多くの人は人生のどこかで、新しい習慣を始めようとしたものの、最初の熱意がしぼんでしまった経験があるだろう。時間が経つと、結局は元の状態に戻ってしまう。
世にあふれる自己啓発の助言は意志力やモチベーションに焦点を当てがちだが、行動科学の数十年にわたる知見は、良い習慣が定着しにくい理由の一部に過ぎないことを示している。このほぼ普遍的な体験を理解するために、心理学では近年、COM-Bモデルと呼ばれるシンプルで強力な枠組みが用いられることが増えている。
COM-Bモデルは、Implementation Scienceに掲載された2011年の研究で、スーザン・ミッチー、マールチェ・ファン・ストラーレン、ロバート・ウェストが提唱したものだ。COM-Bモデルは「Capability(能力)」「Opportunity(機会)」「Motivation(動機づけ)」を意味し、これらが「Behavior(行動)」へとつながる。
行動は望めば自然に起きる、と仮定するのではなく、COM-Bモデルは習慣の変化を「診断の問題」として扱う。つまり、ある行動が起きていないなら、これらの要素のうち1つ(または複数)が欠けているか、噛み合っていない可能性が高いという考え方だ。
COM-Bモデルに基づき、習慣が定着しない3つの主な理由と、それを診断して修正する実践的な方法を紹介する。
1. スキルと知識の不足が習慣の定着を難しくする
習慣形成について目にする助言の多くは、やりたい行動自体はすでにできる前提で、足りないのは規律だけだとしている。しかし研究によれば、多くの場合、それは事実ではない。
多くの場合、行動が習慣化するために必要なスキルや心理的リソースが、まだ十分に築かれていないだけなのだ。
COM-Bモデルにおいて「能力」には2つの側面がある。
・身体的な能力: その作業を身体的に実行できるか
・心理的な能力: そのやり方を理解し、計画、自己調整、記憶といった行動の認知的要素を管理できるか
例えば、毎日走る習慣を始めたいとする。毎日走ろうという意図がどれほど強くても、ウォームアップ、ペース配分、回復の組み立て方を一度も体系立てて考えたことがないなら、心理的な能力は弱い。同様に、慢性的なけがや疲労があれば、身体的な能力が制限される。
BMC Public Healthに掲載された2021年の実証研究では、若年成人の身体活動と食行動の文脈でCOM-Bモデルモデルが直接検証された。研究者は、能力が「実際に行動が起きるかどうか」と強く結びついていること、さらにモチベーションを介して間接的にも行動へ影響することを見いだした。



