経営・戦略

2026.03.14 13:44

壮大な約束より一握りのアーモンド──新興市場における関係構築の極意

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ビジネスにおける関係構築には、イベントでの交流やカンファレンスでの登壇が必要だと考える人は多い。確かにそうした活動は知名度を高めることはできるが、必ずしも深い結びつきを生むわけではない。ビジネスにおける関係構築、とりわけ新興市場においては、相手への配慮と一貫性を示す小さな行動や所作が信頼を築く土台となる。時にそれは、食べ物を分かち合うというシンプルな行為であることもある。

潜在的な敵を味方に変える:「塩味アーモンド」の話

1990年代初頭、イラクへの制裁が始まった直後、私の父はバグダッドの閑静な地域に家を購入した。父は知る由もなかったが、その地域は川に近いという立地から、やがてサダム・フセイン政権を支える政府高官たちの間で非常に人気のエリアとなった。数年のうちに、そこは一等地へと変貌した。

近隣に政府高官が住むようになると、治安上の影響は政権と関係のない住民にも及んだ。サダムが高官たちのために建てた邸宅は厳重に警備されていた。通りの安全を守るため、私服の警備員が巡回しており、時には無作為に人々を呼び止めることもあった。

ある日、私が家族の車を運転して帰宅途中、警備員に呼び止められた。彼の質問に答えた後、私はこう尋ねた。「塩味のアーモンド、いりますか?」父は塩味のアーモンドが大好きで、家族の車にはリスのように常に蓄えがあったのだ。警備員は喜んで「はい」と答え、私は一握りのアーモンドを渡した。

それ以来、彼は私の味方になった。私は常に車にアーモンドを積んでおき、彼に呼び止められるたびに差し出すようになった。これはビジネス上の取引ではないが、小さくても一貫した寛大さの積み重ねが人間関係を築くことを示している。この原則は国際ビジネスにもそのまま当てはまる。

新興市場で「大きな企業戦略」より「小さな所作」が効く理由

イラクをはじめ多くの新興市場では、人々は「あなたは私に何をしてくれるのか」と知りたがる。その動機は利己的なものではなく、コミュニティへの真摯な関心を確かめたいという思いからだ。外国との紛争の歴史を持つ国々では、これがさらに重要になる。だからこそ、新興市場でビジネスを行う際には、その国の歴史的背景を理解することが不可欠なのだ。何十年もの間、地元の人々は外国企業が石油や鉱物などの資源を持ち出しながら、コミュニティに意味のある貢献をせず、地域の発展に投資もしない姿を目の当たりにしてきた。

こうした背景を考えれば、大規模な企業の取り組みや約束が懐疑的に見られるのは当然のことだ。むしろ、関係を築く最善の方法は、小さなことをすること──いわば比喩的な「塩味アーモンド」を差し出すことなのだ。以下は、イラクでの関係構築において私が効果的だと感じた、サーバント・リーダーシップの原則に沿った小さな倫理的な所作の例である。

  • 販促品(ペン、メモ帳)を配る:こうした小さなアイテムは、目の前の取引を超えて相手のことを考えていることを示し、パートナーシップの具体的な思い出となる。
  • 会議で食べ物や飲み物を用意する:私は常にイラクで活動する欧米のリーダーたちに「テーブルに食べ物を用意しなさい」と助言している。それがこの国の基本的なもてなしだからだ。
  • 成果を祝うために食事に招待する:倫理的な懸念を生じさせかねない現金ボーナスではなく、誰かの仕事を称えて食事を共にすることは、文化的な期待に応えながら個人的なつながりを強化する。
  • 従業員向けの教育研修を企画する:契約に有給の研修を含めることで、働く人への長期的なコミットメントを示し、企業と国の再建の双方に利益をもたらす。
  • コミュニティプロジェクト(学校、医療施設)を支援する:倫理的な一線を越えかねない高官への金銭提供ではなく、すべての人に恩恵をもたらすプロジェクトでの協力を提案する。

大きく空疎な約束ではなく、小さく誠実な所作で関係を築く

こうした「塩味アーモンド」的な行動は、文化やコミュニティに合わせて調整する必要がある。しかし、こうした小さな行為が壮大な約束よりもはるかに意味を持ちうるという原則は揺るがない。シンプルな人間同士のつながりこそが共通の基盤なのだ。とりわけ新興市場では、関係は会議室で築かれるものではない。自分が事業を営むコミュニティや国への敬意と配慮を継続して示すことで築かれるのである。

forbes.com 原文

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