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2026.03.20 16:00

コードを書かずにアプリを作る「バイブコーディング」をより多くの人へ──評価額1.4兆円のReplit

Replit 共同創業者 兼 CEOのアムジャド・マサド(Photo By Stephen McCarthy/Sportsfile for Web Summit Qatar via Getty Images)

Replit 共同創業者 兼 CEOのアムジャド・マサド(Photo By Stephen McCarthy/Sportsfile for Web Summit Qatar via Getty Images)

Replit(レプリット)のアムジャド・マサドは、ユーザーがまるでホワイトボードに落書きするような感覚でアプリを構築できる人工知能(AI)ツールを開発した。この製品は、ヨルダン出身の移民である彼をビリオネアにした。

人間の自然言語のもとAIが自らコード書く、「バイブコーディング」の概念

ReplitのCEOのマサドは2年前、カリフォルニア州パロアルト近郊にある自宅オフィスに、スタートアップ支援組織Yコンビネータ(YC)の共同創業者として知られるポール・グレアムを招き、新たな製品を披露した。それは、人工知能(AI)エージェントが自らコード書くという斬新な仕組みだった。グレアムが、後に「バイブコーディング」と呼ばれるようになる概念を目にしたのは、このときが初めてだった。「当時は、その呼び方すらまだなかった」とグレアムは振り返る。

AIエージェントがアプリの構築を始めると、プログラマーであるグレアムは、反射的にコードを確認しようとした。するとマサドは、それを制して「見る必要はない」と言った。彼は、ソースコードは単なる副産物にすぎず、これからのプログラミングは自然言語で行われるようになると主張した。「衝撃的だった」と、Replitの初期投資家でもあるグレアムはフォーブスに語る。「禿げ頭にヒゲの彼は、たしか黒いタートルネックを着ていた。まるでジェームズ・ボンドの映画の悪役みたいだった。『そのコードを見るな!』という感じだった」。

エージェントと一緒に設計していく感覚、最新のAIエージェントを発表

バイブコーディングが普及する中、Replitはその先の段階へ進もうとしている。同社は米国時間3月11日、「Agent 4」と呼ばれる新たな多機能AIエージェントを発表した。この製品は、バイブコーディングのための最新のインターフェースを提供するものだ。マサドは今回も、公開に先立ち自宅オフィスでグレアムにこの新たなエージェントを披露した。それを見たグレアムはXでこの製品を絶賛した。

「アムジャドがReplitの最新の取り組みを見せてくれた。彼らは、後から振り返れば“当然だった”と思える形で、バイブコーディングを再定義しようとしている。大きなアイデアには、そういう性質があるものだ」と彼は投稿した。

Replitは、単にプロンプトを入力してエージェントにコードを書かせるだけの仕組みではない。ユーザーは、「デジタルキャンバス」と呼ばれるインターフェース上でモックアップやアプリのデザインを調整したり、新機能のアイデアを図として描いたりできるほか、他の開発者とリアルタイムで共同作業も行える。

「エージェントと一緒に設計していく感覚だ」とマサドは説明する。Replitが目指しているのは、実際の現場でアイデアを出し合いながら開発を進める体験を再現することだという。「オフィスを歩いていると、デザイナーとエンジニアがホワイトボードの前で議論しながら図を描いている光景をよく目にする。そういうプロセスを、そのまま再現しようとしている」。

「彼はいつも私を家の裏手に連れて行って、未来を見せてくれるんだ」と、グラハムはマサドについて語る。

約632億円を新たに調達、未来の実現に向けた投資を加速

その未来の実現を加速させるためにReplitは4億ドル(約632億円。1ドル=158円換算)を新たに調達したと3月11日に発表した。このラウンドは、ベンチャーキャピタル(VC)のジョージアン(Georgian)の主導によるもので、アンドリーセン・ホロウィッツやコーチューのほか、ドナルド・トランプ・ジュニアの1789、シャキール・オニールやジャレッド・レトなどの著名人、カタールの政府系ファンドQIAなども参加した。Replitは売上高の詳細を明かしていないが、年末までに年間経常収益(ARR)が10億ドル(約1580億円)に達する見通しだと述べている。

評価額は約1.4兆円に拡大、マサドの保有資産は推定約3160億円に

この資金調達によってReplitの評価額は、6カ月前の30億ドル(約4740億円)から90億ドル(約1.4兆円)に急拡大した。また、今回の資金流入により、マサドの保有資産は推定20億ドル(約3160億円)に達し、ビリオネアとなった。「彼らは、この業界に“何が可能か”を示している。新たな製品をリリースするたびに、“ワンショット型のソフトウェア開発チーム”という構想に近づいている」と、Replitへの投資を主導したGeorgianの投資家のマーガレット・ウーは語った。

新たな資金の大半は、海外展開の拡大に充てられる。Repliは、アジアと中東での事業拡大を進めるほか、販売やマーケティングを担うゴー・トゥ・マーケット部門の人員拡充にも投資するという。

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翻訳=上田裕資

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