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2026.03.22 13:00

慢性的な仕事のストレスは脳を損傷する──脳の健康を守る6つの方法

Shutterstock.com

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脳は、古くなったコンピューターのようなもので、時間の経過とともにスピードも機能も徐々に低下していくのは避けようがない、と思われている。しかし、現代の神経科学では異なる見解が示されている。脳は、心臓や肺と同じように、日々の習慣や環境によって、成長もすれば萎縮もする、適応力を備えた生きる器官なのだ。

脳画像技術の進歩によって、仕事に起因する慢性的ストレスが脳に損傷を与えることが明らかになっている。また、特定の生活習慣を心がけたり、対処方法を取り入れたりすれば、脳を損傷から守ってレジリエンス(回復力)を保つことが可能であることも、研究で示されている。

慢性的な仕事のストレスに伴う神経学的なリスク

仕事で慢性的なストレスを抱えていると、脳に有害な変化が起こることが、数々の神経科学研究で明らかになっている。にもかかわらず私たちは、脳のことはおろそかにしがちだ。心機能や肺機能については健全に動いているかどうかに注意を払う一方で、ありとあらゆる身体機能を司る脳については無視しがちなのだ。プロのアスリートは、頭部をケガから守っている。それと同じように働く人たちも、仕事による慢性的なストレスがもたらす神経学的なリスクから脳を守るべきだと、科学者は呼びかけている。

仕事で急激なプレッシャーがかかると、それがきっかけで脳回路の構造が変化し、やがては神経系にまで影響が及んでしまうことがある。仕事をしていると、頭の中ではストレスを引き起こす思考が、まるでサメの群れのようにぐるぐると回るものだ。プレゼンテーションが近づくと気が滅入り、どう考えても無理な納期に間に合わせようと必死になる。上司に口汚い暴言を吐かれ、セクハラに遭い、同僚にはいじめられる――こうした状況のせいで、脳内は常時、ストレスホルモンでいっぱいだ。

常に余裕がなく、オーバーワークを美化するような職場文化では、神経系にじわじわと負担がかかっていく。月曜から土曜まで週6日、午前9時から午後9時までひたすら働くことを強いる「996勤務」は、脳に損傷を与える可能性がある。失業に対する絶え間ない恐怖、管理職からの度重なる叱責、相次ぐリストラによる先行きの不透明さで、心身の健康が徐々にむしばまれていく。

研究によると、ストレスホルモン(特にコルチゾール)に長くさらされると、脳の重要な領域が委縮するおそれがある。慢性的な仕事のストレスと、脳組織の萎縮ならびに脳の全般的な質量減少は関連しているのだ。コルチゾールの値が上昇すると、長期記憶を司る海馬が損傷し、注意力や意思決定力、実行機能を制御する前頭前野の働きが衰えていく。

神経系への影響は、それだけにとどまらない。仕事で慢性的なストレスを抱えていると、不安障害や気分障害の発症率が高くなる上に、認知的柔軟性が低下する。適応したり、問題を解決したり、視点を切り替えたりする脳の力が弱くなっていくのだ。

さらに気がかりな研究結果もある。仕事で長期にわたってストレスにさらされると、認知症やアルツハイマー病を含む神経変性疾患のリスクが高くなる可能性を示唆する研究もあるのだ。 

短期的なストレスに対しては、脳には非常に優れた回復力がある。ストレスに起因する変化の多くは、プレッシャーを和らげれば元に戻すことが可能だ。ただし、強いストレスがかかった状態が何カ月や何年も続けば、神経系に対するダメージは持続的かつ永続的なものになりかねない。

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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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