リーダーシップ

2026.03.12 10:39

心理的安全性の先にある「安全な危険」という新概念

AdobeStock

AdobeStock

リーダーはしばしば、イノベーション、帰属意識、心理的安全性を別々の目標であるかのように語る。だがベン・スワイアは、それらは切り離せないと主張する。そして最も意味のあるブレークスルーは、安全とリスクが重なり合う居心地の悪い領域で起こるという。

元IDEOのリーダーで、Make Believe Worksの共同創業者でもあるスワイアは、チームが信頼を築き、率直に語り、大胆に試すことを支援してきた。新著Safe Danger: An Unexpected Method for Sparking Connection, Finding Purpose, and Inspiring Innovationでは、人を前進させる瞬間はめったに楽には感じられない理由を掘り下げている。

スワイアがこの仕事に至る道のりは、予測不能そのものだ。かつてはチームビルディングの演習を嫌っていたと自認する内向的な人物が、今では人々がより深くつながり、より創造的に協働するためのワークショップを主導している。ウォール街からIDEOへ、そしてMake Believe Worksの創業へ。その歩みは、信頼に基づく環境が、人々の仕事だけでなく人生の味わい方そのものまで変えうることを示している。

「多くの人は安全と危険を正反対のものだと考える」とスワイアは説明する。「だが時間が経つにつれ、私はこの2つを、むしろダンスパートナーのように捉えるようになった。安全は確かな足場とバランスを与える一方で、危険は動きと推進力、そして目的を与えるのだ」。リーダーが安全だけを追い求めれば「停滞する」。危険だけを追えば「燃え尽きる」。スワイアによれば「安全な危険」とは「その2つの間にある感情的なスイートスポット」である。

ここでは人間の生物学が逆風になる。「社会は生物学よりも速く進化した」とスワイアは言う。「私たちは、害を与えるものを警戒し、自分を安全に保つようにできている」。しかし現代において最も恐れる脅威は、感情面のものだ。「安全や快適さに傾くことは、自分がこうありたいと願う姿の多くを犠牲にする代償になりうる」。

スワイアはそれを個人的に知っている。「私は安全でいるために、コントロールに強く頼るタイプだった」と彼は語る。「だが時間が経つにつれ、その安全が硬直すると、本当に檻になり得ると気づいた」。彼は、有能なチームが「勇気よりも慎重さが報われる文化の中で、縮こまってしまう」様子を目にしてきた。

生産的なリスクと無謀さの違いは、意図にあると彼は主張する。「安全な危険にはガードレールがある。明確な価値観があり、心理的安全性という土台があり、回復の仕組みが組み込まれている」。対して無謀さは「構造のない危険」だ。安全な危険とは「構造化された脆弱性」である。「飛び込むが、そこにはネットがある」。

重要なのは、スワイアが「安全な危険」を、リーダーが一夜にして導入できるスローガンだとは見ていないことだ。「まずはマインドセットの転換から始まる」と彼は言う。「次に実践にならなければならない。そして十分に実践すれば文化になる」。即座の信頼を求めるリーダーは、しばしば失望すると彼は指摘する。「スイッチではない。努力が必要だ」。

その努力には必然的に脆弱性が含まれるが、スワイアは、脆弱性が危険に感じられるのは長年の条件づけに逆らうからだと考える。「脆弱性とは、中学以来ずっと泳いできた流れに本気で逆らうことだ」と彼は言う。「自分の足で立ち、自分にとって本当に大切な人たちから愛されることと引き換えに、ある人たちに好かれないことも受け入れるよう促す招待状なのだ」。

組織がその不快さを避けると、結果は予測どおりになる。「会議では丁寧にうなずくが、陰では抵抗する」とスワイアは言う。「そうした沈黙は、どんな公然の意見対立よりも信頼を蝕む」。イノベーションも損なわれる。なぜなら「異なる視点が衝突して初めて、新しいものを発見できる」からだ。

最も明確な警戒サインの1つは何か。「合意が多すぎることだ」と彼は言う。「1カ月間、会議で誰も驚かなかったのなら、人々はリスクを取っていない」。対照的に健全な文化は、うまくいかなかったことから学ぶ余地をつくる。「失敗を災害ではなく学びの機会として捉えられるかどうかが、違いを生む」..

スワイアにとって「安全な危険」は、深く個人的なものでもある。「私は生涯、臨床的うつ病を抱えてきた」と彼は言う。IDEOでその経験を共有したことは、弱みではなく洞察の源となった。「それは他者が私を理解し、自分自身を理解する助けにもなった。最終的に、私たちはこれらの断片をすべて持ち寄り、本当に意味のあるものへと作り上げることができた」。

彼はこれを英雄譚として語ることに抵抗する。「勇気とは必ずしも恐怖がないことではない」と彼は言う。「恐怖があっても成長を選ぶことだ」。多くの場合、その成長は小さく意図的なリスクを通じて訪れる。彼が「同調のために設計された世界で自分らしくいること」と呼ぶものだ。

「安全な危険」が当たり前になると、リーダーシップは違った姿を見せる。「不確実性が当たり前になる場所だ」とスワイアは言う。「明白に見えることに異議を唱え、『ここで立ち止まり、これを前提として受け取らないでおこう』と言っていい場所だ」。そうした環境では、人々は貢献するだけでなく成長する。「日々は与えるだけでなく、受け取るものにもなる」。

彼が信じるところでは、この相互性こそが、目的意識、忠誠心、イノベーションを長期にわたり支える。快適さではない。確実性でもない。安全と危険が出会う生産的な緊張へ踏み出す勇気、そして他者をそこへ招き入れる勇気である。

forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事