教育

2026.03.26 14:15

「最寄り駅まで30キロ」の町から早慶へ━━グローバルエリートを育てるのは塾か、親の人柄か

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筆者は現在、慶應義塾大学(文学部外国語教育)で教壇に立っている。将来のグローバルエリートと期待される学生と触れ合う機会も少なくない。昨年1月、早慶上智に通う9人の学生と話した記事(「日本で『グローバルエリート』は育つか?」)には、予想をはるかに上回る反響があった。なかでも多かったのが、「環境がそもそも違う」というため息混じりのコメントだ。パリ大学帰りの才媛、フィリピンでホームスクーリングを受けた少年、NHKアナウンサーを父に持つ青年。そういう人たちの話だろう、と。

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今年も大学合格発表が一段落した今、あの取材の続きを書かなければと思った。なぜなら、あの9人の中には、まったく違う出発点を持つ若者たちもいたからだ。

「電車が走っていない町」から慶應へ

北海道・東川町。人口8000人。最寄り駅まで30キロ、というより、そもそもGoogleマップ上の「最寄り駅」という概念すら怪しい距離だ。

そこで育ったOさん(慶大)は言った。「高校で『進学するの?』と聞かれると、みんな『専門学校』の話をするんです。四年制大学という選択肢は、会話にさえ出てこない」

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塾は車で30分先。親は大学未進学。そんな彼女が東京の高校、そして慶應大学へたどり着いたきっかけは、中学生のとき親に連れて行ってもらったアメリカでの一週間だった。「英語が全然通じなくて。そこから独学で勉強を始めました」

愛知県一宮市の市中でも、岐阜県との境に近い地域で育ったS君(慶應大学)も似たような話をしてくれた。家族で初めて大学に進学した、いわゆる「ファースト・ジェネレーション」だ。「勉強しろと言われたことは一度もない。でも、親は何も否定もしなかった」

オバマ大統領をテレビで見て「アメリカ大統領になりたい」と言い出した小学生に、親は「国籍変えなきゃいけないかな、ネットで調べてみな」と言ったという。

TOEFL 110点の壁と、塾なしで越えた男

取材中、最も場の空気を変えたのがTOEFLの話題だった。TOEFL iBTは120点満点、リーディング・リスニング・ライティング・スピーキングの4技能を測る英語の国際試験で、海外の難関大学への出願に広く使われる。オックスフォード大学では上位コースの場合、110点が要求される。「ありえない」と参加者のひとりが思わず声を上げた。

シンガポールのインターナショナルスクール出身のMさん(慶應大学)でさえ、100点到達まで「16歳から格闘してきた」と言う。英語は話せても、アカデミックな英語は別物なのだ。

ところが、静岡県の保守的な地方進学校に通い、中学3年生まで「appleのスペリングを間違えた」というK君(早稲田大学)が、塾なしで110点を取った。

「高校のとき、校則もがっちりした学校で、逆にバネになったんだと思います。高1でフランスに交換留学に行って、毎日がすべてフランス語で。英語もフランス語も、自分の中で火がついた」

地方の進学校、反骨精神、一度の留学経験。グローバルな活躍が期待される学生の出自は、想像より多様だった。

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文=長谷川悠里 編集=石井節子

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