経営・戦略

2026.03.13 22:14

高額報酬では救えない法律事務所の利益率──収益性パラドックスの正体

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ラケル・ゴメスはStafiの創業者兼CEOである。

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2026年の法務業界をめぐる見出しは、一見すると紛らわしい。表面的には業界は好調で、売上高は増加し、需要も持ち直している。しかし中堅・大手の多くの事務所の貸借対照表に目を向けると、別の、より不安を誘う物語が浮かび上がる。

膨らみ続ける間接費を賄うために時間単価を引き上げればよいという「黄金時代」は終わった。いま我々は、ある種の緊張関係に特徴づけられる新時代に入っている。すなわち、事務所は過去最高の売上を上げながらも、収益性が圧迫されることに怯えているのだ。

「2025 Report on the State of the U.S. Legal Market」によれば、事務所は力強い需要を享受している一方で、足元は不安定である。直接費、とりわけ人材報酬は5.5%上昇し、2023年から2024年にかけてテクノロジー支出は4%から9%近くへと急増した。レポートの結論は厳しい。現行のビジネスモデルは包囲されており、コスト構造を見直さない事務所のリーダーは利益率の崩壊を招きかねない。私が取引先の法律事務所と交わしてきた個人的な対話も、こうした懸念を裏づける。そして私は考えさせられる。「どうすればもっと稼げるか?」ではなく、「稼ぐためにこれほど支出しないで済むようにするにはどうすればよいのか?」と問うべきなのではないか、と。

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20万ドル問題

問題の核心は、いわゆる「給与戦争」にある。何十年にもわたり、業務量の増加に対する解決策は単純だった。アソシエイトを増やすことだ。しかし、その計算はもはや成り立たない。

全米法律職業紹介協会(NALP)の「2025 Associate Salary Survey」によると、主要市場における1年目アソシエイトの年俸中央値は約20万ドルで定着している。ボーナス、福利厚生、間接費を加味すれば、1人の若手弁護士は、1時間も請求業務を行う前から、事務所にとってそれ以上のコストとなる。

以前は、こうした若手を、定型業務、文書レビュー、法律調査、ディスカバリー管理などで高いレートで請求することで事務所は賄ってきた。しかし、クライアントはそれに付き合わなくなった。ジェネラル・カウンセル(GC)はいま、データと攻めの「外部弁護士ガイドライン」を手にしている。1年目アソシエイトが実務を覚えるためだけに、1時間500ドルを支払うことを、彼らはますます拒むようになっている。

その結果、事務所は板挟みになる。人材を惹きつけるには約20万ドルを支払わねばならないが、その利益率を回収できるほど有効に請求できないのだ。私はこの話を頻繁に耳にする。そして残念ながら、この問題ゆえに、単独での運営を好む法律事務所オーナーが多い。

稼働率の危機

高給与が火だとすれば、低稼働率はガソリンだ。

Clioの「2024 Legal Trends Report」は、マネージングパートナーが夜も眠れなくなるはずの統計を示している。平均的な弁護士の請求可能時間は、8時間労働日のうちわずか2.9時間だ。稼働率にして約37%である。残り63%はどこへ消えるのか。答えは、管理業務の空白に吸い込まれる。顧客受付、請求業務、メール管理、日程調整といった非請求業務だ。こうした短時間のやり取りの積み重ねが、何千ドルものコストになっている。

この2つのデータを組み合わせると、非効率性は驚くべきものになる。事務所は、米国市場の高い給与水準を支払いながら、職務の約3分の2を、法学位どころか20万ドルの給与すら不要な業務に費やすプロフェッショナルを抱えていることになる。

「失われた中間層」

従来の法律事務所の構造はピラミッドだった。頂点の少数のパートナーを、膨大な数のアソシエイトが支える。しかしこのモデルは死につつある。我々はいま、私が「ダイヤモンド・モデル」と呼ぶ形へ移行しつつある。頂点には、依然として高付加価値のパートナーがいて戦略的助言を担う。最下層では、生成AIが、即時にコモディティ化された業務(例えば、50ページの供述調書を数秒で要約するなど)を処理する。

だが、中間には巨大な空白がある。AIに任せるには精度が不十分だが、20万ドルのアソシエイトが担うには定型的すぎる、複雑でプロセス駆動の業務は誰が担うのか。

ここで業界では静かな革命が起きている。グローバルなリモート人材の統合である。賢明な事務所は、解決策が地元でより多く採用することではなく、異なる方法で採用することだと気づき始めている。

アービトラージの優位性

これは従来型のアウトソーシングやコールセンターの話ではない。高度な労働アービトラージの話である。グローバル市場には、英語に堪能で文化的適合性も高いプロフェッショナルがあふれており、多くは母国で法務のバックグラウンドを持つ。彼らは、米国のアソシエイトのコストのほんの一部で、「失われた中間層」の業務を担える。

「空白を埋める解決策」の計算を考えてみよう。

• 受付・オンボーディング:米国のアソシエイトが週5時間、署名の回収に追われ、ファイルの設定に時間を費やす代わりに、リモートの受付担当がパイプライン全体を管理する。

• ディスカバリー・調査:初期の文書整理で若手弁護士を疲弊させる代わりに、リモートのリーガルアシスタントがデータルームを準備し、アソシエイトは分析に専念できる。

この戦略は、稼働率の危機を正面から叩く。管理系の下働きに費やされる63%を専門のリモートチームに移せば、米国の弁護士は1日2.9時間の請求から、1日5〜6時間へと引き上げられる。コストを削減しただけではない。最も高価な資産が生み出す収益力を倍増させたのである。

クライアントの視点

おそらく、この転換を支持する最も説得力のある論拠は、クライアント自身から出てくる。彼らは、業務運営の効率性を示せる事務所を積極的に探している。事務所が「管理業務にパートナー・レートを請求しない。なぜなら、そのための専任でコスト効率の高いチームがあるからだ」と言えるとき、会話の質が変わる。請求額を膨らませようとするベンダーから、クライアントの予算を守る戦略的パートナーへと位置づけが移る。

構造的な俊敏性

2026年の経済的逆風は、頑固さに優しくない。旧来モデルにしがみつき、管理業務をこなすために高額なジェネラリストを雇い続ける事務所は、利益率が損なわれていく。

事務所は人材構造を投資ポートフォリオのように扱うべきだ。高付加価値の戦略には高コストの資産を、テクノロジーには自動化を、グローバル人材には業務運用の実行を担わせる。収益性の圧迫を生き延びるために、クライアントにより多く請求する必要はない。割高な価格で、割高でない仕事に対価を支払うのをやめればよいだけだ。

forbes.com 原文

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