技術者ではない人を対象に、誰もがアプリを開発できる未来を目指す
Replitは、営業担当者やマーケター、中小企業の経営者など、技術者ではない人のためのコーディングエージェントになることで競合との差別化を図ろうとしている。同社は、アプリの開発をコードエディターの中で行うものではなく、グラフィックデザインの作業に近いものにしようとしている。
ReplitのAgent 4では、ユーザーはまず、いくつかのボタンの中から作りたいものを選ぶ。選択肢には、スプレッドシートやデータ可視化、3Dゲームなどが含まれる。その狙いは、アイデア出しから改良、そしてアプリの公開まで、一連の作業をできるだけ簡単に進められるユーザーインターフェースを提供することにある。
巨大なAnthropicとは異なる、独自の機動力と集中力で差別化を図る
マサドによると、Anthropicに対するReplitの強みは、小規模な企業ならではの機動力と集中力にあるという。Anthropicのコーディング能力は確かに優れているが、Anthropicはより広い目標を掲げる巨大なAI研究企業でもある。最終目標の1つはAGI(人工汎用知能)、つまり機械が人間と同等、あるいはそれ以上の能力を持つ状態の実現だと彼は指摘する。
「ダリオは生物学やがん治療に強い関心を持っている。それは素晴らしいことだ」とマサドは、Anthropicの共同創業者ダリオ・アモデイについて語る。「我々にはがんを治すことはできない。Replitの使命は、誰もがソフトウェアエンジニアになれるようにすることだ。私は、我々の限界を分かっている」。
顧客企業が社内アプリに活用し、開発の期間を短縮
Replitの顧客のZillow(ジロー)やDatabricks(データブリックス)、ペイパル、アドビなどの企業は、社内向けアプリを作るためにReplitのツールを利用している。Zillowでは約600人の社員がReplitのアカウントを持ち、この1年間で7000以上のアプリを作成したという。Replitの大きな強みは、エンジニアではない社員でも、自分のアイデアをすばやく試作し、実際に使える形で公開できる点にあると、Zillowの共同創業者兼社長ロイド・フリンクは語る。「Claude CodeやCursorのような他のツールは、内部の仕組みをある程度理解していないと使いこなせない」と彼は述べている。
Databricksのアリ・ゴドシCEOも同意する。「当社の社員の大半は、非常に高度なプログラミング能力を持つ技術者ではない。だからReplitは、そうした層にぴったりなんだ」。
評価額100億ドル(約1.6兆円)のAIカスタマーサービス企業Talkdesk(トークデスク)も、営業や人事を含む複数の部門でReplitを活用している。たとえば同社は、採用できる人数の上限を把握するためのアプリをReplitで開発した。通常なら約2週間かかる作業だったが、Replitを使ったことで2日で完成したと、グローバル人材部門責任者のシャウナ・ジェラティは語る。
過去の失敗を乗り越えて、すべてをゼロからやり直す覚悟で成長
Replitはここ最近、急速な成長を遂げてきたが、最も厳しい時期は2024年に最初のコーディングエージェントを発表する直前だった。マサドは、ユーザーが手動でコードを書くエディターとしての事業モデルでは、もはや会社は続けられないと判断した。完全にAIへと舵を切る必要があったのだ。同社は30人の社員を解雇し、それが退職の連鎖を引き起こした。最終的には社員の半数しか残らなかった。それでも会社を立て直すことに成功した。
「私は、コードでも仕事でも、必要ならすべて捨ててゼロからやり直す覚悟がある。感傷に浸ることはない」とマサドは語る。これは、ジェームズ・ボンド映画の悪役のような人物にふさわしい性格なのかもしれない。


