「中堅キャリアの女性研究者」への支援が重要
—— テクノロジーやイノベーションの分野における「中堅キャリア」の女性研究者への支援の重要性を強調されていますが、なぜこの時期が重要だと考えられるのでしょうか?
マグダレーナ:キャリアの中期は、研究者にとって特に困難が重なる時期です。初期の成功を土台にキャリアを積み上げながら、予算責任やマネジメント業務が生じる時期です。同時に、多くの女性にとっては出産や育児といったライフイベントが重なる時期でもあります。生物学的、あるいは社会的な理由から、家庭での責任が依然として女性に偏っている現実は否定できません。昔に比べればこうした課題はオープンに語られるようになりました。しかし、それでも課題がまったく軽減されたわけではありません。
もうひとつ、依然として残る課題は、女性の重要な貢献が男性の同僚と比較して過小評価されがちであるということです。これは複雑な課題ですが、だからこそこのアワードのように、彼女たちの真に優れた貢献を可視化するための「場」を提供することに意味があるのです。
私たちはこのアワードを通じて「成功への道は決して1つではない」ということを示したいと考えています。もしロールモデルが1種類しかいなければ、人々は「成功するためにはこの道を通るしかない」と思い込んでしまいます。しかし現実には、成功への道は数多く存在します。多様な成功のルートを社会が認めることで、社会全体がより豊かになるはずです。
北野:また重要なのは、このアワードは単に「賞を授与する」だけでなく「効果的に機能するように設計されている」という点です。ポイントは2つあります。
ひとつは、「初期キャリアから中堅キャリア」に焦点を当てたことです。すでに実績のある人物に賞を贈ることもできますが、それよりも自分のやりたいことに到達するために正当な評価や追加の資金を必要としている層をサポートするのが、もっとも効果的です。
もうひとつは、賞金を「25万ドル」に設定したことです。これは研究者が新しいプロジェクトを始めるための「最小有効規模(Minimum Viable Size)」の資金です。数台のPCや備品を揃えて終わる金額で既存のプロジェクトの助けにはなっても、新しいプロジェクトを「始める」には足りません。今まで温めていたけれど資金がなくて試せなかった「ワイルドなアイデア」に挑戦するための必要最小限の資金、それが私たちが必要だと考えた金額です。
マグダレーナ: 私たちふたりは研究者を経験しているため、どのステージで、どの程度の予算があれば「目に見える成果」を達成できるかを実体験として知っています。だからこそ、このアワードは単なる栄誉やセレモニー以上の意味をもつのです。


