ジャレッド・バルカサーは多忙な人物だ。21歳のアイオナ大学の4年生で、5つの授業を抱えながら地元警察でインターンもしている。さらに、自身のスタートアップBalcacer's Bouquetsを運営し、生花とシルクフラワーのブーケを制作している。学内イベントで学生に販売しており、「オズの魔法使い」の催しでは、バルカサー自身がオズ役を演じた。
厳しいスケジュールのなかでも、バルカサーは過去2年の間に、取り扱いを他の2大学へ広げ、オンライン販売を開始し、地元病院のギフトショップ向けにシルクフラワーのブーケを作るなどして、400点以上のフラワーアレンジメントを販売する時間を捻出してきた。秘密兵器は何なのか。私は、私が彼と関わるアイオナ大学のメンタリング・プログラムで会うたびに何度も尋ねている。私は働く親であり、ジャレッドがどうやってすべてをこなしているのか不思議でならない。彼は、AIを戦略的に活用してビジネスを構築しているのだと言う。
「特に、1人で事業を営む人にはとても有用です」とバルカサーは語る。「時間をより効果的に使えるようになります」
Lovableで新しいウェブサイトをコーディングするにせよ、AIハッカソンでピッチデックを作るにせよ、初めてのソーシャルメディア・カレンダーを作成するにせよ、AIを活用して起業を進める学生起業家は増えている。彼らは、ウェブサイトやピッチデックを作り上げるが、その出来栄えはスタートアップ界隈の年長者に匹敵することも少なくない。
こうした採用は、必要に迫られた結果でもある。学生起業家は、凝ったウェブサイトを構築したり、ソーシャルメディア投稿を代行してもらったりするために誰かを雇うだけの資金がないことが多い。AIはまた、世界中の多くの企業が直面している労働力不足の穴を埋める役割も果たしているとOECDの報告書は指摘している。
より広範な活用
学生がビジネスにAIを取り入れる動きは、AIを受け入れるすべての小規模事業者に共通する、より大きな潮流を反映している。2025年の商工会議所の調査によると、AI導入は2023年から2倍以上に増加した。小規模事業者の約60%が、事業運営に人工知能を活用していると回答している。LinkedInの調査によれば、小規模事業者はAIに対して他者よりも抵抗感が小さく、成長の基盤と捉えているようだ。
私が日々話をする多くの起業家は、AIによって、定型的な事務作業よりも新しい製品アイデアのブレインストーミングといった別の業務に集中できるようになると言う。これはMITの研究者が明らかにしたこととも一致する。報告書には「一部の業務が自動化されれば、労働者はAIが不得手な領域、例えば批判的思考や新しいアイデアの創出といった活動に注力できる」とある。
ここでは、学校生活と収益性の高いビジネスづくりを両立するなかで、バルカサーがAIが最も役立つと感じた5つの方法を紹介する。
1. 現実的な目標設定。バルカサーは学生向けのChatGPTを使い、直近の売上でどれだけ稼いだかを入力し、将来の数値を予測した。「月にいくら稼いでいるか、売上がいくらか、利益がいくらかを伝えます。これをどう予算化して自分に再投資し、事業を回し続ければいいのか、と」とバルカサーは言う。「予算を組むのを手助けしてくれます。これがビジネスへの再投資に回すべき金額です。これが目標に向けて再投資できるルートです、という具合に」
2. 別の収益源のブレインストーミング。バルカサーは、バレンタインデーのようなイベントで得た収益額を入力し、他にどんな稼ぎ方があるか提案するようAIに求めてきた。介護施設や大学との提携といった提案が返ってきたという。さらにAIは、「ナショナル・ボーイフレンド・デー」のように、ブーケの販促に使える祝日リストも提示してくれた。
3. 大小の競合分析。バルカサーはAIを使って、市場の競合をより的確に把握してきた。彼によれば、より大きな企業が何をしているかについてのフィードバックを受け取ることが多いという。また、自分のブーケとライバルのブーケの写真も送る。「徹底的に率直に言ってほしい、と伝えます」とバルカサーは言い、返答を待つ。「言われている欠点が、自分にも同じように見えてくるのです」
4. ソーシャルメディアでより反応の良い写真編集。バルカサーはソーシャルメディアをどう強化すべきかについてAIに助言を求め、「コンテンツを伸ばすのに役立つのに、ソーシャルメディアのサイトが教えてくれないこと」を教えてもらったという。Instagramで、彼が作っていた動画の品質を最良に見せる方法についてもヒントを得た。「それが、こうしたソーシャルメディアのサイトが求めていることです」と彼は語る。
5. 未来像の具体化。バルカサーは卒業後、ブーケをデザインし、より多くのソーシャル向け動画も制作できる本格的なスタジオをつくりたいと考えている。「スペースの寸法を伝えると、自分が求めていたイメージを示してくれました。平面図と、設置したい場所の写真も渡しました」と彼は言う。「その空間がどんな見え方になるかを視覚化する助けになり、望む形へと変えていけました」
しかしバルカサーは、自分がAIに過度に依存するようになることを心配している様子はない。どんなエージェントも、彼のブーケを実際に組み上げて配達することはできない。加えて彼はこう言う。「私は個人的に、自分の頭を使うのが好きなんです」



