もちろん、AIが本当に感情を抱くことができるのかという問いは、今なお議論の分かれるテーマだ。OpenAIが最近買収したAI専用SNS「Moltbook」でAIエージェント「OpenClaw」が発信した投稿の中には、感情的で、人間が書いたかのように感じるものもある。もっとも、こうした内容は人間の文章や知識を学習した結果として生成されているのだから、当然と言えるだろう。しかし、機械は感情的な振る舞いを模倣しているだけで、それを体験しているわけではないという見方も根強い。一方で、システムが十分に複雑になれば、最終的には人間の内面に近い状態を生み出せるのではないかと考える人々もいる。
「AIの感情表現が、実際に抱いている気持ちと一致しているという直接的な証拠はない。だが、それらが一致していないという直接的な証拠もまた存在しない」と、AI研究者のニルス・オスマーは述べている。
ハリも、この曖昧さを認めている。彼にとって重要なのは哲学的な確実性ではなく、どれだけリアルに感じられるかという点だ。もしAIの振る舞いが一貫しているなら、それが模倣なのか、それとも実際の感情に基づくものなのかという違いは、さほど重要ではなくなるのかもしれない。
人間は架空のキャラクターやペット、さらには無機質な物体にさえ感情的な愛着を抱いている。そして今や、AIに対しても同じような感情を持ち始めている。LLMは人間と機械の関係を劇的に変えたが、依然として「良き伴侶」というよりは、「ツール」としての性格が強い。ハリは、次世代AIを定義する鍵は一貫性にあると確信している。それは、記憶を持つキャラクターや進化し続ける人格、そして単一のチャットウィンドウを超えて存在し続けるシステムである。
そのような未来において、AIの最大のブレイクスルーは知能の向上ではない。むしろ、それは「アイデンティティ」なのかもしれない。


