人工知能(AI)導入を急ぐあまり、多くの企業がより根本的な問題を見落としている。自社組織の中で仕事がどのように進むのかを、実は理解していないのである。
その結果として、一部の経営幹部が「仕事のムダ」と呼ぶ事態が生まれる。情報探しに費やす時間、文書化されていないプロセスの確認、すでに存在する作業の再作成、誰も設計していないのに皆が引き継いでしまう引き渡しの手順──こうしたことで失われる時間だ。これは貸借対照表に表れることはほとんどない。しかし規模が大きくなれば、現代の企業における最も高価な非効率のひとつになり得る。
ワークフロー・インテリジェンス・プラットフォーム「Scribe」を利用する組織では、従業員が仕事に必要な知識や指針を見つけるだけで、月あたり約35時間を失っていると報告している。従業員1人あたり、毎月ほぼ丸1週間分の労働時間に相当する。
年収が平均7万5000ドルの場合、この非効率は従業員1人あたり年間1万5000ドル超に換算される。従業員が1000人の企業なら、失われる生産性は約1500万ドル──価値を生み出す代わりに混乱をさばくために、フルタイム従業員200人分の給与を払っているのと同じだ。
仕事の「見えない中間地帯」
多くのリーダーは成果物でパフォーマンスを測る。売上、納品物、顧客の成果である。一方で大半が見えないままなのが「ごちゃごちゃした中間地帯」──すなわち、タスクとタスクをつなぐワークフロー、組織の知、非公式なプロセスである。
ワークフロー・インテリジェンス企業が引用する社内調査によれば、多くの組織ではワークフローの70%以上が文書化されていない。その知識は個人のドライブ、Slackのスレッド、そして専門家の頭の中にある。
「知識資本の多くは、人のフォルダの中と、人の頭の中にある」と、オプション・クリアリング・コーポレーション(OCC)で組織変革担当マネジングディレクターを務めるガネーシュ・ハリハランは言う。以前の勤務先であるノーザン・トラストでは、単一障害点が繰り返し存在していた。専門知が必要なら、それがどう動くかを知る「たった1人」を探さなければならなかった。
影響は不便さにとどまらない。従業員は日常的な質問のやり取りで注意力を分断される。新規入社者はオンボーディングに苦労する。標準化されたガイドがないため、チームは数カ月ごとにプロセスを作り直す。組織は価値が実際にどのように生み出されているかを、体系的に理解できない。
Scribeはこの問題を異例の解像度で捉えている。同社のソフトウェアは、従業員がタスクを実行するのに合わせて、ソフトウェアアプリケーションをまたぐ手順を自動的に記録し、ステップ・バイ・ステップのドキュメントを生成する。数十万の組織で数百万のワークフローが記録され、プラットフォームは知識労働が実際にどう行われ、どこで破綻するのかを映し出す、思いがけないレンズになった。
「人の可能性が非効率でこれほど無駄にされているのを見ると、深い苛立ちを覚える」とScribeのCEOであるジェニファー・スミスは言う。「多くの知識労働者は、専門領域で時間を使っていない。仕事のやり方を理解しようとして時間を使っているのだ」
AI生産性のパラドックス
企業におけるAI導入の急増は、このより深い組織的問題を露呈させている。
AIシステムは強力なパターン認識器だ。しかし、構造化された入力に依存する。プロセスが文書化されていなかったり一貫性がなかったりすると、AIツールは不完全または一般的なデータからワークフローを推測せざるを得ない。
「投資銀行には『ゴミを入れればゴミが出る』という言い回しがあった」とスミスは言う。「今の問題は、企業がAIにゴミを食べさせていることではない。飢えさせていることだ」
組織はしばしば、過去の場当たり的な回避策から進化したプロセスを自動化しようとする。時間の経過とともに企業は、スミスが「フランケン・プロセス」と呼ぶものを蓄積する──忘れ去られた制約によって形づくられたワークフローである。制約が消えた後も回避策だけが残る。それを自動化すれば、非効率がより速く回るだけだ。
ハリハランも同意する。「AIは、学習させるコンテンツとコンテキスト次第でしかない」と彼は言う。「検証済みの成果物と確かなインテリジェンスで補強すれば、はるかに強力になる」
つまり制約は技術ではない。組織にある。
ワークフロー・インテリジェンスの台頭
AI搭載の検索プラットフォームから法務自動化ツールまで、職場の非効率のさまざまな側面に対処しようとするスタートアップのカテゴリーが拡大している。
Scribeは、しばしばワークフロー・インテリジェンスと表現される新興カテゴリーに位置づく。ユーザーがタスクを完了するのに合わせてドキュメントを自動生成するツールとして始まった同社は、エンタープライズ向けソフトウェア環境における現実のワークフローを数百万件捉えてきた。
そのデータセットが、いま新たな分析レイヤーを支えている。同社の最新プロダクト「Scribe Optimize」は、AIで記録されたワークフローを分析し、非効率を特定して改善提案を行う。
前提はシンプルだ。組織が仕事を自動化するには、まずそれを理解しなければならない。
ハリハランによれば、ノーザン・トラストでは構造化されたワークフロー文書化を導入した結果、従業員が場当たり的な確認から標準化された指針へと移行し、組織が「非生産的な顧客対応時間」に分類していた時間が69%減少したという。
彼がOCCに移った際も、同じアプローチを持ち込んだ。
投資家は、ワークフローの可視化をAI駆動の生産性向上の前提条件と見ている。Redpoint Venturesのマネジングディレクターで、Scribeの投資家でもあるローガン・バートレットは、業務プロセスの理解が多くのエンタープライズAI導入で欠けている層かもしれないと論じる。
「企業がAIの可能性を最大限に実現するには、業務プロセスを深いレベルで理解する必要がある」
適応の制約
この問題には人間的な側面もある。
特にエージェンティックAIの台頭により、技術変化は加速している。しかし、組織の適応力はそうではない。
「変化のペースはホッケースティックのカーブだ」とスミスは言う。「しかし、人や組織がそれを吸収できる速さには心理的・運用上の限界がある」
皮肉にも、AIはそのギャップを埋める助けになり得る──ただし、現実のオペレーションデータに根ざしている場合に限る。システムが現在のワークフローをマッピングし、破綻点を特定し、構造化された改善を提案できれば、組織は試行錯誤ではなく、より精密に適応できる。
その土台がなければ、AIは断片化したシステムに複雑さの層をもう1つ加えるだけになりかねない。
「仕事のムダ」が突然、可視化された理由
仕事のムダという概念は、オペレーターや経営層の間で広く語られ始めている。多くのリーダーはこのパターンをすぐに認識する。答えを探して何時間も費やし、同じ説明を繰り返し、組織内の別の場所にすでにある作業を作り直す──という状況だ。
多くの場合、問題は才能や努力ではない。組織の明確さである。企業が拡大すると、かつて創業者の頭の中にあった非公式の知識は、チームやツール、タイムゾーンをまたいで分断される。単体では小さな非効率に見えるものが、積み重なって数百万ドル規模の生産性損失へと膨らみ得る。
AI時代に向けた準備度テスト
米国に1億人超いる知識労働者にとって、月35時間を取り戻すことは、追加採用なしで実効的な労働力キャパシティを約25%拡大することに相当する。
AIに支えられた未来で最も繁栄する企業は、先に地味な仕事をする企業だろう。プロセスの文書化、冗長な工程の排除、構造化されたオペレーションデータの構築である。
Scribeのような企業は、日々のワークフローを使えるデータに変えることで、その土台を築こうとしている。しかし、より広い教訓は単一のツールをはるかに超えている。
AIは実行を加速できる。しかし、曖昧さを埋め合わせることはできない。そういう意味で、仕事のムダの危機は生産性の問題にとどまらない。AI経済に向けた準備度テストなのだ。
スミスにとって目標は、究極的にはもっとシンプルである。知識労働者が非効率を乗り越えることに費やしている時間を取り戻すことだ。「人々の仕事の1日が、仕事を引き受けた理由により近いものになることを願っている」と彼女は言う。「自分の天才領域で働けるようになるはずだ」



