外食需要の多様化が進むなか、手軽なランチの代名詞である弁当業界が岐路に立たされている。帝国データバンクの調査によると、2025年に発生した弁当店の倒産件数は55件に達し、前年の52件を上回って2年連続で過去最多を更新した。これは負債1000万円以上の法的整理を対象とした数値であり、小規模な個人店の廃業を含めれば、市場から退場を余儀なくされた店舗数はさらに膨らむものと推察される。

かつては安定した需要を誇った弁当ビジネスを、急激なコスト高が直撃している。特に深刻なのが、主原料である「コメ」の価格高騰だ。鶏肉や食用油、小麦粉といった原材料費の上昇に、コメの仕入れ価格上昇が追い打ちをかけ、経営を大きく圧迫している。2024年度における弁当店の業績は、6割を超える企業で悪化がみられており、採算の確保が困難な状況に陥っている。

人手不足も経営の継続を阻む大きな要因となっている。弁当製造は早朝からの作業や長時間労働が必要となるケースが多く、調理師や配送人材の確保には人件費の大幅な引き上げが避けられない。しかし、顧客の節約志向が強まるなかで安易な価格転嫁は客離れを招く恐れがあり、コスト増分を十分に価格に反映できない「値上げの壁」が中小弁当店の収益を奪っている。
市場環境の激化も無視できない。近年、コンビニエンスストアやスーパーマーケットが弁当の品質を向上させ、200円台の格安弁当を展開するなど低価格戦略を強化している。さらに、ドラッグストアによる総菜分野への参入やフードデリバリーの普及により、消費者の選択肢は大幅に広がった。一方で、テレワークの定着による事業所向けランチ需要の減退や、会議・冠婚葬祭などの大口受注の縮小が、従来の弁当店の収益基盤を揺るがしている。
今後の弁当業界は、低価格を武器にする従来のビジネスモデルが限界を迎え、二極化が一段と加速するとみられる。徹底したコスト削減による格安戦略を維持できる大手と、こだわり素材や高付加価値を打ち出す店舗との間で、淘汰の波はさらに強まるだろう。原材料価格の安定が見通せないなか、一人ひとりの生産性を高めつつ、いかに独自の付加価値を価格に転嫁できるかが、生き残りの鍵を握ることになりそうだ。
出典:帝国データバンク「『弁当店』の倒産動向(2025年)」より



