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2026.03.15 09:58

世界の紛争はスタートアップの「勝ち筋」をどう塗り替えるのか

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悪いニュースは市場を揺さぶりがちだ。だが、不確実性は市場を転覆させうる。そして今、イランでの戦争には疑問符が多い。

理由はこうだ。より最近のいくつかの世界的な紛争と異なり、この戦争は地域的な影響にとどまらない。世界中の国々が中東の財やサービスに依存している。結果として、この戦争はエネルギーの不安定化、サプライチェーンの変動、そして資本市場全般の警戒感をもたらしている。

投資家と創業者は、こうした経済的・地政学的な波紋を感じ取っている。両者それぞれと話したところ、それぞれ異なる(とはいえ理解できる)反応を示している。しかしそれは必ずしも悪いニュースではない。とりわけ、変化する市場で先手を打つ覚悟のある創業者にとってはなおさらだ。

中東情勢について投資家が語っていること

私が話を聞いた投資家たちは、非常にオーソドックスな「様子見」の姿勢をとっている。完全に撤退しているわけではなく、これは起業家にとって朗報だ。しかし、より明確なユニットエコノミクス、より長いランウェイ、そしてより堅固な参入障壁(moat)を求めている。

戦争が始まる前に比べ、彼らが案件に素早く飛びつく可能性は大きく下がっている。その代わり、意思決定を裏づけるより多くの証拠を求めている。実利的で現実的なスタンスだ。結局のところ、こうした局面では資本が消えるのではない。より選別的になるのだ。

投資の実行サイクルが遅くなる以上、投資家が「どんな犠牲を払ってでも成長を」とする考え方でスタートアップ案件に乗ることは期待できない。資本を守るため、投資家はより多くの質問を投げかけ、創業者により多くの情報を要求する。そしてレイターステージのラウンドに関わる投資家は、リスクの見積もり(プライシング)を見直す可能性が高い。

創業者が想定すべきこと

創業者も、戦争や投資家の反応から無縁ではいられない。投資家の期待によりよく応えるため、ランウェイを24カ月または30カ月に延ばす創業者を多く見てきた。損益分岐点に到達するまでの道のりを加速させる例もある。賢い投資家と同様、賢い起業家はパニックに陥っていない。シナリオプランニングをしているのだ。

たとえば、攻めの拡大計画をいったん止めたり、リスクの高いプロダクト拡張を先送りしたりする創業者もいる。とりわけ、国際的な成長エクスポージャーを必要とする施策ではその傾向が強い。こうした動きは現金の温存につながり、不要なグローバルベンダーネットワーク依存を減らす(または制御する)助けになる。

総じて、私の知る起業家は、彼らが最も得意とすること、すなわちコストを見張り、現実のリスクと認識上のリスクを引き下げるための調整を行っている。戦争の推移を見極めるなかで、資本規律に基づく慎重さが目標になっている。

投資家と創業者の現在の反応は、より広い世界経済に何を意味するのか

イランでの紛争は始まってまだ日が浅いが、世界経済はすでに経済的な摩擦を目にしている。注目すべき点の1つが金融市場であり、多くのアナリストの予想に反して、大きくは変動していない。とはいえ、まだ初期段階で、紛争は急に起きた。ゴールドマン・サックスのCEOでさえ、戦争の影響に対する調整は後からやってくると述べた。

しかし、投資家も創業者も、保有資産を守るためにあまり長く待ちたくはない。だからこそ、市場よりも速く適応している。彼らは、原油価格のボラティリティ(およびそれに伴う影響)、輸送の遅延と燃料依存の物流問題、そしてインフレが、戦争とともに生じがちであることを知っている。したがって、ダウ・ジョーンズがヘッジを促すのを待っているわけではない。意思決定を抑制し、より安定した通貨に投資し、資本規律に支えられたより保守的な予測モデルを採用している。

スタートアップ界隈におけるリスクの濃淡

イランでの戦争はすべてのスタートアップに不確かな将来をもたらす、と考えたくなるかもしれない。しかしそれは正確ではない。たしかに、エネルギー集約型の製造業、物流、旅行、グローバルサプライヤー依存のEコマース運営、海外拠点のハードウェア企業など、脆弱なセクターはある。それでも、この期間に成長できる立ち位置にある新興企業もある。

たとえば、防衛テック、サイバーセキュリティ、代替エネルギーや再生可能エネルギーに注力するスタートアップだ。彼らの製品やサービスの価値は高まりうる。国内の製造業者や一部のAIプラットフォームも恩恵を受けるかもしれない。

覚えておきたい。リスクはすべてのスタートアップに均等に降りかからない。ボラティリティは機会を再配分する。つまり、一部の創業者は、2026年第1四半期に想像していた以上に、自社が利益を得やすい位置にいることに気づくかもしれない。

中小企業は何をすべきか

すべてのスタートアップにとっての重要な示唆は何か。いずれも何らかの貿易面の影響を受けるということだ。一般に、それは輸送コストの上昇、燃料サーチャージ、国際配送(フルフィルメント)に要する時間の長期化、保険料および運賃プレミアムの上乗せとして表面化するだろう。ゆえに、すべての創業者は今すぐシナリオプランニングに取り組む必要がある(投資家はすでにこれをしている)。

この種の不確実性に慣れていない事業者に向けて、私や他の起業家の経験に基づく提案をいくつか共有したい。第1に、仕入れ先を分散し、可能な限り価格を固定することだ。これにより、予測不能な調達やコスト変動によるキャッシュフローの逼迫を避けられる。可能であれば、国内ベンダーとの関係を強化するか、国内ベンダーを新たに探し、より引き締まった国内サプライチェーンを確保したい。

第2に、顧客に対する価格の透明性を実践することだ。非常に率直になろう。顧客は驚くほど理解を示す。特に、ベンダーコストの不安定さによる価格変更について、事前に正直に伝える場合だ。値上げを好む人はいないが、公正に扱われたと感じれば、競合に乗り換える可能性は低くなる。

最後に、大局から目を離さないことだ。戦争は永遠には続かない。そして実際には、すでに進行していた中小企業のトレンド、たとえば「どんな犠牲を払ってでも規模拡大」よりもレジリエンスを優先する動き、地理的分散、リスクを落とした拡張戦略、オペレーション規律といった潮流を、強めているにすぎない。言い換えれば、この瞬間はリセットではなく、加速装置として捉えられる。ここで勝つのは、単に速い成長や制御不能な成長ではなく、耐久性を前提に築かれた企業である。

紛争は常に不確実性を生み、それがためらいとして広がることがある。しかし、備えのある起業家にとって、冷静な楽観とともに行動するなら、そのためらいは資産になり得る。断言できるのは、投資家はいまも投資を続け、顧客はいまも買い、イノベーションはいまも前進しているということだ。その事実を念頭に置く起業家は、レジリエントに軌道修正し、強さを保てる。

forbes.com 原文

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