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2026.03.21 17:00

「うまくいくはずがない」──それでもMMIは、超小型ロボットでアルツハイマー手術に挑む

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リンパの排出経路を改善する手術は、中国の外科医・謝清平が最初に考案

MMIの臨床試験は、リンパの排出経路を改善する手術を基盤としている。この手術を最初に考案したのは、中国・杭州を拠点とする外科医の謝清平(シエ・チンピン)で、2020年のことだった。ただし当時、この手術はまだ実験段階にあり、謝はすべて手作業で行っていた。そこで彼は2021年、ロボット導入に動き始め、トーランドに連絡を取った。「彼は、患者の状態がどれほど改善したかを示す驚くような動画を見せてきた」とトーランドは語る。「最初に見たときは、正直かなり疑っていた」。

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それでもトーランドは関心を抱き、MMIのスタッフを中国に派遣した。スタッフは手術後の患者を数週間にわたり追跡し、実際に何が起きているのかを調べたという。「評価のために誰かを送り込むたびに、戻ってきたスタッフはますます興奮していた」とトーランドは振り返る。

その後トーランドは、この手術にMMIのロボットを使える可能性について取締役会に提案した。手術前後の患者の映像を見たエルバルディッシは、「そこに何かがあると考えざるを得ない」と判断した。

挑発的で興味深いアイデアだが、科学界には期待と懐疑の両方が存在

もっとも、科学界では期待と懐疑の両方が存在する。UWメディシンの教授で、この分野の主要研究者の1人であるジェフ・イリフはこう語る。「非常に挑発的で興味深いアイデアだ。観察データはいくつか存在するが、決定的な研究はまだ行われていない」。

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英国バーミンガムのアストン大学で、特定のタンパク質が脳の老廃物排出をどのように制御しているかを研究しているロズリン・ビル教授は、手術によって脳が腫れるリスクがある可能性を指摘する。「自分がその患者の1人になりたいかと聞かれれば、現時点では答えはノーだ」と彼女は語る。

問題の1つは、これまで米国で臨床試験が行われていなかったことだ。「この中国人医師が手術について話し始め、関心を集めるまでは、我々はまったく注目していなかった」。フロリダ州ジャクソンビルのバプティスト・ヘルスで神経外科医を務め、MMIの臨床試験にも参加しているリカルド・ハネル医師はそう明かす。これまで中国や韓国で行われてきた研究は評価が難しいとも彼は指摘した。

そして中国政府も同じ見方をしている。2025年7月、中国の保健当局は、この手術が広く行われるようになっている状況を受け、臨床研究が行われるまで実施を禁止した。「この分野はまだ非常に新しい。神経外科医にこの話をすると、『それは呪術のような医療ではないのか』と言う人もいる」と、ハネル医師は語る。

それでも、アジアで行われた手術の調査や既存の研究をまとめた分析では、検証を行うだけの根拠はあると結論づけられている。2026年1月、フランスの医師グループは、この手術に関する9本の研究をまとめたレビュー論文を学術誌Journal of Prevention of Alzheimer’s Diseaseに発表した。彼らは、「臨床的な証拠はまだ限られているものの、この手術には有望な治療の可能性が示されている」と結論づけている。

FDAの承認プロセスを通じ、アジアでの手術が示唆する内容が実証されると期待

トーランドが期待するのは、FDAの承認プロセスを通じて、アジアの手術がすでに示唆していることが最終的に実証されることだ。リンパ系手術は、特にMMIのマイクロロボットを使えば、中等度のアルツハイマー病に対する安全かつ有効な治療になり得る。

「私はこれまでずっと、体内の"配管"を扱う医療に携わってきた。配管を直せば、体はうまく動く」と彼は言う。あとは証明するだけだ。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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