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2026.03.17 15:00

「一貫した人格」はまるで人間、米Ego AIが挑む感情的知性を備えたAI構築

Shutterstock.com

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過去数十年にわたり、AI開発が追い求めてきたのは、「人間らしい会話を実現する」というシンプルな目標だった。ChatGPTやGemini、ClaudeといったトップクラスのLLMは、今やその目標に近づいており、既に到達したと言っても過言ではないだろう。

しかし、数分間だけ人間らしく振る舞うことと、それを長期間にわたって持続させることは全く別の問題だ。今日のLLMは確かに優れているものの、会話のたびに状態がリセットされてしまったり、人格の一貫性に欠けることが少なくない。また、回答も往々にして紋切り型の助言や、形式的なカウンセリングにとどまりがちだ。

ヴィシュヌ・ハリは、そのアプローチは誤りだと考えている。シリコンバレーのアクセラレータであるYコンビネータの支援を受けるスタートアップ「Ego AI」の創業者兼CEO(最高経営責任者)の彼が開発しているのは、全く異なるタイプのAIだ。それは、経験を記憶し、感情面で適応しながら、複数のデジタル環境にまたがって継続的に存在するAIキャラクターである。彼が目指すのは単なる知能ではなく、「人間らしさ」をもたせることだ。

それは、ある種の魂、あるいはその擬似的なものを持つことを意味する。ハリが感情的知性を備えたAIに関心を抱くようになったきっかけは、サンフランシスコで暴行事件に遭い、外傷性脳損傷を負って片目の視力を失った経験だった。回復の過程で、彼は奇妙な体験をする。記憶と視力が少しずつ戻るにつれ、自分の神経回路が修復されていくかのような感覚を覚えたのだ。その体験は、彼の中にさらに深い問いを呼び起こすことになった。

それは、「もし人間の認知が根本的に数学的なものであるならば、AIはロジックや言語だけでなく、人間の行動を形作る繊細な感情や経験の層までもシミュレートできるのだろうか」というものだった。

ハリは、感情的知性を備えたAIを簡潔な言葉で表現する。

「それは人間そのものだ。もし知らなければ、それが人間ではないと見分けることはできない存在だ」と彼はポッドキャスト「TechFirst」で筆者に語った。

その定義は、会話型AIの枠をはるかに超えている。ハリが想定しているのは、単にテキストを生成するツールではなく、心の状態や経験、動機を持つ人格として振る舞うシステムだ。現在のLLM(大規模言語モデル)は、文中で次に現れる単語を予測する能力が優れている。しかし、こうした統計的アプローチは、説得力のある会話を生み出すことはできても、一貫した心の状態を持つ存在を作り出すことはできない。

対照的に、人間が感情的な反応を示すとき、その背後には自らの記憶やアイデンティティ、そしてこれまで積み重ねてきた経験がある。ハリは、この違いこそが、多くのチャットボットが的確な回答をしながらも、一貫性を欠く理由だと考えている。

「興味深いのは、人が何かに対して特定の反応を示すとき、そこには拠り所となる生きた経験があるという点だ。AIには、それが欠けている」と彼は語る。

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編集=朝香実

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