米国とイスラエルがイランに攻撃を仕掛ける前日の先月27日、ロシア産ウラル原油は1バレル40ドル前後で取引されていた。ところが、今月9日には100.67ドルまで急騰した。一方、国際指標の北海ブレント原油先物は同日、99ドルで取引を終えた。これまで、制裁対象のロシア産原油が国際指標を上回る価格で取引されたことは一度もなかった。ロシアがウクライナに全面侵攻を開始した2022年以降構築されてきた制裁体制が、わずか数日間で逆転したのだ。
国際エネルギー機関(IEA)が12日、戦略石油備蓄から過去最大となる4億バレルの石油を放出すると発表したにもかかわらず、北海ブレント原油はアジア市場で101ドルを超える上昇を続けた。これはロシアによるウクライナ侵攻を受け、2022年に放出された量の2倍以上に相当する。米金融大手ゴールドマン・サックスは同日、ホルムズ海峡の混乱が従来の想定より長期化するとして、第4四半期の北海ブレント原油価格の見通しを引き上げた。
欧州連合(EU)のアントニオ・コスタ欧州理事会常任議長(EU大統領)が「イラン攻撃の唯一の勝者はロシアだ」と皮肉ったように、ロシアの収入は短期的に急増している。問題は、この短期的な増収が常態化するかどうかだ。
逆転の背景にある数字
米国がイランを攻撃する以前、ロシアの財政は深刻な状態にあった。同国の先月の石油・ガス収入は前年同月比44%減少した。1月の収入は前年同月比50.2%減で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)以降最低を記録した。ロシアの今年度予算は、ウラル原油価格を59ドル、為替相場を1ドル92.20ルーブルと想定している。
その後、ペルシャ湾に位置するホルムズ海峡が事実上封鎖されたことで、世界の石油供給量の5分の1に相当する日量約2100万バレルの原油供給が停止した。北海ブレント原油価格は100ドルを突破し、2022年半ば以来の最高水準に達した。米エネルギー情報局(EIA)は、向こう2カ月間、北海ブレント原油価格は95ドル以上で推移すると予測している。ベルギーの調査会社ケプラーのアナリスト、スミット・リトリアは、インドが制裁前の水準を回復し、原油の40~45%をロシアから輸入するようになるとみている。イランを攻撃する以前、米国のドナルド・トランプ政権はインド製品に50%の関税を課すことで、ロシア産原油の輸入を削減するよう圧力をかけていた。その圧力作戦は1週間も経たないうちに崩壊した。
トラフィグラやビトル、グレンコアといったエネルギー取引企業は、一夜にして計算式を書き換えることになった。主に中国の独立系精製業者向けに日量約138万バレルが供給されていたイラン産原油が市場から消えた。ベネズエラ産の重質原油は、米国が今年初めに石油貿易を掌握して以降、既に供給が制限されていた。これにより、ロシア産ウラル原油は大量に入手可能な最後の重質原油となった。



