欧州

2026.03.13 09:00

中東危機でロシア産原油に買い手が殺到 欧米の制裁は崩壊するのか?

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領。2025年12月19日撮影(Contributor/Getty Images)

欧米の制裁の失敗

スコット・ベッセント米財務長官は6日、インドの精製業者がタンカーに積載済みのロシア産原油を購入することを30日間免除する決定を下した。インドはわずか数日で3000万バレルを買い占めた。タンカーに保管されていたロシア産原油は1週間で1億3290万バレルから1億1830万バレルに減少した。これは洋上の戦略石油備蓄で、現在は急速に買い手に渡っている。

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ベッセント長官は米保守系FOXニュースに対し、「制裁対象の原油が数億バレルも海上に保管されている」と指摘した上で、米政府がロシア産原油に対する追加制裁を解除する可能性を示唆した。トランプ大統領自身も政権が「一部の国」に対する制裁を解除することを認めたが、対象となる国については明らかにしなかった。

これに対し、米国内では即座に反発が起こった。米上院民主党議員12人は、ロシアが中東で米軍と戦うイランを支援していると報じられる中、トランプ大統領がロシアのウラジーミル・プーチン大統領に「無条件の免罪符」を与えたと非難する共同声明を出した。矛盾は拡大する一方だ。米政府はイランの後援国を爆撃しながら、財政支援も行っている。

あらゆる制裁には一貫した執行が求められる。価格圧力下での選択的免除は、その仕組みには交渉の余地があるという前例を確立するからだ。EUは先月、ロシア産原油の価格上限を44.10ドルに引き下げ、輸入の締め付けを強化していた。ところがその2週間後に米国がイランを攻撃すると、EUは北海ブレント原油価格95ドルという現実に直面した。ロシア産原油に対する締め付けはあっけなく失敗した。

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制裁を弱体化させる3つの流れ

制裁の弱体化は単独で起こるものではない。現在、3つの流れが同じ方向に向かいつつある。

まず、ウクライナ侵攻の最終局面を巡るトランプ政権の動きだ。トランプ大統領とプーチン大統領は10日、今年初の電話会談を行い、イランとウクライナの両問題について協議した。トランプ政権の焦点は完全に中東に移っており、ウクライナ侵攻を早期に解決しようとする政治的動機は強まるばかりだ。ロシア産原油に対する制裁を緩和すれば、米国のガソリン価格が下がり、ロシアに対して和平交渉を加速させる譲歩ができるという、一石二鳥の効果が得られる。その論理は戦略的ではなく取引的だ。しかし、この取引的な論理こそがトランプ政権を動かしている。

第二に、変化しつつある欧州の姿勢だ。フランスとロシアは技術レベルの外交関係を回復し、エマニュエル・マクロン仏大統領は新たな欧州の安全保障体制とロシアとの直接対話を求めている。英調査会社ユーガブが実施した世論調査によると、ドイツ人の58%がフリードリヒ・メルツ独首相とプーチン大統領の直接会談を望んでいる。ハンガリーのオルバン・ビクトル首相はEUに対し、ロシアのエネルギー資源に対する制裁を解除するよう正式に要求した。ノルウェーのエネルギー相は、中東の危機がEUの計画しているロシア産天然ガスの輸入禁止措置を巡る議論を再燃させる可能性があると警告した。

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翻訳・編集=安藤清香

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