Ego AIのアプローチは、より人間の内面の働きに近いものをシミュレートするシステムの構築にある。それは、永続的な記憶や行動フレームワーク、そして時間の経過とともに変容するAIキャラクターのアイデンティティを追跡する「文脈モデル」の実装を意味する。個々に独立した回答を生成するのではなく、システムは「特定のキャラクターが、与えられた状況下でいかに振る舞うか」をシミュレートしようと試みるのだ。言い換えれば、そこでは振る舞い方こそが、AIを構築する上での革新的な原則となるのである。
ハリのフレームワークにおいて、知能は実在感のあるデジタルキャラクターを構成する一要素に過ぎず、振る舞いや記憶、文脈も同等に重要なものと位置付けられている。この実現のため、Ego AIは単一のLLMに依存するのではなく、複数のモデルを組み合わせたアーキテクチャの検証を進めている。小規模なモデルがリアルタイムの会話を処理する一方で、別のシステムが記憶やアイデンティティ、情緒的な文脈を管理している。これらのシステムは、タスクに応じてモデルを切り替えることも可能にしている。
ハリはこの仕組みを、会話の内容に応じて異なるサブシステムが作動する「ギアチェンジ型AI」と表現している。その狙いは、一貫した人格に近い存在を創出することにある。Ego AIがその実証の場として最初に選んだのは、インタラクティブ・エンターテインメントの領域だ。
ゲームやDiscordのようなボイスチャットプラットフォーム、あるいはオンラインコミュニティは、永続的なキャラクターが人々と繰り返し交流するための場を提供している。こうしたやり取りを通じて、AIは記憶を蓄積し、ユーザーと関係性を構築していくことが可能となる。そして将来的には、これらのキャラクターたちはデジタル空間の枠を超えていくことになるだろう。
Ego AIは既に、AIキャラクターを物理的なロボットに組み込む実験も開始しており、シンガポールではヒューマノイドロボットによるデモンストレーションを実施した。このシナリオでは、ロボットは永続的なAIキャラクターの身体となり、単にスクリプトを実行する機械ではなく、デジタルな人格を具現化した存在となったのだ。
ハリはこのコンセプトを、アニメのパイロットがメカを操縦する姿に例える。ロボットはあくまで身体に過ぎず、その背後にある知性こそがキャラクターの本質なのだ。


