アート

2026.03.29 16:00

生成AI時代、「創造」は人をどこへ連れていくのか|アートな数字

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展覧会、芸術祭、フェア、オークションなど多彩な話題が飛び交うアートの世界。この連載では、毎月「数字」を切り口に知られざるアートな話をお届けしていく。今回はビジネスとアート、思考と感覚を織り交ぜたイベントについてレポートする。 


今月の数字|イベントではカンファレンス=9、セッション=7、ショーケース=8、ワークショップ=6のコンテンツが展開された。主催は、大丸有エリアマネジメント協会、Forbes JAPAN、有楽町アートアーバニズム実行委員会、大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会から成る実行委員会。
今月の数字|イベントではカンファレンス=9、セッション=7、ショーケース=8、ワークショップ=6のコンテンツが展開された。主催は、大丸有エリアマネジメント協会、Forbes JAPAN、有楽町アートアーバニズム実行委員会、大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会から成る実行委員会。

AIが日常に浸透した2025年、煩雑な作業はすっかり効率化され、数十秒もあれば楽曲や映像が生成できるようになった。その精度も速度も上がっていくしかない時代に、人間に求められることとは。前年に続いて開催された「FUTURE VISION SUMMIT 2025」(FVS)にはそんなテーマが通底していた。

FVSは、日本有数のビジネス街である丸の内を舞台に、ビジネス、アート、カルチャー、アカデミアといった領域を交差させて未来を構想するイベント。今回は12月9日と10日の2日間に、250人規模のホールでの「カンファレンス」、登壇者との距離が近い「セッション」、アーティストの実践を紹介する「ショーケース」、参加者の創造性を喚起する「ワークショップ」が展開された。インプットして頭で考えるだけでなく、見て、話して、感じるパートが隣り合わせにあることが大きな特徴といえる。

カンファレンス登壇者たち、上段から、左から右へ:
本記事ではカンファレンスをメインに振り返りたい。

「知と創造が拓く未来」と題したキーノートセッションには、東京大学総長の藤井輝夫、東京藝術大学長の日比野克彦、PwC Japanグループの桂憲司が登壇。昨年5月に包括連携協定を結んだ東大・藝大が始めた「浅野キャンパスに美しい穴を掘る」プロジェクトの話から、「穴を深く掘るには広く掘らなければならない」という本質的な議論へ。専門性は汎用性の先にあり、その“広げる”プロセスにおいて、膨大な事例や視点を瞬時に横断するAIは強力なパートナーとなる。

建築家の藤本壮介とアーティストのシアスター・ゲイツの対談では、“ヒューマンスケール”の重要性が語られた。藤本は大阪・関西万博の大屋根リングについて「高さ20m・円周2kmの巨大建築ながら、柱間が3.6m×3.6mで居心地のよい8畳間の感覚を生み出した」と解説。その集合体が158カ国・地域のパビリオンを囲み、ひとつの空を共有する。今後こうした「スケールのミックスが重要になっていく」という。

地元シカゴで地域再生も手がけるゲイツは、「身の回りにあるもの」が創作の原点であると触れ、例えば廃校などアーカイブの活用こそが「戻りたくなる」コミュニティをつくっていくと語った。

経済との循環が期待される文化の未来については、今号の表紙を飾るラッパーのTaiTanと文筆家のデーヴィッド・マークスが、情報が瞬時に行きわたる現代における差別化の難しさ、クリエイターやアーティストの生存戦略について議論。マークスは、AIが普及した先は「資本主義のプレッシャーがない人間の手から生まれるものほど価値が高まっていく」と指摘した。

ついAIと人間を別々に考えがちだが、「2050年の感動体験」をテーマにしたトークでは、別の視点が提示された。「AIかCGか人間かは関係ない。人は技術ではなくストーリーに感動する」。どんな経験を積み、そこから何を想像し、どんな物語として語れるか。その感覚を磨き続け、AIと共創していくことこそが、これからの創造やビジネスを豊かにしていくのだろう。

文=鈴木奈央 写真=若原瑞昌 書=根本充康 イラストレーション=さじきまい

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