働き方

2026.03.13 08:32

従業員のウェルビーイング支援、カギは「プログラム」ではなく「インフラ」だ

AdobeStock

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長年にわたり、企業は職場のウェルビーイングを一連のプログラムとして捉えてきた。瞑想アプリ、従業員支援プログラム(EAP)、子育てウェビナー、メンタルヘルスのホットラインなどがその例だ。しかし、企業のウェルネスに数十億ドルが投じられているにもかかわらず、参加率は低いままであることが多かった。問題は認知度ではなく、アクセスのしやすさだったのである。

職場のウェルネススイートを設計・運営し、従業員が既存の福利厚生を理解し活用することを支援する企業Work&の創業者兼CEO、アビー・ドネルは、ある具体的な課題を通じてそのギャップの帰結を目の当たりにした。授乳支援である。復職する多くの親にとっての障壁は、意欲の欠如ではなく、勤務中に搾乳できるプライベートで機能的な空間がないことだった。

「会議室を使うように言われたり、空いている部屋を探してオフィス中を歩き回ったり、トイレや駐車場の車の中で搾乳したりする人もいました」とドネルは振り返る。

その経験は、より広範な構造的問題を浮き彫りにした。プログラムは人が行動できることを前提にする。インフラは行動を可能にする。

職場のウェルネス戦略は転換している

この区別が重要である理由は、労働力に関する研究の蓄積によって説明できる。マーサーの「2024年グローバル人材トレンド」レポートによると、従業員のウェルビーイングは経済的安定を上回り、労働力における最大の関心事となっており、従業員の3分の1がメンタルヘルスの課題を抱えていると報告している。

同時に、雇用主はウェルネス施策を拡充し続けているが、参加はしばしば伸び悩む。人事および職場戦略全体で浮かび上がってきた示唆は、ウェルビーイングが機能しないのは従業員に関心がないからではない、ということだ。提供されているものを容易に使えないから失敗するのである。

ドネルが初期に取り組んだ授乳アクセスの改善は、この転換を検証する場となった。ハイブリッドな働き方がこの課題を強めていると彼女は説明する。「ハイブリッド勤務を義務付けている企業が入居するビルでは、母親たちが週に数日しか出社しなくても、企業は法的に何らかの対応を提供する必要があります」と彼女は述べた。

さらに、共有型の解決策が使いやすさと法令順守の双方に対応できると付け加える。「ビル全体で共有できるスペースのアメニティは、双方にとってメリットがあります。ビル内のすべての雇用主の法的義務を解決し、より質の高い方法で母親たちのニーズに応えることができるのです」

PUMP法への対応が職場デザインを変えている

2022年に成立したPUMP法は、雇用主に対し、授乳中の従業員に休憩時間と、トイレではないプライベートな空間の提供を義務づけた。多くの組織にとって、これにより授乳は文化的配慮から法的義務へと変わった。ウェルビーイングがコンプライアンス主導になると、企業は「意図」から「設計」へと移行する。

ドネルは、即興的な対応から運用システムへと会話が移った経緯を語る。解決策はしばしば機能性より利便性に寄りがちだったという。「会議室を使うように言われていました」と彼女は振り返った。

法律が明らかにしたのは、支援には方針以上のものが必要だという事実である。必要なのは以下だ。

  • 空間
  • アクセス
  • 運用体制

オフィスデザインが従業員のウェルビーイングの中心になりつつある

この進化は、オフィス戦略のより大きな変化とも呼応している。JLLの市場分析によれば、差別化されたウェルネス機能を備えるアメニティが充実したオフィスビルでは稼働率が上昇している一方、設備が不十分なスペースは苦戦している。これらの結果は、職場のウェルビーイングが福利厚生の判断にとどまらず、設計上の判断になりつつあることを示唆する。

商業不動産のオーナーにとって、こうしたアメニティは入居者体験の戦略の一部となりつつある。ボルナド・リアルティ・トラストでオフィス賃貸のエグゼクティブ・バイスプレジデントであり、不動産部門の共同責任者でもあるグレン・J・ワイスは、授乳スイートのようなサービスの統合が、職場が従業員を支える方法のより広い転換を反映していると述べる。

「1290番地での当社のWorkLifeプログラムは、パフォーマンスと個人のウェルビーイングの双方を高める職場をつくるという当社のコミットメントの証です」とワイスは言う。「Work&Motherスイートの追加は『Work Naturally』プログラムの重要な延長であり、働く親に対して思慮深く、配慮の行き届いた高品質な解決策を提供することで、入居者中心の就業環境におけるリーダーとしての当社の立ち位置を強化するものです」

これらの動きは、職場のウェルビーイングが福利厚生上の配慮にとどまらず、オフィスデザインの意思決定をますます左右していることを示している。

職場インフラは授乳ニーズを超えて拡大している

Work & MotherからWork&へのリブランドは、このモデルの適用範囲が広がったことを反映している。現在、同社のスイートは、プライバシーと運用上の信頼性を要する幅広い従業員ニーズを支えており、その例は以下である。

  • オンライン診療
  • メンタルヘルスのための休憩
  • 祈り
  • 介護の調整

これらのユースケースは、より大きな潮流を示している。雇用主はサポートを提供することから、サポートを可能にすることへと移行しているのだ。

働き方の未来はプログラムではなくアクセスにかかっている

従業員がウェルビーイングのリソースを無視するのは、関心がないからではない。多くの場合、足りないのは以下である。

  • 時間
  • プライバシー
  • 許可

インフラは、これらの障壁に直接対処する。

雇用主が直面する別の課題は、多くのウェルビーイング関連の福利厚生がすでに存在しているのに、従業員がそれらを理解して使いこなすことに苦労している点だとドネルは言う。Work&はそのギャップを埋めるために設計されているという。オンライン診療や授乳支援といったサービスを可能にするプライベート空間を提供するだけでなく、このプラットフォームは雇用主がすでに提供している福利厚生へ従業員をつなぐ支援も行う。ナビゲーションツールと職場における物理的アクセスを統合することで、既存のプログラムを見つけやすく、使いやすくすることが狙いだと彼女は説明する。これにより、職場のウェルビーイングにおける最大の障壁の1つである「認知不足」を解消し、利用を増やす。

「ウェルビーイングは主体性に依存すると失敗します」とドネルは指摘する。「職場に組み込まれて設計されていると機能するのです」

職場のウェルビーイングは「作り込まれたインフラ」になりつつある

医療システムを置き換えるというより、職場がアクセスの拠点として機能する場面が増えていく可能性がある。プライベート空間はオンライン診療を可能にし、ナビゲーションツールは従業員を福利厚生へつなぎ、環境デザインは摩擦を減らす。

職場ウェルネスの次のフェーズは、より多くのプログラムを増やすことではないかもしれない。代わりに組織は、次の優先事項によって障壁を減らすことに投資する可能性がある。

  • 空間
  • システム
  • 運用上のアクセス

ドネルの取り組みは法的に義務づけられたニーズから始まったが、その拡大はより大きなものを指し示す。職場のウェルビーイングは、もはや人事機能だけではない。それは仕事そのものの物理的・運用的デザインの中に、ますます組み込まれつつある。

組織が出社戦略、定着、そして生産性を見直すなかで、問いは「どのようなプログラムを提供するか」から「どのようなアクセスを設計するか」へと移行するかもしれない。ウェルビーイングを意図にとどめずインフラとして扱う企業が、最終的に次世代の職場を形作ることになるだろう。

forbes.com 原文

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