キャリア・教育

2026.03.16 16:15

ソニー・チーフテクノロジーフェロー×『Nature』編集長が語る「初期・中堅キャリアの女性研究者に光を当てる理由」

ソニーグループ・チーフテクノロジーフェローの北野宏明(左)、Nature編集長のマグダレーナ・スキッパー(右)

信念は「多様性は“力”である」

—— STEM(科学・技術・工学・数学)分野におけるジェンダーギャップについて、特に日本では女性の割合が著しく低いことが長年の課題です。ソニーグループのイノベーションを牽引する立場として、このジェンダー不均衡の現状をどう見ておられますか? 

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北野: 私の確固たる信念は「多様性は”力”である」ということです。多様性とは、遵守しなければならない「義務」ではありません。クリエイティブでありたいと願う企業や社会において、多様性は「異なる考え方」を可能にし、インスピレーションをもたらす力なのです。

もちろん、多様性はジェンダーだけではありません。国籍、バックグラウンド、ハンディキャップ、あるいはニューロダイバーシティ(神経多様性)など多岐にわたります。ですから、私はジェンダーだけに焦点を当てることには少し違和感があります。しかし、日本において、そしてテクノロジー分野において、ジェンダーはもっとも明白で、真っ先に取り組むべき課題です。

日本のSTEM領域におけるジェンダーギャップの問題の1つは、高校で理系分野において非常に優秀な成績を収めている女子学生が、大学の専攻選びで理系を選択する割合は低いということです。周りからの影響や社会的なブロックがあるのかもしれませんが、これは個人の機会を奪うだけでなく、日本経済にとっても大きな損失です。私たちは人口減少に苦しんでおり、より多くの才能ある人材が必要です。女子学生が理系専攻を選ばない現状は、最初から人口の半分の才能を失っていることを意味します。マクロ経済的に見れば、危機的状況です。もちろん、言うは易く行うは難しです。私たちができること、そして確実にインパクトを与えられる明快なアクションが、このアワードなのです。

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—— 日本のアカデミアや企業における「同調圧力(social conformity)」が、女性研究者のポテンシャルを阻害し、結果として「頭脳流出」を招いているという指摘もあります。

北野: 日本の企業やアカデミアの多くで職を得ようとすれば、そこは依然として男性優位です。ですから、彼女たちがキャリアを追求するのは困難を伴います。実現することは、不可能ではありませんし、企業やアカデミアも努力し、改善してきています。しかし、意思決定層にいる男性たちが「問題に気づいていない」ということが多々あります。

組織のメンバーに女性が数人いるだけでは不十分で、トップマネジメント層に実質的な「代表権(レプレゼンテーション)」をもつ女性が必要です。

マグダレーナ: 社会科学のデータが示すのは、マイノリティが真に変化をもたらすには、グループの約3分の1という「しきい値」を超えなければならないということです。ひとりいるだけでは、意思決定の場でその声は届きません。マイノリティが心地よさを感じ、真に変化をもたらすためには、グループの約3分の1以上がマイノリティである必要があります。

この文脈において、東京大学が行っている「女性教授を一名採用する際、同時に2つの女性限定ポストを新設する」というアプローチは非常にスマートです。一気に「代表性の割合」を高め、少数派の意見が通る機会を作り出したわけです。

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井村凪伯=文 若原瑞昌=写真

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