マーケティング

2026.03.13 09:18

顧客の頭の中を制する者が市場を制す──ポジショニングの真の意味

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競争が激しい市場では、多くの組織が自分たちの課題は「何をしている会社か」を説明することだと考えている。だが現実には、より難しく、そして重要なのは「どう理解されるか」を形づくることだ。これこそがポジショニングの本質である。

ポジショニングはしばしば、独自の売り(USP)やタグライン、エレベーターピッチのような短い言い回しに還元される。そうした表現は強力だが、それだけでは不十分である。真のポジショニングは、資料やキャンペーンの中にあるのではない。現実の世界では、ターゲットオーディエンスの頭の中に存在する。

マーケティングの先駆者であるジャック・トラウトとアル・ライズがよく知られる言葉で述べたように、ポジショニングとは製品や組織に対して行うものではなく、見込み客の心に対して行うものだ。言い換えれば、ポジショニングとは、現在および将来の顧客があなたをどう捉えるかという、固有で魅力的な在り方である。

なぜポジショニングはオーディエンス起点であるべきなのか

多くのポジショニングの取り組みが失敗するのは、内向きの視点に偏るからだ。リーダーは機能や能力、実績を棚卸しし、それを外に向けて発信しようとする。だがオーディエンスは、そのような方法で情報を整理しない。

効果を発揮するには、ポジショニングは満たされていないニーズに応え、既存の信念と整合していなければならない。意思決定がすでに行われている枠組みに収まる必要がある。ここで重要になるのが「ポジショニング・ラダー」という概念である。

ポジショニング・ラダーの理論

ポジショニング・ラダーは、コミュニケーション過多への反応である。選択肢が多すぎると、人は単純化する。意思決定を扱いやすくするために、ブランドや組織を概念的な「はしご(ラダー)」に積み上げ、頭の中で選択肢を順位づけしていく。

ポジショニングを策定する際の狙いは、この仕分け行動と戦うことではなく、それを活用することにある。組織には一般に2つの戦略的選択肢がある。

1. 既存のラダーで最上段を獲得する。すでに重視されている尺度で競合を上回ることで実現する。

2. 新しいラダーをつくる。ただし、それがターゲットオーディエンスの信念体系の中に、明確に収まる場合に限る。

典型的な例はレンタカー業界にある。市場リーダーとしてハーツが最上段を占めていた。エイビスはその座を真正面から奪いにいくのではなく、「We try harder(私たちはもっと努力する)」というコピーで、食らいつく2番手として自社をポジショニングした。この戦略が機能したのは、弱者のほうがサービス志向だという既存の信念を活用したからである。直感に反するが、普遍的な教訓がここにある。効果的であるためには、ポジショニングは「すでにどう見られているか」を認めなければならない。

事実から意味へ:強いポジショニングの構築

強いポジショニングは、巧みな言葉づかいだけから生まれるものではない。組織や製品について根本的に真実であることを土台に、そこから意味へと段階的に積み上げ、体系的につくられる。

有効な枠組みの1つが、私たちGlueで用いているコミュニケーションの階層である。製品の場合、事実と本質──本質的で否定しようのないもの──から始まり、ポジショニング、製品の約束、ブランドキャラクターへと構築していく。企業の場合も土台は同じだが、製品の約束はミッションとビジョンに置き換わり、ブランドキャラクターは省かれる。

最も強力なポジショニングは、「真の差別化」と「オーディエンスにとっての真の関連性」が交差する地点にある。

ポジショニングは「マーケティング施策」ではなく、重大な意思決定である

ポジショニングはしばしばマーケティングキャンペーンの土台として扱われるが、それは視野が狭い。むしろポジショニングは戦略の道しるべとして機能すべきである。製品開発や提携から、採用、メッセージング、顧客体験に至るまで、組織全体の意思決定を広く導くものでなければならない。そして、あらゆる接点が同じ「一点集中のアイデア」を強化するべきである。

マーケティングにはこうした格言がある。「ブランドをポジショニングしなければ、誰かが代わりにしてしまう」。その「誰か」は市場の力かもしれないし、さらに悪いことに競合かもしれない。不一致は空白を生み、空白は埋められる。

ポジショニングを選び、それを市場に伝えることは、組織が取り得る行動の中でも最も重大なものの1つである。トラウトとライズが思い起こさせるように、人の認識を変えるのは難しい。たとえ経験がさほどなくても、人は自分の認識が正しいと考えがちだ。成功する組織は、その普遍的な真実を尊重し、洞察と意図をもって前に進む。

forbes.com 原文

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