日本企業の海外進出が進む中、グローバルガバナンスの再設計が経営課題となっている。各国の商習慣や言語の違い、データ連携の未整備などを背景に、本社から海外子会社の実態が見えにくくなるケースは少なくない。
こうした課題に対し、会計システムを中心とした海外子会社の会計DXを通じて、経営統制の高度化を図るのが、世界21カ国/地域に37拠点を展開するフェアコンサルティングだ。
海外子会社の連結決算に潜むリスク
フェアコンサルティングが行う海外子会社の会計DX支援は、単なる業務効率化にとどまらない。会計系グローバルコンサルティングファームとして蓄積してきた専門知見を基盤に、会計システムの導入を通じて企業のガバナンスそのものを見直す。
その役割を担うシステムソリューション事業部を率いる玉村健は、海外子会社が抱える課題を次のように指摘する。
「上場企業では連結決算が義務付けられていますが、実際には本社と海外子会社の会計データが十分に連動していないケースも多く、いまだに手入力をしている企業もあります。しかも把握できるのは財務諸表の勘定科目レベルまで。連結決算として開示はできても、取引の内訳までは見えず、結果として現地での不正や異常値に気づきにくいという問題があります」
同社が提供するソリューションの中核となるのが、全世界対応のクラウド会計システム「勘定奉行クラウドGlobal Edition」だ。導入支援により海外子会社の会計データを可視化し、本社とリアルタイムで接続する体制を構築。日本国内にいながら海外拠点の経営状況を即時に把握できる環境を整えることで、ガバナンス強化に寄与している。
こうした支援の対象は中堅企業が中心だ。大手ファームでは数億円規模のプロジェクトがメインとなる一方、フェアコンサルティングでは数百万円規模のプロジェクトにも対応し、限られた予算の中で海外展開を図る中堅企業のチャレンジを後押ししている。世界21カ国/地域37拠点のネットワークと全世界の会計に対応し、すでに39カ国で導入実績のある「勘定奉行クラウドGlobal Edition」を組み合わせることで、多様な市場への進出支援が可能だ。
また、海外子会社の財務諸表は、各国の会計基準と言語で作成される。制度や商習慣の違い、言語の壁をクリアするために、システムソリューション事業部のメンバー10人中4人が外国人材だ。国籍やバックグラウンドの異なるメンバーが協働し、多角的にプロジェクトを推進している。
「会計やITの経験者もいれば、語学力に強みを持つ実務未経験者もいます。それぞれの専門性を掛け合わせ、2〜3人のチームで案件に入ることが多いですね。必要に応じて海外拠点や他事業部とも連携しています」
専門性×多言語チームで、グローバルプロジェクトを推進
多様なメンバーの協働によってシナジーが生まれた例として、システムソリューション事業部を牽引する中国出身の郭 驥は、石油化学メーカーの海外子会社11社の連結会計システム導入プロジェクトを挙げる。2年半をかけ、ヨーロッパ3社、アジア5社、北米3社への導入を進めた。
「各国に特有の商習慣や法律、会計のルールがあり、さらにタイやベトナムの拠点では現地語でしか対応ができないケースもありました。そこで、当社の現地支社のメンバーと連携し、現地の言語で詳細な要件をヒアリング。同時に、大阪の公認会計士のメンバーが本社側のサポートを行い、収集したデータを最終的にどう連結報告書へ落とし込むかを検討しました。多言語に対応しつつも、プロジェクト全体の進捗を日本語で共有できる体制は、お客さまにとって安心材料になったと思います」(郭)
複数の専門領域を持ち、さらに多言語に対応できるチームを社内で編成できるのは、グローバル展開を進める同社の強みだ。郭自身、ERPの会計モジュール開発経験を持ち、中国語・日本語・英語を自在に操る。システムの理解と言語能力を兼ね備えた存在として、プロジェクト後も名指しで依頼が来るようになった。
「お客さまにとって欠かせない存在になれていたらうれしいですね。直接感謝の言葉をいただけるのは、大きなやりがいだと思います」(郭)
持続可能な働き方で、中堅企業の海外進出を支援する
コロナ禍以降、支援はオンラインへと移行した。コンサルティング業界にありがちな過度な長時間労働はなく、基本的に残業はなし。繁忙期でも1日10時間を超えて働くことはほとんどない。システムソリューション事業部の半数は女性で、産休・育休を経て復帰したメンバーも複数いる。
こうした環境の背景にあるのは、「心身ともに健康で働ける組織をつくる」という、代表の伴 仁と玉村の明確な意思だ。
「僕はこの会社で平和な世界をつくりたいんです。だから『いい人』しか採用しませんし、利益だけを追うことも、社員に無理な目標を課すこともしません」
そんな玉村の思想に「勘定奉行」が合致した。基盤が安定したSaaSプロダクトであり、カスタマイズを前提としないゆえに、開発負荷やシステムトラブルのリスクを回避できる。
「税務は国ごとに異なりますが、会計の基本原則は世界共通です。我々は会計領域のグローバル対応に特化し、標準化された枠組みに沿って無理なくシステムを導入する。それによって、心身ともに安定した働き方が実現できています」
だが、その仕事は決して「完成されたシステムを導入するだけ」の定型業務ではない。象徴的なのが、「勘定奉行」の開発元であるオービックビジネスコンサルタント(以下、OBC)の開発会議に、システムソリューション事業部のメンバーが毎月参加している点だ。単なる導入パートナーではなく、プロダクト開発にも関与している。
「世界各国のお客さまから寄せられる要望を集約し、OBCの開発チームに共有しています。自分たちの提案がプロダクトに反映され、それがグローバルで使われる。日本では珍しいほど、常に新しい挑戦ができる環境です」(郭)
実際、「勘定奉行クラウドGlobal Edition」は、フェアコンサルティングが企画・監修を担ったプロダクトだ。従来の連結会計システムは数億円規模の投資を前提とし、中堅企業の導入が現実的ではなかったが、すでに世界各国の海外子会社から仕訳データを収集できる基盤があるのなら、その延長線上で連結機能を実装できるのではないか。現場のニーズを掴む力と、それをかなえるための基盤。その二つを同社が築いてきたからこそ、現場視点の提案が形になった。
「会計AIエージェントの開発」という新たな挑戦
そして、現在も新たなチャレンジが進行中だ。システムソリューション事業部では郭をプロジェクトリーダーに、会計AIエージェントの開発を進めている。構想は固まり、2025年にはシンガポールの企業とプロトタイプを開発。「進捗は30%くらい」と郭は笑顔を見せる。
今は玉村や郭の豊富な実務経験と、エディンバラ大学で情報工学を学んだ新卒社員の知見を掛け合わせながら、試行錯誤を重ねている最中だ。
会計AIエージェントの開発が実現できれば、海外子会社の会計DXはさらに加速する。AIによってビジネス環境が劇的に変わろうとする中、その最前線で会計業務そのものを再設計する試みといえるだろう。同社で今求められているのは、「新しいことへの挑戦を楽しめる人」だ。
「挑戦する気概があって、会計、システム、語学のいずれかに強みがあり、お客さまと向き合える方であれば、足りない部分は入社後に補えばいいと思っています。100点満点の人材はいませんし、何より僕自身、英語が得意ではありませんから(笑)。本社対応は私が担い、海外子会社とのやり取りは語学に強いメンバーが担当するといったように、互いに助け合う文化は全社的にありますね」(玉村)
コンサルティング経験者にとっても、型通りのERP導入とは異なる醍醐味がある。
「既存パッケージを規定通り導入するのではなく、市場にないものを仲間と構想し、形にしていく仕事です。自分のアイデアがプロダクトに反映され、世界を動かしていく。その実感が持てるのは、非常に面白いと思います」
盤石な土台の上で、最先端技術に触れながら、グローバルに活躍する。「安定」と「挑戦」を両立したい人にとって、フェアコンサルティングには稀有なフィールドが開かれている。



