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2026.03.18 14:15

「ソーシャルコマース」参入は今 中国で進む越境EC規制の突破口

Getty Images

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日本から中国への越境ECの市場は年々拡大しており、2024年の取引総額は2兆6372億円に上る。しかし、2026年1月、TikTokなどを提供するBytedance社は、抖音(中国版TikTok)上での日本から中国への直送型越境ECについて規制を強化すると発表した。

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背景にあるのは、中国政府によるプラットフォーマー責任の厳格化の要請だ。2024から2026年にかけて政府が進める「デジタル商務三年行動計画」では、越境ECはもはや拡大フェーズではなく、規範化フェーズに入ったと明確に位置づけられている。この動きは、抖音に限らない。RED、天猫、京東といった複数のオンラインショッピングプラットフォームも、「場を提供するだけ」という姿勢は通用しなくなり、健全なプラットフォーム運営を求められるようになっている。その理由は大きく2つある。

1つが、政策対応だ。個人による海外発送や出所不明の商品は並行輸入品と呼ばれ、物流管理や真贋確認の観点からリスクが高いため、政府が規制を強化している。

2つ目が、消費者体験の悪化だ。日本から商品を直接配送する越境ECでは、配送に15〜30日かかったり、返品時の税金や送料を自己負担しなければならなかったりするほか、商品が偽物であるケースも少なくない。「価格は安いが不安定なEC」は、社会的に受け入れられなくなってきた。

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また、消費者体験の向上に向けては、保税倉庫モデルの推進も行われている。このモデルは、直送モデルとは違い、中国現地の保税区に在庫を納庫して、注文に応じて配送する。商品の一時保管場所として税関を通過する前の倉庫を利用することで、国内に商品が届いてから短期間で配送でき、返品手続きもスムーズに進む。

また、税関を通過することで、正規品であることが保証されるため、消費者の信頼が得られる。このため、保税倉庫を利用したモデルが広く支持されるようになった。

このように、消費者体験の向上や並行輸入ではない正規販売を進める動きが生まれている。別の観点では、2025年11月の高市早苗首相による台湾有事発言によって、規制強化の論調や対応が強くなっている背景も否定できない。

「どの市場で戦うか」ではなく「どのチャネルで戦うか」

こうした状況を受け、中国向けのビジネスにブレーキがかかってしまう企業も少なくない。そうした事業者はどのような対応をすべきなのか?

地政学リスクが高まると、多くの企業は「中国依存の見直し」や「海外事業のリスクオフ」を検討するが、そのような場合に考えるべきことは、「どこに成長領域があるのか」である。

その一つの解として今注目したいのが、中国から世界的に広がり始めている「ソーシャルコマース」だ。これは、インフルエンサーや個人が、ライブ配信やSNSで商品を紹介し、購入・決済までをシームレスに完結させる販売手法を指す。従来の「ブランドが展開する広告を見て、ブランド旗艦店(ECショップ)などで購入」するというブランド・商品軸の形態と比べ、人軸の信頼感や安心感が消費者体験の基盤となるのが特徴だ。

クチコミや人軸経済圏が強い中国では元々根付いている商流ではあるが、まさに中国政府が規制をしている出所不明の商品の流通阻止という観点でも、ソーシャルコマースの「透明性」が重要な要素となる。つまり、「どの市場で戦うか」以上に「どのチャネルで戦うか」が重要である。

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文=濵野智成 編集=露原直人

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