海外

2026.03.20 16:00

コードを書かずにアプリを作る「バイブコーディング」をより多くの人へ──評価額1.4兆円のReplit

Replit 共同創業者 兼 CEOのアムジャド・マサド(Photo By Stephen McCarthy/Sportsfile for Web Summit Qatar via Getty Images)

ヨルダンで育ち、独学でプログラミングを学ぶ

土木技師の父と専業主婦の母のもとに生まれたマサドは、シリコンバレーから遠く離れたヨルダンのアンマンで育った。両親がともに難民で、父がパレスチナ出身、母がアルジェリア出身の彼の家庭は、中流よりも下のクラスだった。1993年、彼が6歳だった年に父がIBMのパソコンを家に持ち帰り、その1年後、マサドはプログラミングを覚えて弟に数学を教えるアプリを作った。裕福な子どもが通う私立のインターナショナルスクールに通う中で、彼はテクノロジーが自分の人生を経済的に変える可能性に早くから気づいた。

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「友達の多くは、家庭用ゲーム機を持っていて、私もそれが欲しかった」とマサドは語る。そこで彼は、地元のインターネットカフェ向けのソフトウェアを開発し始めた。その1つが、顧客がアカウントを作成でき、ウイルスから身を守ることもできる統合型の管理システムだった。母は、彼に芸術や文学への関心を育てた。10代の頃のマサドは、アラブ圏で人気のある競技形式の詩のパフォーマンスにも取り組んでいた。この経験が、人前で話す力や即興のスキルを身につける助けになったという。

ヨルダンのプリンセス・スマヤ工科大学で学んだ後、彼は2012年に米国へ移住し、オンライン講座でプログラミングを教えるスタートアップCodecademyで勤務した。その後、約3年間、フェイスブックでエンジニアとして働いたのち、妻ハヤとともにReplitを創業した。ハヤは現在、同社でデザイン部門の責任者を務めている。最初の製品は、ブラウザー上で動作するコードエディターだった。

YCのポール・グレアムを通じて、大きな転機を迎える

同社にとって大きな転機となったのが2017年だった。YCのグレアムが、偶然このプロジェクトを見つけたのだ。YCが運営するオンラインフォーラム「Hacker News」を閲覧していた彼はReplitを知り、すぐに投資を決めて育成プログラムに応募するよう勧めた。そして当時YCの代表だったサム・アルトマンにメールを送り、2018年冬のバッチに参加させようと働きかけたという。「私はアムジャドをこれ以上ないほど強く推薦した」とグレアムは語る。「私は何年もこのアイデアを探していた。そしてついに見つけたんだ」。

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生成AIを使ったコーディングの分野で、Anthropicなど強力なライバルが次々に台頭

現在、Replitの前には強力なライバルが立ちはだかっている。AI大手Anthropic(アンソロピック)が開発した生成AIコーディングツール「Claude Code」だ。ここ数カ月で、すでにバイブコーディング分野の有力製品とみられていたClaude Codeは、勢いを増している。

評価額3800億ドル(約60兆円)のAnthropicは、2026年2月初めに最新モデル「Claude Opus 4.6」を発表した。その性能は非常に高く、ソフトウェア企業が存在そのものを脅かされるのではないかという懸念が広がり、世界のソフトウェア株の時価総額が数十億ドル規模で吹き飛んだ。一方、Claude Codeの年換算売上高は25億ドル(約3950億円)に急増している。Claude Codeのインターフェースはより技術者向けで、現在のところホワイトボード型のデザイン要素はない。ただし「Claude Cowork」と呼ばれる別バージョンは、企業内チームの業務向けに設計されており、より使いやすいインターフェースを備えている。

多くの競合製品がひしめく中、「戦時モード」で開発を進める

Anthropic以外にも、バイブコーディング分野には数多くの競合が存在する。Cognition(コグニション)やLovable(ラバブル)といったスタートアップも、この分野で存在感を高めようと競い合っている。

OpenAIの競合製品「Codex」は、週間アクティブユーザー数が160万人に達している。この分野で長く注目を集めてきたCursor(カーソル)も、ここ3カ月で年換算売上高が20億ドル(約3160億円)を超えたと、同社の財務に詳しい関係者は語る。Anthropicを含む競合に対抗するため、Cursorは現在「戦時モード」で開発を進めているという。

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翻訳=上田裕資

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