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2026.03.13 11:00

代理戦争から直接衝突へ──イラン最高指導者ハメネイの死を招いた誤算と必然

FotoField / Shutterstock.com

ヒズボラは、域内のイラン代理武装勢力のネットワーク、イラン側の自称「抵抗の枢軸」の枢要な組織だった。イランがこれらの勢力に対して持っていた支配力や影響にとって、間違いなく大きな打撃になったのが、米国による2020年1月3日のカセム・ソレイマニ司令官の殺害だった。ソレイマニはハメネイの右腕で、当時イランで2番目に大きな力を持つと言っても差し支えない人物だった。そのソレイマニに対してトランプは前例のない行動に踏み切り、イラクの首都バグダッドで彼の乗っていた車をドローン(無人機)で攻撃して殺害した。

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ハメネイには欠けていたと言わざるを得ない人間的魅力とカリスマ性を備えていたソレイマニは、イスラム革命防衛隊の対外工作部門であるコッズ部隊の司令官として、域内の代理武装勢力を組織・統括していた。トランプが彼の殺害を命じる数カ月前、ソレイマニはイラクで、腐敗の蔓延やイランによる過度な内政干渉に対する若者たちの平和的な抗議デモの暴力的な弾圧でも重要な役割を果たした。武器を持たないデモ参加者のなかには、スナイパーに銃撃されて死亡した人もいた。この出来事は、中国による1989年の民主化デモの武力弾圧になぞらえて「イラクの天安門事件」とも報じられた。

ソレイマニ暗殺の数日後、イランは報復に出て、イラク国内の軍事基地を弾道ミサイルで攻撃した。米軍に死者は出なかったものの、複数の兵士が外傷性脳損傷を負った。

これはイランによる報復の仕方の先例になった。

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2024年4月13日、ハメネイは再び事前に察知可能な攻撃を命じる。イスラエルの空爆により、シリアの首都ダマスカスにあるイラン領事館に付属する建物が破壊されると、イランはイスラエルに対する初の直接攻撃で報復せざるを得ないと判断した。とはいえ実際の攻撃にあたっては、まずドローンを発射し、数時間後に弾道ミサイルを一斉発射するという手順を踏んだ。そのためイスラエルや米国、ほかのパートナー諸国は事前警告と防衛準備のための時間を十分得られ、飛来してきたもののほとんどを迎撃できた。米国のジョー・バイデン大統領(当時)は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対して報復しないように伝え、「勝利を受け入れる」ことを促した。イスラエルは数日後に報復を行ったが、小規模な限定攻撃にとどめた。

しかしイスラエルは7月31日、より大胆な行動に出る。イランの首都テヘランに滞在中だったハマス幹部のイスマイル・ハニヤを、精密攻撃で殺害した。ハメネイは自国の客人の死に再び報復することを誓った。だが彼はその時、地域で最も重要な盟友にも死が迫っているとは想像していなかっただろう。

ナスララはイスラエルとの大きなエスカレーションを回避することに賭けたが、結果的にそれは彼の命を奪うことになった。2024年9月、イスラエルは北部戦線をエスカレートさせ、破壊的な空爆作戦を実施するとともに、ポケベル数千台に爆発物を仕掛けて同時に爆発させる画期的な秘密作戦を実行し、ヒズボラの構成員多数を負傷させた。長年懸念されていたヒズボラによるイスラエルへの大規模なミサイル一斉攻撃は、結局起こらなかった。さらにイスラエルは9月27日、レバノンの首都ベイルートを揺るがす強力な空爆をナスララの地下掩蔽壕に加えた。いまから振り返れば、これはハメネイ自身の死を予兆する動きでもあった。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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