが一般的に10%以下にとどまる中、少数の先進企業は最大40%のリターンを上げて先を行っている。

新たな存在意義:AIが拡張する豊かさ

カンファレンス全体を通じて、統一的なテーマが浮かび上がった。AIは人間の創造性と判断力を置き換えるのではなく、拡張すべきであるということだ。最も成功しているリーダーたちは、豊かさを生み出すシステムを設計している──より高い生産性、より多くのイノベーション、そしてより大きな人間の繁栄をもたらすシステムである。

ある意味で、戦略の古いルールは変わっていない。より大きな価値を創造するには、依然として他者が持たない洞察を生み出し、他者にはできない方法で顧客にサービスを提供し、他者がしないトレードオフを行うことが求められる。AIは単に、それをより良く行うための強力な新しいツールを与えてくれるのだ。

しかし、AI時代の存在意義は、もはや価値を抽出することではない。価値を創造することである──顧客、従業員、社会、そして企業の長期的な活力のために。

forbes.com 原文

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