リーダーシップ

2026.03.14 21:51

不確実な時代の新しいリーダー像──BANIフレームワークが示す道

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アンジェラ・F・ウィリアムズは、United Way Worldwideの前社長兼CEO/特別アドバイザーである。

新年を迎えるいま、世界の仕組みはかつてない負荷にさらされ、生活費は上がり続け、自然災害は世代を揺るがす規模で襲い、人工知能を含む技術的ブレークスルーは、その利用を規制するよりも速いスピードで社会を変えつつある。

しかし、この混乱の中には素晴らしい機会が潜んでいる。私たちは新しい形でリーダーシップを発揮できるのだ。そのことが、未来への大きな希望を与えてくれる。

予測不能は私たちの感覚やシステムを圧倒しかねないが、2026年以降は、混沌を触媒としてイノベーションを起こし、最も困難な課題に対するより強固な解決策を築く必要がある。複雑で急速に変化する世界を読み解き、組織とコミュニティをレジリエンスと希望へ導けるリーダーが、今ほど求められている時代はない。

これこそが、新たなBANIフレームワークが捉えている現実である。私は共著者であり未来学者でもあるジャマイス・カシオ、ボブ・ヨハンセンとともに、新著でこのフレームワークを探求している。

BANIフレームワーク

BANI(カシオが提唱した造語)は、brittle(脆弱)、anxious(不安)、nonlinear(非線形)、incomprehensible(不可解)を指す。これは、VUCAモデル(volatile=変動性、uncertain=不確実性、complex=複雑性、ambiguous=曖昧性)の限界が拡大していることへの応答である。VUCAは1980年代に軍事研究者が提唱し、冷戦後の世界を理解するためにリーダーを助けてきた。

しかし、いま私たちが生きているのは、VUCAではもはや定義できない新種のディスラプションの時代である。BANIフレームワークを詳しく見ていこう。

Brittle(脆弱性)は、表面上は安定しているように見えながら、圧力がかかると崩壊しうる構造の脆さを指す。パンデミック時のグローバル・サプライチェーンの崩壊がその典型例である。

Anxiety(不安)は、不確実な時代にコミュニティをしばしば麻痺させる状態を指す。カリブ海一帯のコミュニティを襲い、数百万人の生活を一変させたハリケーン「メリッサ」の壊滅的影響がその例である。

Nonlinear(非線形性)とは、複雑なシステムにおいて原因と結果の関係がもはや単純ではなくなっているという考え方である。私たちのコミュニケーションのあり方を変えた人工知能の突然の台頭がその例だ。

Incomprehensible(不可解性)は、問題があまりに複雑で、理解がほぼ不可能になる状況を指す。従来の思考では解決できない可能性が高い、拡大し続ける気候変動危機がその例である。

では、BANIの世界をどう航海するのか。足元の大地が揺れてもなお強さを保つ安定した基盤の上に、コミュニティをどう築くのか。

BANI+で脚本をひっくり返す

それを可能にするのがBANI+、つまりBANIフレームワークのポジティブな側面である。言い換えれば、大きな変化を起こすには、脚本をひっくり返さなければならない。そのために必要なのは次の通りである。

Bendability(柔軟性):脆弱なシステムには、柔軟な解決策で対抗できる。コミュニティに、想定外の課題に迅速に適応し対処するためのツールを与えるのだ。例えば新型コロナウイルス感染症のパンデミックは対面医療を大幅に制限した。これに対し、メイヨー・クリニックは遠隔医療の能力を迅速かつ大規模に拡張した。

Attentiveness(注意深さ):不安には注意深さで対抗できる。すなわち、恐れや不確実性に直面しても、思いやりと連帯の文化を育む支援的な環境をつくることを選べるということだ。

Neuroflexibility(神経可塑性):非線形性には神経可塑性で対抗できる。これは、即興性と批判的思考を促し、硬直した予定調和の解決策を退けることを意味する。例えば昨秋、政府閉鎖のさなかにSNAP給付が脅かされた際、私の組織は革新的な方法で、しかも迅速に対応しなければならなかった。私たちはパートナーとともに、オンラインの食料支援リソース検索ツールを立ち上げた。

Interconnection(相互接続性):最後に、不可解さには相互接続性で立ち向かえる。多様な声と経験を結集し、複雑なシステムをより深く理解し、マネジメントするのだ。

では、BANIの世界でリードするとはどういうことか。それは、リーダーや組織が直面する課題──気候変動、経済の不安定性、世界的な紛争、技術的ディスラプション──が、かつてないほど複雑で混沌としていると認識することを意味する。

新しいリーダーシップのあり方

コミュニティが生き延びるだけでなく繁栄するためには、異なるやり方でリーダーシップを発揮する必要がある。

第一に、傾聴は礼儀ではなく、リーダーシップの鍛錬である。

就任当初、私は問題から解決策へと素早く移ろうとする自分の本能に挑まなければならなかった。複雑な環境では、スピードが盲点を生むことがある。そこで私は、構造化された傾聴を習慣として日常に組み込むようにした。役割や地域を横断して耳を傾けると、疲弊、希望、信頼のギャップが浮かび上がり、データだけでは見えないものが見えてきた。

適応しようとするリーダーにとって、変化は自分自身の確信をいったん中断することから始まる。反応する前に、自分が見落としているかもしれないことは何か、誰の声を聞く必要があるのかを問うべきだ。傾聴が結果を変えるのは、それによって自分自身が変わることを許したときに限られる。

第二に、信頼は動員する前に構築しなければならない。

私は、信頼がビジョンに自動的に付いてくるわけではないと学んだ。信頼は一貫した行動を通じて育つ。

意思決定の背後にある「なぜ」を説明し、厳しい問いを歓迎し、不確実性を認めることは、足並みをそろえる力を強めうる。スタイルを変えたいリーダーは、確信を演出することから、揺るがぬ姿勢を示すことへと移らなければならない。人々は、自分の洞察が方向性に影響を与えていると感じるとき、信頼を深める。

第三に、スケールは地域のリーダーシップに資するときにしか機能しない。

効率は進歩のように感じられるが、足並みをそろえることは画一性を要しない。私は中央から過度に設計することを抑え、代わりに現場に最も近い人々を支えるためにシステムがどう機能しうるかを問う必要があった。新しい現実に適応するリーダーは、スケールできるかどうかだけでなく、それが地域の判断力を強めるかどうかも問うべきである。

第四に、リーダーシップには不確実性に向き合う勇気が求められる。

混乱の瞬間における私の最初の本能は、決断を下すことだった。だが時間とともに、勇気とは、立ち止まり、再調整し、防衛的にならずに軌道修正することでもあると学んだ。足並みの構築が追いつかないほど速く進んでしまう取り組みもある。真の変化は、リーダーが「公の場で学ぶ」ことを当たり前にするときに訪れる。継続して実践される謙虚さは、強さになる。

リーダーは、混沌をイノベーション、つながり、共感をもってリードするための招待状として受け入れなければならない。しかし最も重要なのは、BANIリーダーシップがCEOや組織のトップに限られたものではないと理解することである。今日のリーダーシップはコミュニティから始まり、近隣同士が助け合い、共有された人間性を受け入れることで外へ広がっていく。

それが集合的リーダーシップの力である。

forbes.com 原文

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