マーケティング

2026.03.13 08:47

なぜCMOは限界を迎えたのか──マーケティングリーダーシップの再編が始まった

AdobeStock

AdobeStock

午前9時。朝食をとりながらTikTokのエンゲージメント率を最適化している。正午には、自分でも完全には信頼できないアトリビューションモデルを使って、CFOにマーケティング予算の削減を押し返している。午後3時にはリブランディング戦略のプレゼンが控える。午後5時には、なぜマーテックのスタックがいまだにCRM(顧客関係管理)プラットフォームと連携できないのかについてSlackのメッセージに答え、午後9時には競合のキャンペーンを憂鬱な気分でスクロールしている。CMO(最高マーケティング責任者)の役割を、ここまで不可能にしたのは何なのか。

advertisement

現代のCMOが抱える「構造的な不可能」

CMOは、ブランド、売上、顧客体験、テクノロジー、プロダクト、営業、データの頂点に座る。にもかかわらず、最高職にとどまる期間は短くなっている。フォーチュン500企業におけるCMOの平均在職期間は、現在わずか3.9年だ。さらに、フォーチュン500企業でCスイートに報告する立場のマーケティング幹部を置く会社は減っている。かつては極めて重要だったこれらの役割は、チーフ・カスタマー・オフィサーやチーフ・グロース・オフィサーに吸収・再配分されつつある。マーケティングの重要性が突然下がったからではない。新しいマーケティング戦略は、ジェネラリスト(あるいは、そもそも個人)では必ずしも実行できないからである。

マーテックのツールやソリューションは大きく拡大したものの、マーテックの意思決定者のほぼ半数が、重大な統合・複雑性の課題を報告しており、横ばいの予算で業務を行っている。2025年時点で、その予算は平均して企業売上の7.7%にすぎない。職にとどまったCMOのうち、約60%は、与えられた戦略を実行するには予算が不十分だと答えている。

これはCMO個人の失敗ではない。リソースと役割の範囲が噛み合わないという、循環的なミスマッチである。また、企業がCMOという役割を「修理」しているのではなく、複数の専門職へと分割していることの証左でもある。

advertisement

ここに至った経緯

2019年、マクドナルド、Uber、ジョンソン・エンド・ジョンソンといった誰もが知る企業が、CMO職を完全に廃止し、マーケティングを他部門に組み込むか、別のリーダーに分配した頃から状況は大きく変わった。同年のCNBCインタビューで、コンサルティング会社共同創業者のAllen Adamsonは「ソーシャルメディアのチャネルでグローバルブランドを24時間365日管理するのは、1カ月で5人のCMOを燃え尽きさせることだって容易だ」と述べた。しかも、これはソーシャルメディアだけの話である。

CMOには、実現不可能に見える指令がしばしば課される。ブランドのビジョナリーであり、売上の牽引役であり、顧客体験のオーナーであり、AIの専門家であり、プロダクトのローンチ担当であり、営業担当であり、データアナリストであれというのだ。責務が増えるたびに説明責任は重くなるが、権限や予算はそれに比例して増えない。私の見てきた限り、これほど短期間に同等の範囲拡大を経験したCスイートの役職は他にない。

この責任の爆発には、新しいツールを使いこなし、さらにその費用をどう捻出するかを考えることも含まれる。AIと機械学習はマーケティング活動を変革し得るが、使い方を知る人がいて初めて成立する。2025年時点で、AIとMLが担うマーケティング活動は17.2%(2022年から100%増)であり、その割合は2028年までに44%超に達すると予測されている。

AIとMLの爆発的な利用は、CMOを戦略的リーダーシップではなく「スタック管理者」の立場へと追い込んだ。生成AIの導入は2024年から2025年にかけて116%急増したが、時間とコストの効率を改善できたCMOは50%未満にとどまった。「より少ない資源で、より多くを」という標語は、「何もない状態で、すべてをやれ」へと変質し、持続可能な業務量ではなく、範囲の拡大を生み出した。

CMOの役割の代わりに何が生まれているのか?

マクドナルドがCMO職を廃止したことを覚えているだろうか。同社は1年足らずで(要登録)その役職を復活させ、新しいCMOには新規事業の統括も与えた。それでも他の企業は、「CMO大分割」とも呼べる流れを進み続けている。UPSはマーケティング、売上、プロダクト、成長の機能を、新設のチーフ・コマーシャル&ストラテジー・オフィサーに統合した。EtsyはCMO機能をCOOの役職へ移した。WalgreensはCMO機能を複数のシニアリーダーに分配した。

現職のCMOで、ひとまず自分にどのような運命が降りかかるのか気になっているなら、想定され得る新しい専門職の肩書きは次のとおりだ。チーフ・ブランド・オフィサー、収益マーケティング担当バイスプレジデント、Go-to-market責任者、チーフ・カスタマー・オフィサー、マーケティングオペレーション&AI担当バイスプレジデント。これらは、かつてのCMOの不可能な指令──「すべてを、同時に、常に、やり、かつ、そうであれ」──を満たすためのパズルのピースである。現時点で、その指令を企業がどう扱うべきかについて標準モデルは存在しない。わかっているのは、専門化し、それらを調整するために、まったく新しいアーキテクチャを前提としたモデルでなければならないということだけである。

分散型のマーケティングリーダーシップは本当に機能するのか?

結論から言えば、機能し得る。ただし、常にそうとは限らない。

分散型のマーケティングリーダーシップが最もうまく機能するのは、Cスイートの誰かが部門横断の統合を担い、意思決定の権限が明確な場合である。

一方で、失敗は次のような形で現れる。

戦略の空白:ブランド統合、売上、顧客体験、テクノロジーのいずれについても、オーナーシップを持つシニアリーダーがいない。

四半期の罠:収益マーケティングがブランド構築から切り離され、最適化が短期成果に偏り、長期的な価値の蓄積が犠牲になる。

テクノロジーの混乱:巨大なマーテック予算に対する経営層の監督が存在しない。

だからこそ企業は、CMOの役割を取り除く(あるいは統合する)前に、統合された責務を割り当てる必要がある。

再編の最中に問うべきこと

「あとで考える」という言葉を語彙から削除せよ。その代わりに、次を問うべきである。

• 誰が統合を担うのか。CEOか、COOか、チーフ・カスタマー・オフィサーか。それとも別の誰かなのか。

• どのトレードオフを最適化するのか(例:短期売上と長期のブランド構築のどちらを優先するのか)。

• テック戦略はどこに位置づくのか。世界のマーテック支出は、来年までに2150億ドルを超えると予測されている。中間管理職の誰かに任せるわけにはいかない。

• 専門化による便益が、専門化を調整するコストを上回ることを、どう担保するのか。

• この変更は本当に組織設計のためなのか。それとも再編を装ったコスト削減にすぎないのか。

いま何が起きるのか

マーケティングのジェネラリスト職は、かろうじて持ちこたえている。しかし企業は、それをただ切り捨てるだけでは成長できない。マーケティングリーダーシップを分散させても、シニアレベルで本気の統合にコミットしなければ、新たな機能不全を生むだけだ。CMOの役割を分割した企業は当初こそ祝杯を挙げるかもしれないが、数年後には、なぜマーケティングの成果が出ないのかと問うことになるだろう。これは、企業が意図的に設計することも、間違いによって見出してしまうこともあり得る変革である。どちらになるかは、いまどれだけ厳しい問いを投げかけるかにかかっている。

(Forbes.com 原文)


タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事